2019/8/15 文献紹介
EMA文献班の沖縄県立中部病院の岡です。
暑い沖縄から熱い文献をご紹介します。
今回、ご紹介する文献は3つです。
①Mallanpati分類は有用ではないというレビューです。
Mallanpati分類は挿管困難を予測するツールとして有名です。
患者自身に口を開けてもらい、口蓋垂がどの程度見えるかによって4段階に分類します。時間もかからずわかりやすいツールです。挿管困難を予測する合言葉『LEMON』に含まれています。
また、BVMでの換気困難やdifficult laryngoscopyを予測するツールとしても用いられます。
このレビューによると、Mallanpati分類はあまり有用ではないとの結論でした。救急外来での挿管困難を予測する感度もせいぜい51%程度で、偽陽性がかなり多いとのことです。
他、手術室やICUなどでのBVMでの換気困難やdifficult laryngoscopyについても言及されていますが、散々な結果でした。
また、重症患者や小児では患者自身に口を開いて確認するのは困難という欠点もあります。
うーむ。有名なMallanpati分類ですが、今後は過信しないようにします。
Green SM et al.
Is the Mallampati Score Useful for Emergency Department Airway Management or Procedural Sedation?
Ann Emerg Med. 2019 Aug;74(2):251-259 PMID: 30782435
②病院前外傷診療において、医師同乗のチームであれば生存率が上がるというメタアナリシスです。
22のスタディで、重症外傷患者約55,000人もの大規模なデータを用いて調べられました。
結果、死亡率は病院前医師群で有意に低い(オッズ比0.81)というものでした。患者の重症度を合致させた場合でも同様の結果でした。
用いられたスタディのほとんどが後ろ向き試験で、RCTは2つだけという欠点はありますが、とてもインパクトのある数値です。
重症外傷の生存率をここまで改善させる効果があるとは…。
病院前救急に取り組んでいる医師にとって、励みになります。
今後、このテーマについて大規模なRCTがされると予想します。
Knapp J et al.
Influence of prehospital physician presence on survival after severe trauma: Systematic review and meta-analysis.
J Trauma Acute Care Surg. 2019 Jul 16 [Epub ahead of print] PMID: 31335754
③救急外来のベッドサイドエコーで小腸閉塞が除外できそうか?、というスタディです。
エコーの利点として、迅速性と被曝などの侵襲が少ないことがあります。
自分も小腸閉塞が疑われる患者には身体診察の一環としてすぐにベッドサイドエコーを行います。
これで小腸の拡張像などがみられなければ、かなり否定的と思っていました。
このスタディではエコーで小腸径が25mm以上でSBO疑いとしました。
最終的に、救急外来を受診した125人の患者のうち、SBOと診断されたのは32人(26%)でした。
エコーは感度88%、特異度75%でした。
あれ?あんまり良くない(^_^;)
確かに、悪くはないけれど。
これまでの2つの同様のスタディでは感度・特異度ともに90%程度だったのですが…。
著者はその理由として、有病率の違いと、術者が事前に病歴を知っていたかの違いなどを指摘しています。なるほど。
Boniface KS
Diagnostic Accuracy and Time-Saving Effects of Point-of-CareUltrasonography in Patients With Small Bowel Obstruction: A Prospective Study.
Ann Emerg Med. 2019 Jul 23. [Epub ahead of print] PMID: 31350094