2019.05.17

熊本赤十字病院 総合救命救急センター

プロフィール

当院救命救急センターは、あらゆる患者さんを24時間体制で受け入れているER型救命救急センターであり、年間の救急患者数は約6万人(うち救急車搬送は約7000台)に上ります。1次・2次・3次救急という基準は医療が介入して初めてわかるものであり、患者さん自身で緊急度・重症度を判断することは困難です。 全ての患者さんを断らずに受け入れる救急体制があってこそ救われる命があると考えています。当院は2012年1月にドクターヘリの運用開始、2012年5月に新救命救急センターをオープンし、熊本圏域のみだけではなく、他県の重篤な患者さんを受け入れる体制を整備しています。 
Anyone(こどもからお年寄りまで。軽症者から重症者まで。)
Anything(診療科を問わずどんな疾患も。)
Anytime(24時間365日。平時から災害時まで。)
これこそが当センターが目指す「総合」救命救急センターの骨子です。

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当科の特徴

【北米型ER】
当救命救急センターは 1996年の設立当初より、北米型ERとして診療を行っている老舗です。長年救急科医がER診療に従事していた歴史があり、1次~3次全ての患者に対して、まず救急医が初期診療を担当し、Advanced triageを行っています。

【攻めの救急医療】
救急医療は待ったなしです。運ばれてくる患者さんを病院で待つのではなく、1分でも早い医療介入のために前に出て行く姿勢が必要です。当院は熊本県ドクターヘリの基地病院でもあり、重篤事案発生時には、ドクターヘリで空から、2台のドクターカーで陸から病院の外に赴き、病院前診療を展開しています。ER型救急でありながら積極的に病院前活動を行っている施設は全国的にも珍しく、当センターの特徴の一つといえます。

【重症多発外傷への積極的な取り組み】
外傷診療は時間との戦いです。適切な根本治療までの時間をいかに短縮できるかが全てと言えます。 当院では、救急現場から重症多発外傷の搬入情報が入った段階で、「コードレッド」を発令し、関係診療科を搬入前にERに召集し、救急医が指揮をとり総力をあげて外傷診療に取り組んでいます。 毎月「トラウマカンファレンス」を行い、重症多発外傷に対する診療体制や院内プロトコールを整備し、外傷患者の救命率が上がるよう日々精進しています。2015年度より外傷外科部門を設立し、外傷チームを中心に初療から集中治療へのシームレスな外傷診療を展開しています。

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【スムーズな脳卒中診療】
当院では脳梗塞に対するt-PA(血栓溶解療法)を用いた迅速な治療を行うために、救急隊からの搬入情報より、救急医の判断で「t-PAモード」を発令し、神経内科医を招集して制限時間内にt-PAの適応を見極めるべく協力して初療にあたっています。熊本県の脳卒中の診療連携は全国でもトップクラスであり、当院の救急医はその初療において大きな役割を果たしています。

【多様な救急指導体制】
当院のスタッフの出自は様々で、当院のER後期研修プログラムを終了後にスタッフになった医師や、離島で診療をしていた医師や、米国の救急レジデンシー研修を終えた医師もおり、多彩な教育が魅力の一つです。また指導方針に差異がでないように、当院独自のER診療マニュアルを作成し、診療の標準化と円滑で安全な救急診療を目指しています。

【海外医療活動】
当院は日本赤十字社の国際救援拠点病院であり、今まで多くのスタッフを海外救援に派遣しています。最近では南スーダン救援事業、ハイチ地震救援事業、またイラクの戦傷外科病院研修へ救急医が派遣されています。若手の医師であっても希望する意志があれば、海外医療活動にでるチャンスを必ずつかむことができます。

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後期研修カリキュラム 〜オーダーメイド研修〜後期研修ERプログラム
(http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/special/resident/senior/general/er.html)

【目標】
・重症度、専門分野を問わず、全ての救急患者の初期診断治療をマネジメントできる。
・Common diseaseに習熟し、初期研修医を教育できる。
・ドクターカー、救急車に搭乗し、病院前での救急活動ができる。
・救急疾患に対するEBMを含めた知識を有し、ディスカッションすることができる。
・ACLS,ICLS,PALS,JATEC,JPTEC,MCLS,HMIMMSを実践、指導できる。
・救急に関する学会発表、論文作成を積極的に行う。

救急後期研修は原則3年間(変更可)で、ERを中心に当院各診療科を自由にローテートします。日本救急医学会の救急専門医受験資格を取得することが可能で、その他の専門分野の資格や、フライトドクターを目指すこともできます。
ローテーションは原則、院内全科で行うことが可能で、いずれの科でも戦力として研修してもらいます。全身を観る能力を養うため、総合内科を含めたローテーションをすることを勧めていますが、本人の希望次第で柔軟にローテーションすることが可能です。地域の救急医療体制の理解ができ、技術的に可能だと判断された場合はドクターヘリのOJTとしての研修を行うことも可能です。
また、病院全体として短期間での国内留学を積極的に推奨しています。後期研修期間中に最大6カ月間の短期留学が認められており、各自のキャリアアップのためにも積極的に研修にでることを奨励しています。(過去の研修例:OHCU救急部、日本医科大学高度救命救急センター、日本医科大学千葉北総病院、帝京大学救命救急センター、福井県立病院、大阪府泉州救命救急センター、東京ベイ・浦安市川医療センター)
また、過去の専門科や経験年数問わず、ER診療に興味のある方は長期短期問わず研修の対応可能です。当院における大きな特徴として、院内各科が若手医師の研修に非常に協力的であることが挙げられます。後期研修医に限らず皆自分の目標とする医師像にあった研修を他科で行う風土が根付いているため、間違いなく希望する研修ができます。

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カンファレンス/レクチャー

・救命救急センターカンファ(毎週木曜日午前,全員参加)
・全体ミーティング(週間報告、運営上の問題点を医師、看護師、事務が討議)
・症例検討会(M&M(Morbidity & Mortality)事例、Good Job!事例等を報告・検討)
・スタッフセミナー、ERマニュアル作成(救急関連の文献を読み発表し、当院ERでの治療方針をまとめたクイックレビューの作成)
・OSCE(ワークステーション内でのシミュレーション実習)
・救急科入院患者総回診
・初期研修医講義(毎週火曜日7時-)
・トラウマカンファレンス(月1回)(外科系各科/麻酔科/放射線科と合同で、多発外傷症例に関しての検証を行い、外傷診療レベルアップを検討)
・小児救急合同カンファ(月1回)
・トリアージカンファ(月1回)
・内科救急合同ICUカンファ(月1回)
・ドクヘリ定例会(ヘリ作業部会) (月1回)
・循環器・心外カンファ(月1回)
・脳卒中カンファ(月1回)
・熊本若手救急医の会(年4回)
・救急隊合同事例検討会(年4回)
・ICLSコース(年4回 )
・JPTEC、ITLSコース(年2回)
・院内外傷講習会(年1回)

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センター概要(病院HP) http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/
・名称:熊本赤十字病院 総合救命救急センター
・所在地:〒861-8520 熊本県熊本市東区長嶺南2丁目1番1号
・TEL:096-384-2111 FAX:096-384-3939
・設備:初療室6床、経過観察室10床、小児経過観察室4床、オーバーナイトベッド6床、診察室9室、トリアージブース1室、除染コーナー、ワークステーション
・研修医数:ER後期研修医5名、ローテートの初期研修医2-3名、
 他科からのローテートの後期研修医1-2名
・指導医数:スタッフ11名
(うち日本救急医学会救急科専門医9名、指導医1名、女性医師2名)
・Webサイト:http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/section/support/emergencycritical.html

