2024/08/15 文献紹介
京都府立医科大学附属病院の中村です。
今年もさらなる猛暑で、熱中症との戦いになっています。
パリオリンピック・パラリンピック、
8月前半の文献紹介は、聖路加国際病院の宮本と共に、
① 敗血症にβラクタム系抗菌薬、持続投与しますか? 〜最新RCT〜
② 敗血症にβラクタム系抗菌薬、持続投与しますか? 〜最新システムティックレビュー・メタアナリシス〜
③ "腸管径の拡大"の判断基準は?
④ FAST偽陽性って何をみてるの?
⑤ LUS-ARDS Score
まずは京都府立医科大学附属病院の中村から、
「敗血症にβラクタム系抗菌薬、持続投与しますか?」
βラクタム系抗菌薬は時間依存性に効果を発揮するため、
その理論を裏付けようと、
それらの結果を受け、
直近では、2023年6月に発表されたRCT(MERCY試験、
今回、その10倍以上を対象とした最新のRCT(BLING Ⅲ試験)と、同時に同RCTを含んだシステマティックレビュー・
① Dulhunty JM, et
al. Continuous vs Intermittent β-Lactam Antibiotic Infusions in Critically Ill
Patients With Sepsis: The BLING III Randomized
Clinical Trial. JAMA. 2024 Jun 12:e249779.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.
BLING Ⅲ試験はオーストラリアを中心に実施されたRCTで、7カ国、
対象者は2018年3月26日から2023年1月11日までに、
対照群(間欠投与群)では間欠的に各回30分以上かけて、
1日あたりの投与量は、
主要評価項目は90日死亡率で、持続投与群24.9% vs 間欠投与群26.8%(絶対差-1.9% [95%CI, -4.9%-1.1%];
オッズ比0.91 [95%CI, 0.81-1.01];
P=0.08)と有意差はありませんでした。
副次的評価項目では、14日目の臨床的治癒率でのみ、
大規模RCTで、持続/
次にシステマティックレビュー・
② Abdul-Aziz MH, et al. Prolonged vs
Intermittent Infusions of β-Lactam Antibiotics in Adults With
Sepsis or Septic Shock: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA. 2024 Jun 12:e249803.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.
前出のBLING Ⅲ試験を含めた17のRCTが特定され、
オーストラリアのクイーンズランド大学病院などが中心となって分
間欠投与群は各回2時間未満で投与された症例で、
複数のRCTでメロぺネムやピペラシリン・
主要評価項目は90日死亡率で、
副次的評価項目では、持続投与群で有意にICU死亡率が下がり(
以下のサブグループ解析も行われましたが、
1. メロぺネムvsピペラシリン・タゾバクタム
2. 培養検査陽性vs陰性
3. グラム陰性菌vsグラム陽性菌
4. 腎代替療法ありvsなし
5. 呼吸器感染症vsその他の感染症
6. 敗血症vs敗血症性ショック
7. 男性vs女性
90日死亡率に関して、NNT (Number needed to treat) 26となり、結構いいじゃないと思いましたが、
RCTでは渋い結果となりましたが、
シリンジポンプの必要数や、ルートの数、配合変化、
但し、
続いて、聖路加国際病院の宮本から、エコーに関する3文献です。
③ Shokoohi H, et Al.
Optimal bowel diameter thresholds for diagnosing small bowel obstruction and
surgical intervention with point-of-care ultrasound. Am J Emerg
Med. 2024 Jul 14;84:1-6.
PMID: 39043061 DOI: 10.1016/j.ajem.2024.07.
「”腸管径の拡大”の判断基準は?」
今年6月の文献紹介で小腸閉塞(SBO)
SBOを疑う所見の一つとして腸管径の拡大が挙げられますが、
多くの文献では過去のCTを使用した研究の結果をもとに2.
今回、SBOの診断がついた計367名を検討したところ、
従来よく用いられる腸管径>2.5cmでは
感度85.2%( 95%CI 78.3%-90.6%)、特異度59.1%( 95%CI 52.4%-
65.6%)、でした。
AUCをもとに最適閾値を検討したところ、
腸管径>2.75cmが、感度71.8%(95%CI:
63.7%- 79.1%)、特異度67.1%(95% CI :60.6%-73.2%)でAUC:
SBOに対するPOCUSでは腸管径の閾値を従来より少しだけ大
ただし、積極的に疑いたいのか、それとも除外したいのか、
また、前回紹介した内容のto-and-fro signやKeyboard signや腹水などと合わせることで自分の中での検査前確率をグ
ちなみに今回の研究では
最大感度は<1.7cmで100%(特異度:21.8%)、
④ Maria A. Parker, et al.The Lipliner Sign: Potential Cause of a False
Positive FAST Examination,The Journal of Emergency
Medicine,2024
https://doi.org/10.1016/j.
「FAST偽陽性って何をみてるの?」
FASTで陽性だと思ったのにCTで何もなかった、
それに対して一つの答えとなりうる所見に関して述べられた文献で
今回報告された”Lipliner Sign”は、
遊離液による低エコー域は楔形で組織平面に沿って徐々に幅が小さ
過去に似たようなFASTの偽陽性所見としてDouble Ring
Sign(DRS)が報告されています。
DRSでは、肝臓と腎臓の間の低エコー領域(腎周囲脂肪)
Lipliner Signの特徴を知っていると、
こちらの文献、
⑤ Smit MR, et al. Lung ultrasound for
diagnosis and management of ARDS. Intensive Care Med. 2024
Jul;50(7):1143-1145.
PMID: 38656359
DOI: 10.1007/s00134-024-07422-
「LUS-ARDS Score」
コロナが流行って以降、
実際に、
ただ、
実際の画像はFigure 1を参照いただければと思いますが、
Score 0:A-linesのみ
Score 1:<50%の範囲のB-lines
Score 2:>50%の範囲のB-lines
Score 3:consolidation
としています。
もちろんこれらの所見だけでは心不全に伴う肺水腫などとは区別し
ということに関しても記載されています。
これらの局在性やスコアの変化を観察することで、
ICU管理中の評価に関して触れられた文献ではありますが、
特に、画像検査へ行く余裕がない場合など、
京都府立医科大学附属病院 救急医療科 中村侑暉
聖路加国際病院 救急部・救命救急センター 宮本颯真