[解説] 心電図26:6月心電図 17歳男性 - 胸痛?ははーん、あれかな?
みなさんこの度は今月の心電図に挑戦していただきありがとうございました。歴戦の勇者のみなさんにはちょっと簡単でしたでしょうか?そうです。今回の症例は典型的な
「心外膜炎」
でした。ご回答は以下のような分布となっています。
さて、今回の資料を作るにあたり以下の学習目標をあげましたのでこちらで確認させていただければとおもいます。
【学習目標】
-心外膜炎の典型的な症状をあげることができる
-心外膜炎の典型的な身体所見をあげることができる
-心外膜炎の典型的な心電図所見をあげることができる
-心外膜炎の合併症をあげることができる
「問診のポイント」
心外膜炎を疑う症例での問診としては先行する感冒症状や体位や呼吸による共通の変動が大事になりますね。
「身体所見のポイント」
ご存じのように心膜摩擦音が心外膜炎においては特徴的な身体所見ですね。前傾姿勢になってもらったり、四つん這いになってもらったりすると心と胸壁の距離が近づくため、より聴取しやすくなりますね。
「心電図所見のポイント」
今回の心電図所見をみながら振り返ってみましょう!
典型的な心外膜炎の所見は下記のようになります。
・ST⬆ II、III、,aVf、 V2からV6
・PR⬆ aVr
・PR⬇ aVrを除く誘導
ところでやはり若い男性に多い早期再分極と心外膜炎の鑑別方法とはというと?
「心膜炎では」
ST上昇はaVrを除く多誘導で
PRの低下あり
V6におけるST上昇とTの比が0.25以上で特異度が高い
「良性早期再分極では」
ST上昇はV3〜V6が多い
PRの低下無し
という特徴が双方にあるので確認しておきましょう。
「追加で行う検査は?」
心外膜炎の症例の中に心筋炎を合併することがあります英語ではこれらをMyopericarditisといったりしますね。心筋炎を合併している症例の特徴としては
「心膜炎の診断に加えて」
・呼吸苦や、頻脈、ブロックなどの症状
・心電図変化
・エコーで局所・びまん性の壁運動の低下など(新規かどうかはとわない)
・他の原因が見当たらない
・心筋酵素の上昇
・エコーでの新規の壁運動低下
・MRIで心筋炎に一致する画像*
などがあることが知られていますね。心筋炎がないかかならず頭の片隅において診療しないといけないですね。
*ガドリニウム(Gd)造影CMRにより,シネモードに加えてT1早期の強調画像や遅延造影において信号強度の増強(late gadrinium enhancement,LGE)像が認められ,さらにT2強調画像で炎症部位に一致した所見(主に炎症性浮腫像)が心筋炎診断に有用との報告がなされています。
また、単純な心外膜炎は一般的にはNSAIDSを処方され外来にての対応が可能ですが、
-発熱と白血球増多
-心タンポナーデの所見
-20mm以上の厚さの心嚢液
-免疫抑制状態
-抗凝固剤使用中
-外傷
-NSAIDSに7日以内に反応しない
-心筋炎の合併を示すトロポニン上昇
などがあると入院しての経過観察も必要になるかと思います。帰宅させる前に確認するようにするといいですね。本症例では心嚢液無し、壁運動低下無しでしたが、トロポニン陽性であったため入院し経過観察となりました。
参考文献:
Circulation. 1982;65:1004-1009
Circulation 2007;115:2739