2021.06.15

2021/06/15 文献紹介

福岡徳洲会病院の鈴木です。COVID-19の治療やワクチン接種などの対応で、奮闘を重ねている方も多いのではないでしょうか?
「文献を読んでる暇なんてないよ!」という声も聞こえてきそうですが、そんなあなたのために、今回は読みやすいReviewを2つご紹介します。

①アナフィラキシー治療のエビデンスupdate
Amy Dodd, et al. Evidence update for the treatment of anaphylaxis. Resuscitation. 2021 Apr 23;163:86-96.

昨年5月に、北米のジョイントタスクフォースからアナフィラキシーのガイドラインが更新された事を紹介しました。
https://www.emalliance.org/education/dissertation/4

今度はイギリスのResuscitation Council UKより最新のガイドラインが発表されました。
https://www.resus.org.uk/library/additional-guidance/guidance-anaphylaxis/emergency-treatment

本論文はガイドライン更新に際して行われたEvidence Reviewの詳細についての内容です。
今回のガイドラインは、世界中の様々なガイドラインの結果を踏まえて、テーマを絞った読みやすいガイドラインだと思います。

例えば、、、
・アドレナリン投与(0.5mg筋注を推奨)の反応が悪ければ5分後に追加投与。多くの国際ガイドラインでは5~15分おきに追加投与とされているが、5分以上待つ理由は不明。
・アドレナリン2回投与でも改善しない場合、静注アドレナリンの準備をしつつ、更なる昇圧剤投与のために経験豊富な集中治療医などの専門家に助けを求める。
・更なる昇圧剤の種類の選択は、どれが良いか不明。
・European Anaphylaxis Registerの解析によると、抗ヒスタミン薬投与は二相性反応の発生と有意に関連していた(OR 1.52; 95% CI 1.14–2.02)。初期治療としての抗ヒスタミン薬は推奨しない。
・H1拮抗薬の急速投与による血圧低下や、注射製剤による鎮静作用がアナフィラキシー症状と区別困難になるリスクを懸念する。皮膚症状を治療する際は眠くなりづらい内服薬の抗ヒスタミン薬を推奨する。
・カナダのC-CAREレジストリーの解析によると、ステロイドは入院率やICU入院率の上昇と関連した(重症度や治療選択の調整後のOR 2.84; 95% CI 1.55–6.97)。ステロイドのルーチン投与は推奨しない。
・ただし2回のアドレナリン投与後も治療が必要な難治例であれば、ステロイドには補助的な効果が期待できるかもしれない。
・1回のアドレナリンで症状が消失したような症例では、エピペンを持っていて保護者がいる場合に限り2時間の経過観察で帰宅とする。
いかがですか?
知らない事実があった方には一読をお勧めします。
アナフィラキシーに対する抗ヒスタミン薬やステロイドの使用について、皆さんの施設ではどうしていますか?実際のプラクティスや文献の解釈について、共有していただけると幸いです。

②腰椎穿刺後頭痛の予防に関するレビュー
Emmanuel Cognat, et al. Preventing Post-Lumbar Puncture Headache. Ann Emerg Med. 2021 May 6;S0196-0644(21)00151-7.

こちらも新たなoriginal articleではありませんがER医には興味深いレビューです。
例えば、、、
・小児でも腰椎穿刺後頭痛の頻度は変わらない。
・atraumatic型の穿刺針は腰椎穿刺後頭痛を減らす。
・採取する髄液の量が多かったり、髄液を吸引したりする事は腰椎穿刺後頭痛のリスクではない。
・腰椎穿刺後にベッドで休む必要はない。

特に「腰椎穿刺後に仰臥位で1時間」と言ったルールを敷いている施設も多いと思います。
しかし以前から複数の論文でベッドでの休憩に意味はないとされています。
逆に2016年のコクランレビューによると、頭痛の頻度はむしろ増えるという結果だったことが引用されています(RR1.24, 95% CI 1.05-1.48)。
また「atraumatic型の穿刺針の使用は難しくない」という記載がありますが、あくまでもEvidenceの世界での話であって、この紹介文を読んでいるあなたにとって難しいかどうかは別問題ですのでご了承ください。

 

それでは!次回の文献紹介も乞うご期待!