2026.01.09

2025/01/15 文献紹介

日々の診療、おつかれさまです。
それにしても最近、忙しすぎやしませんかね?

さて、2025年1月前半の文献紹介をお届けします!
今回は「いつもの診療をチョット見直す」をテーマに4つ紹介します。

①Jessen MK, et al. International Liaison Committee on Resuscitation ILCOR Advanced Paediatric Life Support Task Forces. Pharmacological Interventions for the Acute Treatment of Hyperkalaemia: A Systematic Review and Meta-analysis.
Resuscitation. 2025 Jan 4:110489. Epub ahead of print.
PMID: 39761907.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39761907/

高カリウム血症は生命を脅かす重篤な電解質異常であり、心停止や致命的な不整脈を引き起こす可能性があります。
みなさんもヒヤッとした経験があると思います。
どのような急性期治療をしていますか?ここで一緒に見直してみましょう。

高カリウム血症の急性治療における薬理学的介入の効果を評価するため、101件の研究を対象としたメタ解析が行われました。
対象とした介入には、インスリン+ブドウ糖(GI療法)、吸入または静脈内サルブタモール、炭酸水素ナトリウム、カルシウムが含まれます。
なお、最近よく使われるようになったSZC(ロケルマ)は含まれていません。

結果はシンプルです。
GI療法+サルブタモール静脈内投与は、血清カリウム濃度を平均0.6–1.4mmol/L低下させる効果があることが示されました。
単独の薬剤を用いた場合に比較して効果は高いことがわかっています(なお、日本ではサルブタモール静注は販売していません…吸入で代用でしょうか)。
一方、炭酸水素ナトリウムには有意な効果が認められず、心停止患者におけるカルシウム投与はこれまでと同様に有害である可能性が言及されています。これらの薬剤のルーチン使用は避けた方がよさそうです。

あれ、同じような研究はこれまでにもたくさんあったような…。
本研究は、複合治療(例:GI療法+サルブタモール静脈内投与)が単剤治療よりも効果的であることを示し治療戦略の優先順位を明確化していること、GRADEシステムを用いてエビデンスの確実性が評価されていることなどが新規性として挙げられています。
また、新生児および小児におけるサルブタモール吸入・静脈内投与の効果を初めて統計的に評価し、患者群ごとの治療選択を明確化した点も特徴的でした(詳細は本文をご参照ください)。

実臨床においてはあまりサルブタモールが併用されることがないように思います。
効果のほどは確かなようなので、これからの高カリウム診療では有効な一手として取り入れてみるのはいかがでしょうか?

②Ayus JC, et al. Correction Rates and Clinical Outcomes in Hospitalized Adults With Severe Hyponatremia: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA Intern Med. 2025 Jan 1;185(1):38-51.
PMID: 39556338; PMCID: PMC11574719.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39556338/

重度の低ナトリウム血症(血清ナトリウム <120mmol/Lまたは <125mmol/Lで重篤な症状を伴う状態)は、迅速な対応が必要な病態です。
超急性期には重篤な症状がなくなるまで3%食塩水などをbolus投与して補正すればよいと思いますが、特に浸透圧脱髄症候群(ODS)の発症は少し心配です。

ただし、近年では低ナトリウム血症の補正速度はガイドラインで言及されているほどには厳格にしなくてよいのではないか、という論調の研究が増えているように思います。

本研究は、補正速度と臨床アウトカム(死亡率、入院期間、ODSの発生率)との関連を評価するため、2013~2023年に発表された16件の観察研究(合計11811名の患者)を対象としたメタ解析です。
迅速補正(≧8–10mmol/L/24hr)は、緩徐補正(<8mmol/24h)や非常に緩徐補正(<4–6mmol/L/24h)と比較して、死亡率を有意に低下させ入院期間を短縮させるという結果が得られました。
具体的には、迅速補正は緩徐補正と比較して入院中死亡率を32人/1000人、30日間死亡率を61人/1000人減少させ、しかもODSリスクの増加は観察されませんでした。

やっぱり補正速度は速めでいいというのがトレンドみたいですね。

しかしながら、この結果には限界も存在します。
本研究は観察研究が中心であり、補正速度以外の要因が結果に影響を与えた可能性があります。
また、各研究で補正速度の定義が統一されておらず、結果の解釈には慎重にならざるをえません。
そして、ODSの発症自体がまれな事象なので有意差が生じにくいという研究の限界もあるかもしれません。
従来のガイドラインが推奨する補正速度の制限を見直すきっかけになりますが、さらなる高品質な研究の蓄積が必要と考えます。

