2024.03.16

2024/03/16 文献紹介

3月後半の文献紹介をお送りいたします。
担当は沖縄県立中部病院の岡と福岡徳洲会病院の大方です。
今回ご紹介する文献は以下2つです。

①Automatic Mechanical Ventilation versus Manual Bag Ventilation during Cardiopulmonary Resuscitation: A Pilot Randomized Controlled Trial
Jonghwan Shin , et al.
Chest 2024 Feb 17:S0012-3692(24)00248-4.
PMID: 38373673
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38373673/

「CPR時の換気は用手的でも機械的でもROSC率に有意差なし」

みなさんはCPR時にBVMで換気をされていますか?
私の施設ではBVMで換気をしていますが、離島派遣などで人手が極度に少ない時は人工呼吸器に接続して機械的に換気をしたこともあります。
おそらく多くの施設でCPR時に用手的換気をされていると思いますが、機械的換気をしてもよいのではと思ったことはありますか?
あるいは、考えたことはないでしょうか?

今回ご紹介するのはCPR時に用手的もしくは機械的に換気をした際にROSC率に差があるかを検証したpilot RCTです。

単施設の救急に搬送された18歳から90歳までの内因性による心停止患者が対象で、外科的気道確保の症例は除外されました。最終的に60人が集められ、用手的換気・機械的換気のそれぞれのグループに30人ずつランダムに振り分けられました。

主要評価項目はROSC、副次評価項目は20分以上持続したROSC、動脈血液ガス項目(pH、PCO2、PO2、HCO3、乳酸)、換気パラメータ(TV、分時換気量、ピーク圧)、lung injury scoreでした。
lung injury scoreとは画像検査で上葉・中葉・下葉肺の状態を1から6までで評価し、その容積比率(全体の何%か)と掛け合わせたもので、数値が大きいほど悪いことを示します。

結果として、ROSC率は両群で有意差なし(p=0.493)、TVと分時換気量は機械的換気群で有意に低値でしたが、それ以外の副次評価項目に有意差はありませんでした。

単施設であることや血液ガス測定、呼吸器の機械が特定されているというlimitationはありますが、pilot studyのため今後の多施設の研究に期待しています。

今後、人手がギリギリの場合など、人工呼吸器による機械的換気を考慮してもよいかもしれませんね。

②Risk factors for recurrence of suicide attempt via overdose: A prospective observational study
Akira Suekane , et al
American Journal of Emergency Medicine.2024 Jan:75:1-6.
PMID: 37890336
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37890336/

「自殺企図による薬物過量摂取の再発リスクは統合失調症と同居人の有無」

昨今、若年者の薬物過量摂取が話題になっていますが、皆さんの施設にも搬送されていますか?
その中には、同様の既往があり、繰り返している人を見ることも比較的多くあるのではないでしょうか?

ご紹介する文献は、自殺企図による薬物過量摂取の1年以内の再発に関わるリスクを調べた前方視的観察研究です。
東京の三次救命センターに搬送された自殺企図による薬物過量摂取患者を対象に、電話によるインタビューを使用して再発のリスク因子を評価しました。
18歳未満、65歳以上、退院後1年未満、フォローアップ不可、十分な情報を集められなかった患者は除外されました。

94人が対象となり、再発があったのは28人でした。
再発は統合失調症の患者で有意に多く(p=0.048)、同居人がいる場合は有意に少ない(p=0.015)といった結果でした。
さらにロジスティック回帰分析を行った結果、単変量では統合失調症と同居人の存在が、多変量では同居人の存在が再発と関連しているという結果で、それぞれのオッズ比は(95%CI)は3.8(1.1-1.4)、0.22(0.069-0.68)、0.22(0.065-0.70)でした。

n数も小さく、単施設であることや電話によるインタビューであることなどの課題はありますが、今後再発する薬物過量摂取の症例を見た際は、上記の点に注意するのも良いかもしれません。

以上、3月前半の文献紹介でした。次回もお楽しみください。
福岡徳洲会病院 救急科 大方雄司