2019.04.19

ER・救急999の謎

 今回の本書の執筆はEM Allianceのメンバーを中心にも我が国の将来を担う歴戦の勇者の救急医たちや救急医を信頼してくれる医師たちによって行われました。 本書では忙しい救急外来で役立つように幾つかの工夫がしてあります。まず、「集中治療999の謎」同様に、本書の謎はA, B, Cにランク分けしてあります。

 はじめに、Aで基本知識を身に着け、少し自身がついてくればBでさらに理解を深め、研修医や看護師さんをへ~といわせられるトリビア的な知識を身に着けたい人はCまで読むという使い方が可能です。 カバーした内容は多岐に渡っています。もちろん蘇生、外傷、中毒、呼吸、循環、消化器、神経などの救急医療の柱となる領域はもちろんのこと、ERでとても大事な分野にも幅広くアプローチしています。
「マルチタスクのコツは何か?」(総論)
「開放骨折には高圧洗浄が推奨されるか?」(外傷)
「顔面の創傷での気をつけるべきポイントを述べよ」(創傷管理)
「腰痛のred flagとは何か?」(腰痛) 「救急外来で超音波が活用できる局面をあげよ。」(検査とプレディクションルール)  

 同じ謎を別々の執筆者が扱っているところもありますが、それぞれの考えを対比させるため編集者の判断であえて残しています。1つの問いに対して、個々の医療者がどのようなエビデンスを以て臨むか?同じエビデンスをどのように解釈するか? を読み比べるとさらに理解が広がると思います。そして、それぞれの謎に対する答えは簡潔になっています。夜勤や当直の間にさっと読んで理解できるようになっています。さらに理解を深めたい人には参考文献があり、より深い学習が可能になっています。 このように素晴らしい執筆陣によって、情熱と工夫満載に企画された本書を読んでいいただくことで「キツイ、汚い、危険な」な3K職場であったはずの救急外来が「実は肥沃な大地である」 ことを是非みなさんに知っていただければと存じます。そして、米国のように救急医学が単なる「便利屋」を遥かに通り越し「最も人気のある専門科」の1つになることを願っています。そして、ますます卒前卒後の医学教育で最も深みのある研究や教育が提供される豊かな農場となることも。

 本書は一冊の書籍であり、「たかが救急医」の書いた本かもしれません。しかし、「この人・この家族のために」と限られた社会資源の中で、最大の治療効果のある方針を検討する「医学の原点」である救急医療の醍醐味が詰まった熱い本であることも確かです。本書を多くの医師・医学生・医療者に手にとって頂き、救急医学の魅力が更に多くの方に伝わり、我が国の救急医療がさらに充実することを願ってやみません。

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