2021.01.22

妊活と仕事の両立について

文責:EMA for us

◆妊活ってなに?

 『妊活』は、子どもが欲しいなと考える時点から始まります。子供を授かるという目標に向かって夫婦で話し合ったり、知識を取り入れて行動したりするところから、病院で不妊治療をおこなうところまで幅広く、子供のいる生活をめざして行動することを表した言葉です。

◆妊活は当事者女性だけの悩み事?

 『妊活』と聞くと、『自分にはあまり関係ない』話だと思っていらっしゃる方多いのではないでしょうか?いえ、妊活は決して他人事ではありません。
5.5組に1組の夫婦が何らかの不妊治療を受けているという事実を知ると、特別なことではなく、身近にある課題と思えるのではないでしょうか?
そして、妊活なんて自分には関係ないと思っていらっしゃる方いませんか?そんなことはありません。女性が妊娠できるチャンスは単純計算でも年間約12回しかありません。ですから、そのチャンスを生かして納得できる妊活をしようと思うと夫婦ともどもシフト調整などとても重要になってきますし、理論通りにいかず不妊治療が必要になってくることもあります。
自分自身が、自分のパートナーが、自分の部下や同僚が妊活で悩むことだってあるのです。

◆妊活の悩みの種とは何なのでしょうか

 妊活経験者にとって悩みの種は、パートナーを含めた周囲の理解、高額な治療費、時間的負担など様々ですが、その一つに生活に直結した仕事面での悩みがあります。
厚生労働省の資料では、不妊治療をしたことがある、または予定している労働者の中で、『仕事と両立している(または両立を考えている)』とした人は53.2%ですが、両立できず治療自体をやめた、仕事をやめた、働き方を変えた人は合計34.7%でした。

参考文献2)より

では、その理由は何でしょうか?同じく厚生労働省の調査では、精神的負担、通院回数の多さ、体調体力面での負担が3大理由のようです。

参考文献2)より

 精神的負担の例としては、妊活・不妊治療中に自分とパートナーとの気持ちにずれが生じたり、友人の出産報告を聞いたとき素直に喜べず落ち込んでしまったり、そういった自分がひどい人間なんじゃないかと感じてしまったり。『どうして子供産まないの?子供はかわいいよ。』と気軽に同僚や上司から言われたりするのも精神的な負担になることがあります。とくに救急医の仕事では、親の不注意でケガをした子供さんや、虐待を受けた子供さんを診察する事が多く、その際により強いストレスを感じてしまうことも想像に難くないのではないでしょうか?
 また、とくに女性の場合不妊治療をするとなると通院回数が多いので、シフトに影響も出るでしょうし、キャリアを積むのにも影響が出るのではないかと心配になるでしょう。
 治療の内容によっては、ホルモン剤の使用により頭痛や吐き気など体調に支障をきたす可能性もありますから、体力勝負の救急医にとってもこれはかなりの負担です。

◆デリケートな問題故、どういったサポートの仕方があるのか?

 妊活・不妊治療に関することは、プライバシーに属することです。たとえ本人から相談や報告があった場合でも、本人の意思に反して職場全体に知れ渡ってしまうことがないようにプライバシーの保護に配慮しなければなりません。また、当然のことですが、妊活・不妊治療を理由に、職場において嫌がらせや不当な扱いを受けることはハラスメントになりえます。
 では、もし同僚や部下から相談されたとき具体的にどのように対応・サポートすればよいのでしょう?以下にそのポイントをまとめました。
 ◎相談対応のポイント
  □企業(病院・部署)として『妊活・不妊治療と仕事の両立を支援する』という
メッセージを伝える。
  □仕事との両立において実際どのような課題を抱えているかを把握する。
  □本人がどのような働き方をしたいのかのニーズを把握する。
  □企業(病院)独自の両立支援制度があればその情報を提供する。
   (制度を利用する場合の具体的な申請方法と申請のタイミングを説明する。)
  ※本人から妊活・不妊治療について職場にオープンにすることに了解を得ている場合は以下も
  □不妊治療に限らず、家庭の事情はすべての人に起こりうることを職場内で共有し、理解を深める。
  □妊活中の人のカバーをしている同僚の働き方や業務量の状況を把握し、必要であれば見直し、調整を行う。

◆妊活を予定している方、不妊治療を受けている方たちへ

 仕事と両立するために、自分の職場ではどのような制度があるのか確認しましょう。確認方法は、就業規則を調べたり、人事労務の担当者に聞いたりするのが良いです。

 制度の具体例は以下のようなものがあります。
  ◎不妊治療のための休暇・休職制度
  ◎失効した年次有給休暇の積立休暇制度(不妊治療にも利用できるか要確認)
  ◎半日単位・時間単位の年次有給休暇制度(不妊治療にも利用できるか要確認)
  ◎フレックスタイム制度やテレワーク制度(不妊治療にも利用できるか要確認)
  ◎不妊治療に係る費用の助成制度
  ◎その他不妊治療に関する支援制度の有無

 また、その他のお役立ち情報としては
①不妊治療連絡カード
 不妊治療を受ける、今後予定している人が職場側に不妊治療中であることを伝えたり、制度を利用する際に使用したりすることを目的としたものです。

参考文献3)より

②特定不妊治療への助成
 所得制限はありますが、体外受精および顕微授精に要する費用の一部を助成する公的な制度があります。お住まいの自治体のホームページなどから確認されると良いです。

③不妊治療専門相談センター
 各都道府県、指定都市、中核市が設置しているセンターです。医学的・専門的な相談や心理的な悩みについて医師・助産師等が対応したり、診療機関ごとの治療実施状況に関する情報提供を行ったりしています。

④都道府県労働局

参考文献3)より

◆さいごに…

 妊活と仕事の両立はとてもデリケートな悩みですから、日ごろからのチーム内でのコミュニケーションが十分とれているかどうかが重要です。コミュニケーションがとれていれば、相談する側もされる側も精神的負担が軽減されたり、より満足のいく妊活ライフが送れるようになるかもしれません。
 
皆様、最後まで読んでいただきありがとうございました。

【参考文献】
1)国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年6月)http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp
2)厚生労働省.平成29年度「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合調査」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197936.html
3)厚生労働省.不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック~不妊治療を受ける方と職場で支える同僚の皆さんのために~ https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf