2019.05.17

都立広尾病院 救命救急センター

都立病院の中でも広尾病院は救急・災害医療、島嶼医療、脳血管疾患、循環器疾患を重点医療としている。救命救急センターではそのすべてに関わり、他診療科と協力しながら診療に当たっている。救命救急センターICU(130病棟)8床、HCU(220病棟)20床のベッドコントロールを行い、入院管理をしている(院内のICUは別にある)。単なる振り分けではなく、自己完結型を基本としている。当該科が明らかで単一のプロブレムの場合は各診療科にお願いしている(脳出血や心筋梗塞など)。3次救急患者(東京消防庁からのホットライン)は救命救急センター医師が対応し、入院・集中治療管理を行っている。日中の2次救急(救急車)については救命センター医師が初療を行う。夜間・休日の1・2次救急(ER外科、ER内科、ER小児科)は各診療科医師が担当し、適宜救命センター医師がバックアップしている。大学病院や巨大市中病院と異なり、各診療科の垣根が低く、救命救急センター内だけでなく、院内医師間はアットホームな雰囲気がある。

当科の特徴

救急・集中治療に必要なスキル(気管挿管、人工呼吸管理、中心静脈カテーテル挿入、動脈圧ライン確保)はもちろん、PiCCOTM、VigileoTM、EV-1000を用いた循環管理、各種エコー、小縫合、創傷処置、熱傷管理、V-A ECMO(PCPS)導入、開胸心マッサージ、気管切開、レベル1輸液システム、CHDFなどは充分に経験できる。
入院管理はICUから一般病棟まで、多発外傷、ショック、呼吸不全、敗血症、薬物中毒、熱傷、各種感染症など多岐にわたる。熱傷処置や分層植皮術、陰圧閉鎖療法についても豊富な症例数がある。

島嶼(伊豆諸島、小笠原諸島)からの救急搬送依頼も多く、救命救急センターはそのコーディネートを行っている。多くは救命救急センターのスタッフ、シニア・ジュニアレジデントが搬送の添乗を行う。伊豆諸島へは東京消防庁の防災ヘリ、小笠原諸島へは海上自衛隊のP3-C対潜哨戒機、US-2救難飛行艇での添乗を行う。年間のヘリ・航空機搬送は平均250件である。病院屋上には24時間、夜間・休日も使用可能なヘリポートがある。希望により島嶼地域診療所への代診勤務も可能である。渋谷区恵比寿にありながら意外かと思われるが、入院患者の平均10%が島嶼在住患者である。外国人患者も診療の機会が多い。是非英語も勉強して頂きたい(自戒)。
災害医療訓練、DMAT活動についても救命救急センターが中心的役割を担う。TBSドラマDr.DMATを監修したのは当院である。スタッフは東京消防庁の救急指令センターで救急隊指導医としてメディカルコントロール業務も行っている。救急相談センター(#7119)の相談医も派遣している。

東京都医師アカデミー採用のシニアレジデントは診療科に関わらず、3か月間救命救急センターのローテーションが必須となっている。このため当救命救急センターには当院だけでなく、救命救急センターを持たない各都立・公社病院(駒込、松沢、荏原、大久保、東部地域、大塚、豊島など)の様々な診療科のジュニア・シニアレジデントが常に在籍している。若く、活気のある職場であり、スタッフは常に教育的であることを意識している。
シニアレジデントの採用にあっては、救急医・総合診療医の性質上、人柄やコミュニケーション能力を重視する。知識・技術はレジデンシー開始後に修得して頂ければ充分である。病院の性質上3次救急、集中治療をバリバリという人から総合診療・家庭に近い将来像を描く人まで幅広く、柔軟なカリキュラムを用意可能である。

【勤務環境】
シニアレジデント専用の部屋に1人に一つのデスク・本棚を与えられる。
それとは別に救命救急センターは病棟横に専用の医局を持っており、インターネット環境、ソファー、冷蔵庫、電子レンジ、コーヒーメーカー、TV、電子カルテ、当直室などが完備されており、快適である。特にコーヒー豆はスターバックス、タリーズ、カルディ、猿田彦珈琲などでスタッフが厳選して購入している。
スタッフにはないのだが、シニアレジデントには宿舎がある。宿舎といっても借り上げの賃貸マンションであり、病院の近隣にあり、家賃の高い広尾界隈だが激安で入居できる。うらやましい限りである。

【教育資源】
教育用の各種シュミレーターは救命センターのスタッフルームに常備している。
またスタッフルームには救急関連の医学書を豊富に取り揃えている。指導医も読みたくなるようなものを厳選して研究研修費で購入している。最近の医学書は読みやすいものが多く、是非手にとってい頂きたい。欲しい本があれば検討の上適宜購入する。

CIMG1581_R

研修カリキュラム

研修期間は基本3年間としている。

【1年次(医師3年目)】
都立広尾病院救命救急センターでの研修を主とする
JATEC、BLS/ACLS(ICLS)、PALSのプロバイダー資格取得は義務とする。研究研修費から参加費を援助する。東京DMAT研修に参加し、隊員資格を取ってもらう。学会発表も積極的に支援する。

【2年次(医師4年目)】
希望により院内他科への出向研修(内視鏡研修など)や他院への国内留学を行う。杏林大学救急医学教室・高度救命救急センターへの派遣も可能である。症例報告など誌上発表も行って頂く。希望により各種Off the job trainingのインストラクターとして参加する。

【3年次(医師5年目)】
将来の救急医としてのビジョンを明確にし、そのための研修を継続する(院内他科、他院への国内留学)。救急科専門医の受験資格を得る(2~3年の在籍により専門医受験のための症例数・手技数は充分確保される