臨床現場では、現在のガイドラインを順守した重篤な症例には急速補正、それ以外では緩徐補正という原則に則っておこうとは思います。
個々の患者に最適な治療を柔軟に選択する姿勢が今後はさらに求められそうです。

③Kitisin N, et al. Systematic review and meta-analysis of the treatment of hypernatremia in adult hospitalized patients: impact on mortality, morbidity, and treatment-related side effects.
J Crit Care. 2025 Jan 6;87:155012. Epub ahead of print.
PMID: 39765195.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39765195/

次は高ナトリウム血症の補正速度に関しての研究です。
低ナトリウム血症だけでなく、高ナトリウム血症においても補正速度は速めでいいんじゃないかという論文が発表されています。

現行のガイドラインでは、1日24時間あたり10mmol/Lを超えず、1時間あたり最大0.5 mmol/Lの補正速度を推奨しています。
さて、今回の研究ではどうなんでしょうか?

本研究は、高ナトリウム血症の治療における補正速度が患者の予後に与える影響を検討したメタ解析です。v 12件の研究(合計10898人)を対象に解析を行い、死亡率、入院期間、治療関連の有害事象について評価しました。
この研究においても補正速度による死亡率に変化はありませんでした。
また、補正速度が1 mmol/L/h未満であれば、神経学的合併症(例: 脳浮腫、けいれん)は発生しませんでした。

サブグループ解析では、入院時に高ナトリウム血症であった場合、治療開始から24時間以内に急速な補正を行った場合、重度高ナトリウム血症(>155mmol/L)では、補正速度が速い群(>0.5 mmol/L/h)で死亡率が有意に低下したことが確認されました。

従来から言われていた「補正は緩やかに行うべき」という常識に一石を投じる研究ですね。
この研究は、特定の条件下における高ナトリウム血症の迅速な補正が患者予後の改善に寄与するかもしれないことを示唆しています。
ERでの研究ではありませんが、ICUに入室させることが多い患者群を扱っている領域で働く身としては判断の一助にはなりそうです。

高ナトリウム血症の重症度や治療開始タイミングなどに応じて、速やかな補正を検討することを視野に入れてもよいでしょう。
特に入院時(ERでの初療を含め)や早期治療の局面では、1mmol/Lを超えるような速度でなければあまり神経質になることはないのかもしれません。

しかし、多くのデータが観察研究に基づいているため因果関係の特定が難しく、データの異質性も高いことから、さらなるランダム化比較試験が必要になりそうです。
これまでの定説が覆りそうな研究、おもしろいですね。

④Hsieh CC, et al. A high-flow nasal cannula versus noninvasive ventilation in acute exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease.
Am J Emerg Med. 2024 Nov 28:S0735-6757(24)00673-9. Epub ahead of print.
PMID: 39638745.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39638745/

COPD増悪に伴う高二酸化炭素血症性呼吸不全は、入院率や死亡率が高い重篤な病態として知られています。
ガイドラインではNPPV推しですが、症例によっては導入しづらい場合もありますよね。
そんなモヤモヤを少しだけ晴らしてくれるかもしれない研究を紹介します。

トルコの単施設ERで行われた前向き無作為化試験において、HFNCがNPPVに代わる有効な治療法となるかが検討されました。
137名の患者が無作為に3群(NPPV群、HFNC30L/分群、HFNC50L/分群)に分けられ、動脈血ガス値、28日死亡率、患者満足度などが評価されました。
全群でPaCO2の有意な低下が観察されましたが、驚くべきことに60分時点でHFNC30L/分群でNPPV群を上回る改善を示しました。
また、HFNC群では退院率が高く、患者満足度が特に優れていることがわかりました。
一方、挿管率や28日死亡率は群間で差がなく、安全性は確保されていました。

HFNCはCOPD増悪における呼吸管理の新たな選択肢となりそうです!
特に、HFNC30L/分の流量設定はPaCO2低下と患者の快適性の観点で有望です。
少なくともNPPVを導入するよりははるかに敷居が低いです。
また、ERでの初期診療においては呼吸不全の原因は未確定であることが多く、そんな悩ましいシーンにおいても心強いですね。

 

HFNCをNPPVに耐容性のない患者や軽症~中等症程度の高二酸化炭素血症患者への初期治療として(少しの自信をもって)試してみようと思います。

しかし、結果の一般化可能性を確認するためには多施設試験や長期的な転帰データの収集が必要になるので(そもそも本研究の観察期間は120分間とごく短時間)、現状はガイドライン通りにNPPV導入が第一選択とは思います。