2026/01/31 文献紹介
文献班辻&川口です。
先日、EMAミーティング@順天浦安が開催されました。我々文献班のプレセミナーにも多くの方にご参加いただき御礼申し上げます。
あっという間に1年の12分の1が終わりそうなところで1月後半の文献紹介を3本お送りします。
①Murano T, et al. Establishing Minimum Patient Volume Requirements for Emergency Medicine Residencies. AEM Educ Train. 2025 Dec 22;9(6):e70122. PMID: 41446754.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41446754/
専攻医の皆さん、日々の診療の「量」が十分な経験になっているか気になったことはありますか?
指導医の皆さん、専攻医にどれくらいの数の患者さんを受け持ってもらえばよいか悩んでいませんか?
米国の救急レジデントプログラムでは、トレーニングの質を担保するため研修施設に年間30,000人以上の救急患者数が必要と設定されています。しかし、この基準にはレジデントの人数が勘案されていないため、大規模なプログラムでは一人当たりの経験不足が懸念されるという課題がありました。そこで見直しが行われた結果、救急のレジデントが十分な経験を積むためには、研修施設に3,000人×レジデント数/研修期間の救急患者が必要であるという新たな基準が提案されました。
ちなみにこの3,000という数字は、
30,000人(年間のER患者数)×3年(研修期間)×60%(レジデントがERで過ごす時間)÷18名(プログラムの最低定員数)=3,000人/レジデント
という計算で算出されたようです。
本文中では、レジデントは「平均して1時間に1人の患者を診る」というペースも示されていました。(参考文献6)
規模や制度が異なるため単純な比較はできませんし、あくまで「施設に来院する救急患者数」であって「レジデントが1人で診る数」ではないのですが、日本にもこういった指標があると一つの目安になってわかりやすそうです。
②Chaudhuri D, et al. Sequential Organ Failure Assessment (SOFA)-2 study group. Approaches to Converting Spo2/Fio2 Ratio to Pao2/Fio2 Ratio for Assessment of Respiratory Failure in Critically Ill Patients: A Systematic Review. Crit Care Med. 2026 Jan 6. PMID: 41493393.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41493393/
前回投稿に引き続きパルスオキシメータネタです。
いきなり結論ですが、動脈血液ガス結果がない時は[SpO2/FiO2比 = 64 + 0.84 × PaO2/FiO2比]
という関係式が成り立ち、ここからPF比の近似値を推定できることが示されました。
本研究は、重症患者におけるSF比とPF比を比較した45個の研究を対象としたシステマティック・レビューです。相関の度合いや使いやすさ(式のシンプルさ)などから、ARDS患者データに基づく上記Riceら(参考文献2)による公式が最も推奨されています。
相関係数を示すR2は0.89と高く、
SF比 PF比
315 300(感度:91%, 特異度:56%, AUC:0.88)
235 200(感度:85%, 特異度:85%, AUC:0.93)
148 100
に換算できます。
SF比を用いてSOFAスコアを計算しても、PF比を用いた場合と同等の予後予測(死亡率やICU滞在期間など)ができるとされています。
注意点として、SpO2:97%以上では精度が落ちるため、中等度〜重症で有用ですが、それくらいの重症度だとだいたいみんなAラインが入っていてPFが測れてしまうかもしれません。また、RICEの式はARDS患者由来のため、その他の病態(普通の肺炎など)への適用は慎重に行う必要があります。
Aライン留置前のモニタリングや、リソースが限られた環境、研究データの補完などで活用ができそうです。
③Single-site sampling strategy versus multisite sampling strategy in blood culture collection within the hospital setting: A systematic review. Vashti A, et al. Am J Infect Control. 2025 Oct;53(10):1113-1120. PMID: 40749750.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40749750/
血液培養における単一穿刺 vs 複数穿刺の系統的レビュー
血液培養のゴールドスタンダードは、長年「複数箇所から2セット以上」とされてきました。
その理由として
採血量が増える、病原体検出が強化される、コンタミかどうかを評価しやすい
といった利点が挙げられます。
そして、血液培養の感度を決める最重要因子は「総採血量」です。採血量が1 mL増えるごとに、検出率は約3%上昇するとされており、汚染リスクを抑えつつ、十分量を確保することが鍵です。
しかし実臨床では、採血量不足、1セットのみの採取(成人で最大40%) といった状況も少なくなく、時に抗菌薬投与の遅れにつながる場面もあります。
そこで近年注目されているのが、
「単一箇所から複数セットを採取する(single-site sampling)」という考え方です。
穿刺回数を減らすことで、下記の利点が期待されています。
・コンタミ低減
・患者・医療者の負担軽減
・抗菌薬開始の迅速化
今回、単一穿刺 vs 従来の複数穿刺を比較したシステマティックレビューを紹介します。
方法
・7研究(計18,901名、24,955検体)
・小児、カテーテル採血は除外
・アウトカム:菌血症検出率、コンタミネーション率、採血量
結果
・7件中5件の研究で、単一穿刺により採血量が増加し、病原体検出率が向上、汚染率が低下しました。
・研究間の異質性は大きいものの、すべての研究で単一穿刺は複数穿刺と同等、あるいはそれ以上のアウトカムでした。
興味深い点として、ある研究では1箇所目から1–4本、2箇所目から5–6本を採取した場合、
コンタミネーション率が最も高かったのは1本目と5本目でした。
すなわち、「新たな穿刺直後の最初の1本」が最も汚染されやすいと考えると、穿刺回数を減らすことでコンタミネーションが減るという結果は直感的にも理解しやすいように思われます。
注意点として、
カテーテル関連感染、IEや膿瘍などの間欠的菌血症などについては、直接的な検証は行われていません。
また、単一穿刺の共通の懸念として「コンタミかどうかの解釈が難しい」点があります。
別研究(PMID: 21499970)では、単一穿刺でもCNS 3本陽性:真の菌血症 78.9%、≥4本陽性:100%と報告され、解釈の指針が提案されています。
個人的には、2箇所から2セット、10 mL/本以上が確保できるならそれがベスト。
一方で、
・複雑な背景がない
・資源や人手に制限がある
・血管アクセスが困難
などといった状況では、単一穿刺+2セットで代替できる可能性も感じました。
皆さんはどう考えますか?
EMA文献班
国際医療福祉大学成田病院 辻春香
聖マリアンナ医科大学 川口剛史