【4年次(医師6年目)以降】
指導医・病院の評価によりスタッフ採用が可能である。

カンファレンスの内容

病棟入院患者カンファレンスは毎日朝夕
曜日により各病棟カンファレンス、抄読会・勉強会を行っている
水曜日は中島による教育クルズスを行っている
前日の当直研修医とER受診症例を振り返るERレビューは平日毎日行っている

【過去のクルズス内容】
・救急・集中治療に必要な生理学(呼吸・循環編) 何事も基礎が大事なんです
・救急・集中治療に必要な生理学(腎臓編)ついでに電解質・利尿薬も分かる
・止血・線溶の基礎と臨床
・人工呼吸器の使い方 Evita・HAMILTONの特徴・モードを中心に、肺保護戦略も
・外傷初療JATECとは? 内科医は多発外傷患者を診れないのか
・みんな疎かにしがちな栄養管理 一食の重み、栄養も治療なんです
・大量出血への対応、血液製剤のキホン
・意識障害 イコール頭じゃないんです、鑑別は20秒で挙げれるように
・失神 NMSでも死んでしまう場合もあるんです
・見逃しのない胸部X線写真の読み方
・気管支喘息の治療 全身ステロイドの違い、吸入薬を中心に
・ショックと循環管理
・酸塩基平衡・血液ガスを読む! 代謝性アシドーシスを中心に
・気道緊急 挿管できないときのTips
・早くて安全なブラインドCVC挿入 特に鎖骨下静脈穿刺(シュミレーターを用いて)
・エコーガイド下血管穿刺の実技(シュミレーターを用いて)
・外傷における胸部X線の評価
・PiCCO・Vigileo・EV-1000を用いた循環管理
・FAST(エコーを用いた実技)
・気管支鏡のコツ(気管支モデルを用いた実技)
・頸椎レントゲンの評価と脊髄損傷

IMGP0071_R

センター概要

【概要】
・名称:都立広尾病院 救命救急センター
・所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-34-10
・TEL:03-3444-1181(代表)
・FAX:03-3444-3196
・Webサイト:http://www.byouin.metro.tokyo.jp/hiroo/relations/kyumei.html
・研究責任者:後藤 英昭(救命救急センター部長・センター長)

【スタッフ&シニアレジデント数(女性医師数)】
・専任スタッフ:5名、兼任スタッフ:5名、非常勤:4名(女性医師数1)
・専任レジデント:1名、ローテーションレジデント(他都立病院・院内他科から3ヶ月交代):3~5名
・初期研修医:4~5名(ERも含め)

【勤務体制】
当直制。夜間・休日の日当直は救命救急センター医師2名+ジュニアレジデントを基本としている。
シニアレジデントの当直回数は月5~6回程度である。また当直明けは研修医を含めて昼までには帰宅できるようにしている。希望によりER内科、ER外科の勤務も可能である。
土日祝は当番制としており、十分な休日を確保できるようにしている。平日週1回は研究日として外勤勤務が可能である。外勤の形態・診療内容については相談に乗れる。On-offははっきりさせている。休日数や外勤日も調整して勤務表を作成している。他科と比較して定期外来・手術などdutyがない分、平日の休みも取り易い。
院内の当直体制は救命救急センター2名、ER内科、ER外科、ER小児科、循環器科、内科管理、麻酔科、外科、脳外科、整形外科、小児科、産婦人科、神経科、混合系(皮膚科・形成外科・眼科・耳鼻科・泌尿器科が日替わり)、心臓外科(2日に1度程度)、プラス各科ローテーション中の初期研修医がそれぞれに入る。常時16~20名程度が泊まっていることになり、万全の体制である。各科の先生の協力には脱帽するほかない。各科の垣根は低く、コンサルトなど非常に働きやすい。

【年間救急車搬送件数&救急受診総数】
・救急搬送件数:6255件/年(うち3次ホットライン880件) ←平成25年度は少なめ
・救急受診総数:23291人/年(うち入院4569人)

【ICU、独自ベッドの有無】
救命救急センターICU(130病棟)8床+(220病棟)20床のベッドコントロールを行い、入院管理をしている(院内のICUは別にある)。病状が改善した場合は一般病棟へ移るが、ベッド数に制限はない。自己完結型を基本としている。

DCIM0230_R

学生実習、研修医見学の連絡先

常時可能。スタッフとの都合が会えば土日祝も可。
連絡は病院代表から庶務課 豊田・斉藤まで

紹介者の自己紹介(救命救急センター医長 中島幹男)

2002年(H14年)近畿大学卒後、浜松医大、市立島田市民病院、榛原総合病院で内科全般・麻酔科・救急をローテーション研修しました。田舎の病院なので内科外科関係なく何でも診させていただきました。呼吸器内科・総合内科の専門医を取得後、杏林大学救急医学教室・高度救命救急センターの門を叩き、2012年から都立広尾病院救命救急センターでお世話になっています。救急専門医として日々の日常臨床だけでなく、研修医・レジデント教育にも力を入れています。教える側は教えられる側よりも多くの努力をしないといけないと思いながら、日々眠気と戦っております。各専門医の次ぐらいの知識・技術をつけられるように意識し、多発外傷、広範囲熱傷、敗血症など数多くのあらゆる重症患者を前に今自分に何ができるかを考えております。モットーは「Teaching is learning twice.」、「ライバルは昨日の自分」、「現状維持は後退」です。小回りの利く病院ですので、3次救急・集中治療寄りの研修、ER・総合診療・僻地医療寄りの研修、救急以外のサブスペシャリティーの希望研修など個々のビジョンにあわせて柔軟な研修環境を提供できると思います。是非気軽に見学にいらしてください。

IMGP0323_R