2025/11/15 文献紹介
一気に冷え込み始め、冬本番の様相を呈する地域も増えてきましたね!
重症疾患も増え、ERも忙しくなってきました。
冬といえば、毎年開催しているEMA meeting!今年度の冬meetingの参加登録も開始しておりますので、奮ってご参加ください!
今回のテーマは「ERにおける人工呼吸器管理」。充実のラインナップでお待ちしております。
https://www.emalliance.org/event_info/meeting/2026_winter
そして今回も文献班からの定期便を、聖路加国際病院の宮本と京都府立医科大学の中村がお届けします!
1本目は宮本より「最新版!ILCOR2025 蘇生処置に関する新規推奨まとめ」、
2本目は中村より「フライト中の急変 疫学まとめ」です。
① ILCOR2025 蘇生処置に関する新規推奨まとめ
Berg KM, Bray JE, et al. Executive Summary: 2025 International Liaison Committee on Resuscitation Consensus on Science With Treatment Recommendations.
Circulation. 2025 Oct 21;152(16_suppl_1):S2-S22.
doi: 10.1161/CIR.0000000000001361
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41122844/
最近、JRC・AHA・ERCそれぞれから蘇生に関する最新のガイドラインが発表されました。
JRC:
https://www.jrc-cpr.org/jrc-guideline-2025/
(オンライン版はパブリックコメント用で、書籍は2026年3月に発刊予定)
AHA:
https://www.ahajournals.org/toc/circ/152/16_suppl_2
ERC:
https://www.erc.edu/news/2025-erc-guidelines-is-released
多すぎて読む気が起きないよ・・・という方、実は当班の徳竹先生が最高のまとめをしてくれています。
https://appleqq.hatenablog.com/entry/2025/10/24/163000
蘇生に関わるのであれば必読の内容でしょう!
ではILCORではどのような推奨がされているのでしょうか。
そもそもILCORの立ち位置って何でしょうか・・・?
ILCORの使命は以下のように唱えられています。
① 国際的レベルでの緊急心循環管理に関するScienceとKnowledgeを集約し、解析して合意された意見を発信する
② CPRの教育・訓練の効率向上に関する情報と、ECC(Emergency Cardiac Care)の地域組織構築に関する必要な情報を発信する
すなわち、ILCORは各国蘇生協議会の独自のガイドライン作成を援助する立場であり、すべてのガイドラインはILCORの根本原則から逸脱しないことを求められています。
この点を理解したうえでILCORの推奨を押さえておくことは、AHA/ERC/JRC各ガイドラインのスタンスを理解するうえで非常に重要です。
本論文では、ILCORが2020年以降の5年間で新たに提示した推奨事項を、BLS、ALS、PLS、NLS、EIT、応急手当の6つの観点から整理しています。
DSED、初回薬剤投与経路、高K血症への対応、Mechanical CPR、ROSC後のMCS使用などが追記されており、同じトピックでもガイドライン間で推奨度が異なる点は興味深いところです。
普段から蘇生に関わる方には、ぜひ目を通していただきたい内容です。
② 飛行機内での急患は思ったより多い?その傾向は?
Alves PM, Kumar KR, et al. In-Flight Medical Events on Commercial Airline Flights.
JAMA Netw Open. 2025 Sep 2;8(9):e2533934.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41021228/
「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか。」
誰もが一度は耳にしたことのあるフレーズですね。
本研究は、飛行機内での急患の発生頻度、特徴、緊急着陸や病院搬送との関連を検討した、過去最大規模の国際観察コホート研究です。
対象:84航空会社で発生した機内急患 77,790件
期間:2022年1月1日〜2023年12月31日
主な結果
発生頻度:旅客100万人あたり39件(2013年は16件)
緊急着陸:1.7%(1,333件)
原因疾患:脳卒中(40.7%)、心血管疾患(26.9%)
緊急着陸と関連が強かった因子
脳卒中(aOR 20.35)
心血管疾患(aOR 8.16)
意識障害(aOR 6.96)
医師の関与(aOR 7.86)
心肺蘇生は0.4%で実施され、そのうち14%で除細動が行われていました。
飛行機内での急患は想定以上に頻繁であり、重症例では脳卒中や心血管イベントが多いことが示されました。
点滴や制吐薬だけでなく、昇圧薬が一定数使用されている点は印象的です。
200フライトに1回程度のドクターコール。
意外と多いと感じたでしょうか。
誰もが遭遇しうる状況として、一度自分の行動を考えてみるのもよいかもしれません。
今回の紹介は以上です。
次回もお楽しみに!