2019.11.15

第6回「検査」

プルルルル、プルルルル……

G「あー、救急車かぁ。どうぞー。」

救急隊:80歳男性、トイレで倒れたそうです。奥さんが倒れる音に気づいて救急要請されました。冷汗著明です。血圧:90/59 mmHg、脈拍:105 /min、SpO2:98% 室内気、体温:35.8℃です。

G「なんかヤバそうだな。血圧が下がって、脈拍が上昇してるし。ショックかな。」
M「何が来るの?」
G「分からないですけど、失神+ショックっぽいですね。」
M「vitalだけ聞くと出血性っぽいけど、鑑別は他にもあるよね。OK, 頑張ろう。」

患者が到着し、初療室に搬送されて診療を開始したG先生とM先生。

G「もしもし?どのような感じで倒れたか覚えてますか?」
患「いや、なんか胃から胸のあたりが一瞬痛くなって、そこから倒れたみたいです。今は痛くも何ともないですよ。」
G「うーん、消化管出血での失神かなぁ。積極的に補液しようか。」
M「胃のあたりが痛くなって倒れたんですね?先生、採血は凝固もとってね。」
G「とってありますよー。」
M「D-dimerは?」
G「え、いるんですか?・・・あ、肺塞栓ですね!確かに鑑別しないとですね。」
M「他には?」
G「うーん・・・」
M「先生、勉強が足りないなぁ。考えといて。」

初期対応をしつつ、患者は輸液を300ml程度補液したところで脈拍:90、血圧:110/70に。

G「意外に反応良いですね。採血では貧血の進行とBUN/Crが若干解離してますから、やっぱり消化管出血ですかね。患者さん、黒い便はありましたか?」
患「ん〜、わからんけど、気にした事はないの〜。」
G「見てみないと分からないし、緊急内視鏡しますか?」
M「最初がピークの突然の胸痛、失神、冷汗。D-Dimerは凄く上昇してる。先生、その前に造影CTに行こう。」
G「分かりました。」

造影CTでは下行大動脈瘤の解離と一部胸腔内穿破が・・・

G「ひいっ!す、すぐに心臓血管外科に連絡します!」
M「うわー、危なかったなぁ、これ。」
G「いや、ほんとに・・・。」

ジャーナルクラブ

【今回のテーマ】Diagnosis of acute aortic dissection by D-dimer: the International Registry of Acute Aortic Dissection Substudy on Biomarkers (IRAD-Bio) experience.Circulation. 2009 May 26;119(20):2702-7. Epub 2009 May 11.

Y「さ、今回のテーマは何かな?」
G「今回は大動脈解離とD-Dimerです。先日大動脈解離とD-D-imerに相関があるのを知りました。そこで実際にどれくらい関係があるのかを読んでみようと思い、ちょっと古いですけどこの文献にしました。」
Y「は、はーん。また面白い論文を選んできたねぇ・・・」
M「なんかニヤニヤしてますね。」
Y「いやいや。これは凄く有名な論文だけど、色々な考え方が出来るからね。」
G「うーん、「D-dimerが高ければ解離・肺塞栓で、低ければ除外できる」っていう単純なものではないんですかね?」
Y「ま、読んでからのお楽しみ。」

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