2019.11.15

第1回 「はじめの一歩」

第1回 EMA Journal Clubです。
それぞれの質問の下にある「解説」をクリックしてください。また今回のまとめや今後のJournal Clubの進め方と年間計画もぜひご参照ください。

【登場人物】
・G先生:初期研修医2年目(救急部研修中)
・M先生:ER後期研修医1年目
・Y先生:ER指導医

【今回の症例】
ある日G先生、M先生がERで夜勤をしていると36歳の男性が呼吸困難を訴え妻に支えられて受診してきた。肩で息をしており、座位で前かがみになりながら辛うじて単語で答えている。妻によると男性は喘息を持っており、数日前も喘息発作で受診していた。今日の症状はいつもと同じだが吸入薬を使っても一向に良くならないという。まずは初期研修医のG先生が対応に当たった。

G「これは重症喘息発作ですね、すぐに治療しましょう。看護師さん、酸素投与とβ刺激薬の吸入、あとステロイドの準備お願いします!! SpO2は…85%、脈も早い。呼吸音はwheezeあるけど小さいな…。」
M「G先生、どんな感じ?」
G「あ、M先生、いいところに。重症の喘息発作の人がいて、吸入を開始してもらってステロイド開始したところです。」
M「これは確かに重症喘息だね。マグネシウムもいってみようか。」
G「え?Mgですか?」
M「そう。Mgが喘息に効くんだよ。挿管準備とMg投与をしよう。」
G「分かりました!!すぐに投与します。さすがM先生ですね。」
M「まぁな(この前Step ○eyond Resident読んどいて良かった…)」

吸入反復+ステロイド+硫酸Mgを点滴したところ、患者の呼吸が少し落ち着き会話もできるようになってきた。その後、患者は入院加療となった。

【勤務終了後】
Y「みんなおはよう。昨夜はなんか困った症例あった?」
G「あ、Y先生お早うございます。昨日重症の喘息発作の人がいましたが、無事なんとかなりました。M先生に教えてもらったんですが、喘息にMgが効くんですね。知らなかったです。折角なのでこれからも使っていこうと思うんですが、ルーチンで使っているのは見た事無いんですよね…」
Y「先生、いい経験したね。ちょうどM先生もいるし、本当に喘息にMgが効くのかどうか調べてみようか。ところで分からない事があった時、先生達はどうやって調べてる?」
G「まずはネットでgoogleや今日の診療を見る、上級医に聞く、レジデントマニュアル・御法度とかですかね。あとは頑張ってUp to dateかなぁ…。」
M「僕もそうですね。他はガイドラインを探したり、救急の教科書であるTintinalliとかかな。時間があればMD consultやPubMed引いてもいいかも。」
Y「なるほど。じゃあ、各自で少し調べてみようか。」

質問1

臨床の現場で生じた疑問をあなたはどうやって解決しているでしょうか?考えられるリソースのメリットとデメリットを考えてみて下さい。
質問1の解説

G「先生、調べてきました~。とりあえずStep beyond ○esidentには書いてありました。」
M「UptodateやTintinalliにもちゃんと書いてあります。」
Y「お疲れさん。じゃあ、その本や資料は何を根拠に喘息にMgが効くって書いてあった?」
G「えっ。そういえば必読文献とか書いてありましたけど…。結果が本に書いてあるんだからわざわざ論文なんて読まなくていいかな~と思って読んでないです。」
M「主な出典としてはTintinalliだとCochrane Rev.とかで、UptodateだとAnnalsのsystematic-reviewやJAMAがreferenceにありますね。」
G「anal?邪魔?何言ってるんですか、M先生。相変わらずですね。」
M「…」
G「それに論文って雑誌も一杯あれば種類も色々あるし、分からないですよ。しかも英語だし。Step~とかUptodateに答え書いてあるからいいじゃないですか。」
M「じゃあG先生、自分の疑問に思った事が教科書に載ってなかったらどうすんの?」
G「… 」
Y「その通りだね。とりあえず、何を根拠に検査や治療や行われているのか、その根拠となる論文にはどんなのがあるか見てみようか。」

質問2

一般的に論文はどのような論文がより信頼性が高いといえるでしょうか?また臨床の疑問を論文検索のキーワードにするにはどのような方法が有用でしょうか?その方法を用いて検索すると今回の「喘息とMg」に関して論じている論文にはどのようなものがありますか?
質問2の解説

G「…ちょっと眠くなってきましたが、とりあえず自分の疑問を明確にする事と、色々な研究をした論文があって、そういった結果から今の治療が成り立っているってことはわかりました。でもどの論文がいいとか分かんないですし、下手したら変な論文信じちゃって患者さんに害を与えちゃいますよ。」
M「実は俺も論文ってどう読めばいいのか分からないんだよね。NEJMとかJAMAは有名だからある程度鵜呑みにしちゃってるしさ。とりあえずSystematic ReviewとかMeta-analysisって書いてあったらいい気もするし。」
G「そういえば国家試験で批判的吟味とかEBMとかあったなぁ…。個人的には抄読会とかJournal Clubって何となくとっつきにくいので嫌いです。わざわざそんな事しなくても、って思うんですが、僕が分かっていないだけでしょうか?」
Y「僕もそうだったよ。でも専門に進むと教科書の知識だけでは追いつかない事もあるんだ。Journal Clubを行うメリット・デメリットは、こんな感じかな。」

質問3

ジャーナルクラブを行うメリット、デメリットについて考えてみよう。
質問3の解説

M「分かりました。なんか楽しそうですね!!自分で文献探せたら、日々の疑問だけでなく、珍しい疾患に出会った時や、治療に困った時にも解決できそうですし。そして調べても見つからなかったら、それは自分で研究してみる、って事にも繋がるわけですね。」
Y「そう、その通り。医学は日進月歩だから今やっている治療が正しいとは限らないし、日常の疑問から自分が新しい治療を生み出すかもしれないよね。折角だし、今度みんなでJournal Clubを始めてみるか。」
G・M「ぜひお願いします!!」
Y「じゃあ最後に今までの事を簡単にまとめてみよう。」
今回のまとめ

G「なるほど、なんとなくJournal Clubに興味がわきました。」
M「次回からのJournal Clubも楽しみです。先生、よろしくお願いします。」
Y「よし、頑張って勉強していこう!今日の夜は焼き肉でも食べに行くか!」
G「あー、すいません、先生。俺今日合コンなんす。」
M「俺も彼女と約束しちゃってるんで…申し訳ないです。」
Y「…あ、そう…」

今後のJournal Clubの進め方と年間計画

【更衣室にて】
G「ところで、Mgってネブライザーではダメなんですかね?」
M「成書には記載が無かったね。それこそ自分で文献調べてみたらいいんじゃん?」
G「…ぐげ」
ぜひ、自分で調べてみよう!!
※もう一歩踏み込みたいあなた!!これも参考にしてください。