[解説] 心電図13：2月心電図 67歳男性 - 胸痛。3年前から労作時胸痛、今月より安静時胸痛あり。
１． 症例紹介：3年前から労作時胸痛あり。過去に冠動脈疾患にてステント留置。今月に入り頻回の胸痛、安静時胸痛出現したため救急要請。
胸痛ありの心電図
胸痛なしの心電図
２． 心電図解釈上の注意 初回の心電図（１－１）から30分後胸痛消失時に2相性Ｔ波（Wellen`s biphasic T wave）を認める。 ３． 診断と簡単な説明 本疾患は欧米でWellens syndrome, LAD coronary T wave syndrome と呼称されるLAD近位部狭窄の心電図である。胸部誘導にて特徴的な二相性Ｔ波を認めるこの疾患を経時的にフォローしたところ対照群のうち７５％が広範囲前壁梗塞を起こしている。その致死率の高さからWidow maker と恐れられている。臨床症状として不安定狭心症が数多く見られる。
特徴的な心電図変化としては
１． ７６％の症例において胸部誘導、特にＶ１－Ｖ４誘導のＴ波の陰転化をきたす。
２． ２４％の症例において主にＶ２，Ｖ３誘導にて二相性Ｔ波を認める。
３． 特徴的なＴ波の陰転化は胸痛の改善した安静時にみられる。
(編者：Wellen’sは以前の心電図シリーズでも登場しましたね。
Reference 1. de Zwaan C, Bar FW, Wellens HJ. Characteristic electrocardiographic pattern indicating a critical stenosis high in left anterior descending coronary artery patients admitted because of impending myocardial infarction. Am Heart J. Apr 1982(4 Pt 2): 730-6