EMA Journal Club 第1回 質問1の解説
それでは各リソースの利点、欠点に関して少し見てみましょう。
普段使用している中で特に意識しない事だと思いますし、言われてみれば「当り前かな」と思うかもしれません。ただ自分が普段使用しているリソースを見直してみて、もし使い慣れていないリソースがあればチャレンジしてみるのも自分の勉強のstep upに繋がるのではないでしょうか。
注意点として、欧米の資料を使用する際には考え方の違いや人種の差異などもありますから、そのまま適用せずに各自で吟味する事も必要です。日本の資料との違いを比較してみるのも面白いでしょう。
これら以外にも沢山のリソースがあるので色々と探してみて下さい。
また、その中でおススメがあればEMAの皆様にもぜひ教えてください!!
随時付け加えさせて頂きたいと思います。
方法 | 利点 | 欠点 | MgとAsthma |
指導医に聞く | ・良くも悪くも指導医の力量に左右される。 ・経験的な叡智を含む。 ・簡単に相談できる。 | ・エビデンスに欠ける事がある。 ・個人の経験則が正しいように感じてしまう。 | ・指導医によりけり。知ってはいても使った事の無い人は多いかもしれない。 |
Googleなどの 検索サイト | ・アクセスが容易 ・不勉強な分野では概念を学ぶのに適している ・患者側の知識レベルが分かる。 | ・間違った情報が当り前のように書いてある。 ・専門的な事は調べにくい。 | ・個人で勉強している人のHPでの記載あり。出典はあったり無かったり。 |
マニュアル本 | ・基本的な対応が書いてあり、現場では最も使いやすく実践的。 ・ある程度標準化された対応が可能。 | ・手技、結論のみを記載してある事が多く、背景や病態生理への理解が乏しくなる。 | ・赤本(研修医御法度)には記載なし。 ・Step beyond Residentには「重症例のみ」と記載あり。出典はAnnals of Emergency MedicineのSystematic-Review など。 |
教科書 | ・病態生理、基本的概念が詳細に記載されている。 ・各科の基本的事項から深い所まで学ぶ事が出来る。 | ・あまり実践的では無く、現場での使用は難しい。 ・確固たるエビデンスがあるものを中心に記載されるため情報が遅れがち。 ・改訂が遅い。 ・紙媒体は重くかさばる。 | ・救急の成書には記載あり。 Tintinalliでの出典はCochrane-Review(2000)を、 RosenはChest(2002/2003), Acad Emerg Med(1999)。 ・Harrisonでは重症喘息の使用は効果ありとしているがルーチンでの使用を勧めるものではないと記載。 |
UpToDate | ・アクセスが容易 ・標準的なエビデンスに基づいた治療が可能。 ・プライマリケア領域に強い。 | ・十分なエビデンスがあるとはいえない事もある。 ・あくまで欧米標準であり、日本での標準的治療と異なる事が多々ある。 ・有料。 | ・Ann Emerg Medよりの記載あり。 |
eMedicine | ・無料 ・アクセス容易であり、エビデンスも明記されている。 ・包括的な治療からある程度の専門的レベルまで幅広く解説されている。 | ・十分なエビデンスがあるとはいえない事もある。 ・欧米基準。 | ・重症では使用、軽症~中等症では使うべきでないとの記載あり。 ・Cochraneよりの記載あり。 |
ガイドライン | ・標準的治療としての方針となる。 | ・ガイドラインを出している学会により差異があり、エビデンスレベルが学会によって異なる。 ・若干読みづらい。 ・現場での感覚とそぐわない事がある。 ・欧米と日本で異なる。 | ・AHAガイドラインではcochraneより引用。 ・国内のガイドラインでは「十分なエビデンスが無い」としている。 |
ACEP clinical policy | ・アメリカ救急学会編集。米国での救急外来での標準的治療方針。 ・各studyの評価をしてある。 | ・トピックが少ない。 ・欧米基準。 | ・Asthmaを扱ったclinical policy無し。 |
Emergency Medicine Clinics of North America | ・Elsevier社が提供する一年に4冊発行される救急のTopicsのReview集。 ・まとまっており、総論的に知識が手に入る。 | ・高い。 ・テーマによりけり。 ・欧米基準 | ・最近の記載にasthmaに関するものは無し。 |
Original article | ・最も新しい知見となる。 ・教科書やuptodateなどの二次資料(System)に記載されていない事でも探せば見つかる事がある。 | ・批判的吟味が必要。 ・検索が困難。 | ・1940年代から報告は見られているが、1990年代になって主要なarticleが出現。 |
Review article | ・最新の知見をうまくまとめてある。 ・信頼性は高い。 ・Peer Reviewが行われている。 | ・著者/ジャーナルによりけり。 ・一次資料なのである程度自分での評価も必要な場合がある。 | ・NEJMの” emergency treatment of asthma”では(Clinical Practiceだが)重症のみに用いるべきだとされており、根拠としてEmerg Med Jの2007、CurrOpin(Dr. Rowe:cochraneを編著)を根拠としている。 |
Cochrane review | ・包括的 ・最も信頼性のあるSystematic Review。 ・十分な根拠となり得る。 | ・検索、アクセスが困難。 ・治療と予防に限定。 ・高価。 ・実践的ではない。 | ・2009にupdateされたものでは「ルーチンでの使用は勧められないが、重症例では考慮」との結語。 |