2024.05.16

2024/05/16 文献紹介

GWの救急外来の混雑が過ぎたと思ったら、お次はラニーニャ現象の影響によって熱中症患者で忙しくなりそうです。

蒸し暑い嫌な時期が始まりますが、そんな時は涼しい部屋で是非紹介する論文を読んでみてください!

 

今回はEMA文献班の京都府立医科大学附属病院の中村と、聖路加国際病院の宮本から以下の4文献を紹介致します。

1. 妊娠中・産後の頭痛はこれだけは抑えておきましょう

2. 後頭神経ブロックって救急でも安全に施行できそう?

3. 心肺蘇生時のパルスチェックは大腿動脈のほうが有用?

4. 院外心停止への骨髄路確保は静脈路確保と比較してどうか?

 

 

まず聖路加国際病院 宮本からは頭痛に関連する2文献です。

 

Greige T, et al. Managing Acute Headache in Pregnant and Postpartum Women. Ann Emerg Med. 2024 Apr 9:S0196-0644(24)00138-0.

doi: 10.1016/j.annemergmed.2024.03.003. Epub ahead of print. PMID: 38597849.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38597849/

「妊娠中・産後の頭痛はこれだけは抑えておきましょう」

 

普段よく遭遇する頭痛でも、”妊婦の”頭痛や“産後の”頭痛と聞くと少しぎくっとしませんか?

 

一次性頭痛の発作も増えますが、一方で子癇発作や脳静脈洞血栓症、虚血性・出血性脳卒中、可逆性脳血管収縮症候群などの注意すべき二次性頭痛も鑑別に挙がります。

 

妊娠中だとD-dimerの有用性も確立されていないし、なんでも画像検査というわけにもいきません。普段どのように診察をしていますか?

 

不安がある方にはサクッと対応がまとまった本文献が助けになるかもしれません。

 

図1に診断アルゴリズムが、表4には診断をつけた後に推奨される管理の方法が記載されています。

 

困った時に見返せるようにしておくといつか役に立つ日が来るはず!

 

 

Portuondo, et al. Utility of the occipital nerve block in the emergency department: A case series. The American Journal of Emergency Medicine. 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735675724001943

「後頭神経ブロックって救急でも安全に施行できそう?」

 

後頭神経ブロックは、緊張型頭痛、後頭神経痛、変形性頚椎症による頭痛などに対して、薬剤投与で改善が乏しい場合に行われることのある手技の一つです。

 

なかなか救急外来では行う手技ではありませんが、実は色々な頭痛においてその有効性が報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34003170/

 

救急外来でコントロールに難渋している頭痛に遭遇した時に私たちが行っても安全に、かつ効果を期待してできそうな手技なのでしょうか。

 

手技の概要は、

1.頸部をわずかに屈曲させ、座位または腹臥位にする。

2.疼痛がある側の乳様突起と外後頭隆起を触診する。

※大後頭神経は、外後頭隆起から約2cm下方かつ約2cm外側あたり(外後頭隆起から乳様突起までの約3分の1)より起始している。

3.外後頭隆起に向かって針を皮膚に垂直に進め、骨膜にあたったところから約1mm引く。

4.陰圧をかけて針が後頭動脈に刺さっていないことが確認できれば、3mLの麻酔薬を神経の周囲に扇状に徐々に注入する(この文献では0.5% プピバカインや1%リドカインなどが使用されています)

5.15分後あたりに疼痛を確認する。

 

実際の手技は

https://www.youtube.com/watch?v=6Dj5zYbvLxo

の2分すぎあたりからも参考にしてみてください。

 

なんかやれそう・・・!?

 

疼痛コントロールだけでなく、再発予防にもなるようなのです。

内服薬や点滴、酸素投与でなかなか改善しない頭痛に遭遇して打つ手がない時には考慮してもいいかもしれません。

 

ケースシリーズになっているので、実際どのような症例で著者らが施行してみたのかは内容を参照してみてください。

 

 

京都府立医科大学附属病院の中村は心停止に関する2文献です。

 

Sonmez E, et al. A new method of pulse control in cardiopulmonary resuscitation; Continuous femoral pulse check. Am J Emerg Med. 2024 Mar 31;80:168-173. PMID: 38613985.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38613985/

「心肺蘇生時のパルスチェックは大腿動脈のほうが有用?」

 