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勤務体制

ER部門、病棟部門、集中治療部門に分かれて適宜ローテートします。
●ER部門(主に救急車や時間外walk-in患者に対応、Dr.Car要請時にも対応)
完全2交代制(準夜勤をした場合には最低24時間offであることが義務化されています)
・日勤(8:00~20:00)
スタッフリーダー1名+スタッフまたは後期研修医2-4名+初期研修医1-2名
・夜勤(20:00~翌8:00)
スタッフリーダー1名+スタッフまたは後期研修医1-3名+初期研修医 1-2名
※準夜帯・深夜帯のwalk-in患者は各科の医師の協力を得て運営していますが、深夜帯はほぼ救急科で対応します。
● 病棟部門 1名 救急科入院患者(5-10名)に24時間対応、1週間交代
● 集中治療部門 スタッフ2-3名(外傷外科、救急科)+後期研修医1名 救急科入院患者のうち重症症例(心停止後症候群、薬物中毒、多発外傷)(3-5名)に24時間対応、2週間交代。
【年間救急件数(2014年度統計)】
・救急車搬送台数: 6,823 件
・救急外来受診者(walk-in)数:57,175人(うち小児受診者数28,289人、CPA搬送197件)
・ドクターヘリ出動回数:627件
・救急センター受診患者総数に対する外傷患者の割合:18.8%
【入院率】
即日入院率(救急患者総計(walk-in患者含む)12.4% そのうち救急車搬送患者では47.9%)
【ICU・独自ベッドの有無】
集中病床は29床(ICU8床、ECU7床、BCU2床、GICU12床)あり、各専門科が管理(open ICU)しており、独自ベッドは所有していません。しかし多科にわたる全身管理を必要とする患者に対しては、必要に応じて救急科が協力して管理しています。

後期研修医の声

熊本赤十字病院、第一救急科部後期研修医の岩谷健志です。私は地元宮崎県で初期研修終了後に、ここ熊本で後期研修をしています。実は熊本は縁もゆかりもない土地なのですが、なぜ私がこの病院を選んだのか、この場をかりて少しお話をさせていただきます。
私は将来的に医療資源、マンパワーの不足している地域医療の現場で働きたいという夢があります。初期研修時代は医師になってまだ日も浅く課題が多すぎて、何が必要なのか何をすればいいかもよくわからない状態でした。そんな時に漠然と考えたのが、いろいろな経験ができる病院で勉強してみたいというものでした。
年間6万人を超えるwalk in患者に加え、救急車、ドクターヘリでの重症患者搬送、災害医療まで経験できる熊本赤十字病院は非常に魅力的でした。小児から高齢者、そして軽症から重症まで症例は多彩です。日々、外来にごった返す患者の波のなかで、活気あふれる初期研修医や経験豊富な指導医と共に診療にあたれることは非常に刺激的です。
また後期研修医は指導医のもとドクターヘリ業務も行いますが、少ない医療資源、マンパワーで患者にあたるこの医療は、私が目標とする地域医療に通じるものがあります。当院は北米型ERを基本としていますが外傷外科、集中治療も救急科部でカバーしており搬送後の治療、全身管理も一貫して経験することができます。患者はやはり重症が多いですが目の前で患者を「死なせない」ことの大切さ、そしてその難しさを毎日痛感しています。
楽しいことばかりではない毎日ですが、同じようにそれぞれ目標をもって集まった後期研修医たちと議論したり、雑談したり、飲みに行ったり、旅行にいったり(熊本は阿蘇や天草をはじめ自然や食べ物がとても豊富です)と充実した日々を送れています。そしてこのようなEM allianceという場を通して、その輪をさらに全国に広げることができ嬉しく思います。引き続き皆様に刺激をもらいながら、日々精進していきたいと思います。

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当センター見学の連絡先、お問い合わせ先

救急科担当 岡野 雄一(おかの ゆういち) (yuichiokano9626sei@yahoo.co.jp)
熊本赤十字病院総務課庶務係(096-384-2111内線7223)に電話またはe-mail(jrckhp@kumamoto-med.jrc.or.jp)で問い合わせを行って下さい。
見学者受入れの流れについては下記HPへ
http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/special/resident/visit.html
スタッフ募集要項については下記HPへ
http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/medical/recruit/data/doctor/er-dr.pdf

EMA ジョブフェア2015 summer

EMAジョブフェアに参加いただきました!
発表用のスライドです。
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