2019.12.02

EMA Journal Club 第1回 まとめ

今回の事に関して少しまとめてみましょう。

臨床で生じた疑問を調べる方法としてはいくつもありますが、まずは自分の現時点での知識レベルを確認するのが第一歩です。

1.知識に乏しい分野

概念を掴む・体系的知識を得る方法としてアクセスの容易なネットの知識を参考にするのは一つの方法です。患者さんが自分で病気の事を調べてくる時代であり、そういう意味でもネットでどの様な知識が流れているのかを確認するのは悪い事ではありません(鵜呑みにしてはいけませんが)。

何だかんだ言っても指導医に聞くのは現実的で最も手っ取り早いです。聞かれた側はちゃんと根拠を提示できるといいですね。

2.一般診療で行っている分野

これに関してはマニュアル本やuptodate・dynamedなどのsystemが参考になります(ちなみに日本で一番uptodateを使っているのは宮城征四郎氏というウワサ…)。初期研修医の間はこれらを活用するのが良いでしょう。

3.専門分野

専門であればベースとなる知識は身についているでしょうし、疑問点もマニュアル本や成書では解決しない事が増えてきます。ここで初めて各種ジャーナルを調べたり、論文の吟味が出来る力が必要となってきますが、正直な話、初期研修医の間はここまで踏み込まずに現場の感覚を磨く方が大事だと思われます。頭でっかち君にならないように!!

続いて資料としての観点から見てみましょう。アクセスのしやすさ、使い勝手、エビデンスの高さが問題になってきます。例えばCochraneはエビデンスとしては非常に強いですがやや使いにくい側面があります。現実的には

・マニュアル本

・成書

・Up To Date/Dynamed

が使いやすく、多くの人が利用していると思います。

日々の知識をupdateしていくには

・専門分野のジャーナル

・NEJM/Lancetなどの有名ジャーナル(特にReview等)

・Emergency Medicine Clinics of North America等のReview集

・ACP journal clubなどのsynopsis

・Journal Watchなどの最新のジャーナルをpick upしてくれるサービス

・各種メーリングリスト(EMA MLもですね!)

これらを利用すれば効率良く質の良い情報が収集できるでしょう。

救急医学を勉強する上でのおススメジャーナルは

・Annals of Emergency Medicine (Ann Emerg Med)

・American Journal of Emergency Medicine (Am J Emerg Med)

・Journal of Trauma (J Trauma)

・Critical Care Medicine (Crit Care Med)

でしょうか。特にAnnalsには目を通したいですね。

余裕があれば、

・Academic Emergency Medicine (Acad Emerg Med)

・Emergency Medicine Journal (Emerg Med J)

・Journal of Emergency Medicine (J Emerg Med)

・Critical Care (Crit Care)

・American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine (AJRCCM)

といった救急・集中治療のジャーナルもあります(似たような名前ばっかりですが…)。

またサブスペシャリティがある or 希望されている方はその科のTop Journal (Circulation, Pediatrics等)も参考にしてください。

今回の疑問:「喘息患者にMgが効果があるのかどうか」に関して

今回の具体的な話は中々難しいところ(というよりこれから皆さんと一緒に勉強していくところ)ですので、「あ~、無理だぁ」と思われた方もいるかと思います。でも既存の本とは違い、EMAはblogやMLといったコメント欄があるので、「自分が分からない事は他にも分からない人がいるはず」と前向きに積極的に参加・コメントして頂ければこちらからも可能な限りお答えしますし、みんなで討論する事で必ず勉強になると思います。

ただ、今回皆さんに理解して頂きたいのは記載してあった通りSystematic-Reviewの詳細を知る事では無く、

 ・自分の疑問を明確にする事

 ・疑問を解決できる手段を持つ事

であり、そのために今回のJournal Club(JC)があるという事です。

今回の疑問点(Mg とasthma)に関して、日本の喘息治療のガイドラインではあまり触れられていません。ところがUp To Dateや欧米の成書では「重症患者で効果ありだが、ルーチンで使用すべきではない」という記載があります。JCが終わるころにはこの辺の食い違いに関して個人個人で検討出来るようになれれば、と思います。

 ただし、Journal Clubは決して自己満足や蘊蓄を垂れるために行うのではなく、患者さんにより良い医療を提供するために、今後の医療を改善するために行うものです。あくまでも勉強ツールの一環として利用して頂けたらと思います。