2020.01.17

[解説] 心電図14:3月心電図 27歳男性 - 動悸、軽度の呼吸困難。HR:150、BP:110/80。難しい。

EMAのみなさま、

お待たせいたしました。EMA教育担当からお送りする心電図3月号の解答です。

今回は志賀先生よりご提供の心電図。もう一度症例を。

1、 症例紹介:
27歳男性、動悸と軽度の呼吸困難にて救急外来受診。

脈拍150、血圧110/80、SpO2 96% 室内気。
上:来院時心電図
下:心電図はカルシウム拮抗薬投与後。

Slide1

Slide2

2。 心電図解釈上の注意:
P波ははっきりしない。左軸偏位。比較的短いQRS。右脚ブロックパターン。V1にQ波を認める。V6の深いS波。AV dessociation。
Rythm stripでFusion beatを疑わせる波形あり。

3。 診断と簡単な説明
この心電図はFascicular tachycardiaである。特徴は2で上げたとおりである。
Fascicular tachycardiaはVTの一種でよくVTやSVTに偏向伝導伴なう病態と間違えられやすい。主に器質的心疾患のない患者にみれあれる。
通常のSVTの治療であるアデノシンやVTのリドカインやアミオダロンに抵抗性を示す。対照的にカルシウム拮抗薬によって抑制されたり洞調律となる。
左脚後枝から発生する場合が多くその場合は左軸偏位となる。

救急医はWideComplexの頻脈をみたらVT、VT、VTと考えることが必要だがこの機会にVTの特徴を学ばれたい。
1) 心拍数が120 以上(通常は150―200)
2) 幅の広いQRS(RBBB 型で140 ms,LBBB 型で160 ms 以上)
3)房室乖離の存在
4)融合収縮 Fusion beats
5)補足収縮 Capture beats
ほかに,安静時心電図との電気軸の違い(PVC と同じ軸であるなど)も心室頻脈を示唆する。

http://emedicine.medscape.com/article/760963-overview