[解説] 心電図3:12月心電図 68歳男性 - 起坐呼吸で受診。既往に高血圧、左脚ブロックあり。
みなさん、さすがですね。ご名答です。
古い左脚ブロックに合併したSTEMIです!
もう一度心電図を:
皆さんご指摘のように、これはSgarbossaの基準によると、左脚ブロックに合併したSTEMIとなり、カテ室直行となります。
正常の左脚ブロックの心電図は
のようにQRSの極性とSTT部の極性が必ず逆になります(discordant)。しかもST部分は基線から5 mm以内のはずです。
ところが患者さんの心電図を見ると(画像悪くてすいません)、どこをJ-pointととるかが微妙なのですが、V1-V3で、極性逆(discordant)ながらもST部分が基線から5 mm以上離れています (感度32%, 特異度92%)。もしくはST部がQRS部と同じ極性(concordant)に1 mm以上向いていますね (感度25%, 特異度96%)。
左脚ブロックはST部の評価ができないといわれていましたが、Sgarbossaらは左脚ブロックにおけるSTEMIの基準をスタディしました。感度は高くないですがあれば、あれば確定的という感じですね。しかもV1-V3における1 mm以上のST低下は30日後の死亡率も有意に高いのです。
原著論文は:
このGUSTO-1から出てきたスタディでは、これらの心電図変化をスコアリングしていますね。
Electrocardiographic criteria for detecting acute myocardial infarction in patients with left bundle branch block: a meta-analysis. Ann Emerg Med 2008 Oct;52(4):329-336
オレゴン先生ご紹介のメタアナリシスでも検討済み。
実際の現場ではスコアリングなんて悠長なことはできません。以上の所見が一つの誘導でもあればコードSTEMIしましょう。この所見はAHA/ACCF/HRSのrecommendationにものっていますから、すでにスタンダードといっていいのでしょう。
右脚ブロックのST部のクライテリアは?
これは普通の心電図と同様にSTT部をチェックすればいいのでしたね。
ご意見、ご批判お待ちしております。