AHAERCのガイドラインでは、心肺蘇生時の2分ごとのパルスチェックが推奨されています。

ただ、パルスチェックを行う部位については、ゴールドスタンダードはありません。

 

今回紹介する文献では、総頸動脈と比較して大腿動脈の触知で、いかに心拍再開の有無を評価できるかを比較検討しています。

以下の通り、過去にもEMA文献班で何度も大腿動脈での心拍再開確認を扱った文献を紹介してきました。

https://www.emalliance.org/education/dissertation/20210322

https://www.emalliance.org/education/dissertation/202001240

https://www.emalliance.org/education/dissertation/202001285

 

本文献の面白い点は、その簡便さにあります。

通常、総頸動脈の触知(CPC)は心電図のリズムチェックに合わせて間欠的に行いますが、今回は胸骨圧迫中に予め大腿動脈の拍動を触れておき、リズムチェックの際にも大腿動脈の拍動を触れ続けるかどうかを判断する、連続大腿動脈チェック(CoFe PuC)を行っています。

 

トルコのイスタンブールにある三次救急病院で20201月から20221月に行われた前向き研究で、117人が対象となりました。

 

主要評価項目である、最終CPRサイクルでの脈拍の触知が、従来のCPCでは感度91%、特異度61%であったのに対し、CoFe PuCでは感度82.76%、特異度74.58%と良好な結果を示しました。

 

また、脈拍の有無の判定までの時間はCPC10.31±5.24秒だったのに対し、CoFe PuCでは3.03±1.26秒と明らかに短い結果となりました。

 

臓器灌流の確保ため、胸骨圧迫の中断時間を短くする目標は広く認知されていると思いますが、CoFe PuCによってパルスチェック後の迅速な胸骨圧迫再開が期待できます。

 

補助換気者によるパルスチェックでは大腿動脈は遠い、鼠径部の皮下組織が厚いと触知困難など問題点はあり、現状ではスタンダードな方法として推奨されるものではありませんが、なんらかの理由で総頸動脈の触知が難しい場合に代替手段として広く共有されていく可能性もありそうです。

 

 

Lee AF, et al. A comparison between intraosseous and intravenous access in patients with out-of-hospital cardiac arrest: A retrospective cohort study. Am J Emerg Med. 2024 Apr 9;80:162-167. PMID: 38608469.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38608469/

「院外心停止への骨髄路確保は静脈路確保と比較してどうか?」

心停止に対し可及的早期のアドレナリン投与が推奨されています。

日本では救急隊による骨髄路確保はできませんが、世界的には実施可能な地域も数多くあり、その有用性について議論されています。

 

本文献は20191月から202212月の期間、心停止に対し台湾の救急隊による最終的なアドレナリン投与の手段を静脈路と骨髄路で比較検討した後向きコホート研究です。

 

2003人が対象となり、1602人が静脈路、401人が骨髄路よりアドレナリンを投与されました。

 

主要評価項目である心拍再開の割合に有意差は見られませんでした。(静脈路群20.7% vs 骨髄路群18.5%; aOR=0.83; 95% CI, 0.61-1.11; p=0.2086

神経学的予後(CPC1-2で退院)の割合についても有意差は見られませんでした。(静脈路群2.5% vs 骨髄路群1.5%; aOR=0.96; 95%CI, 0.39-2.40; p=0.9356

 

但し、サブグループ解析では、患者が女性であった場合(aOR=0.55; 95% CI, 0.33-0.92; p=0.02)と救急隊が一般チーム(選別された精鋭チームではない)であった場合(aOR=0.62; 95% CI, 0.41-0.94; p=0.02)に、静脈路群で有意に心拍再開の割合が高く、アドレナリン投与までの時間が有意に短い結果となりました。

女性の相対的なBMIの低さで静脈路確保がしやすかった可能性、一般チームの骨髄路確保への不慣れさが指摘されていました。

 

全体としては骨髄路でも静脈路と同様の結果であり、その有用性が窺われますが、熟練していない場合は静脈路に劣る可能性もある結果となりました。ただ、骨髄路も何度目の試みでの成功か、静脈路を試みた後なのか等は明示されておらず、単純には比較できなさそうです。

 

まだRCTされたことのない領域ですので、今後の研究にさらに期待が集まりそうですね。

 

 

今回の文献紹介は以上です。

今後ともEMAをお願いします。

 

EMA meetingの参加申し込みも始まっていますので要チェックです!