2023.10.17

2023/10/16 文献紹介

EMA文献班の定期配信です。日中はまだ暑い日もありますが朝晩の冷え込みは秋を感じるようになってきました。学会シーズンですね。
今回は国際医療福祉大学の井桁、聖マリアンナ医科大学の川口が3つの文献を紹介します。

①McLinden D, et al. History and physical exam: a retrospective analysis of a clinical opportunity.
BMC Med Educ. 2023 Sep 26;23(1):699. PMID: 37752450
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37752450/ (無料で読めます)

カナダの医科大学で行われた問診と診察のトレーニングコースの効果に関する論文です。参加者:医学部3,4年生、指導者、実際の患者(模擬患者ではない)
トレーニングコースは1日かけて4人の患者さんの問診と診察〜フィードバックまでを行うプログラムで、アンケートや評価表を解析した結果、学習者・指導者ともに肯定的な結果が得られたようです。

本研究を今回ご紹介したのはSupplementary InformationのAdditional file 5.(実際に用いられた問診と診察の評価表)を知っていただきたかったからです。
評価のポイントが医学知識、コミュニケーション、時間管理にわけて全10項目明記されており、それぞれの項目で10段階の点数+コメントが書けるようになっています。

問診と診察のやり方や指導に悩みを抱える方々の一助になれば幸いです。

②Lavonas EJ, et al. American Heart Association. 2023 American Heart Association Focused Update on the Management of Patients With Cardiac Arrest or Life-Threatening Toxicity Due to Poisoning: An Update to the American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care.
Circulation. 2023 Sep 18. PMID: 37721023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37721023/ (無料で読めます)

AHAによる重症中毒ガイドラインのアップデート2023年版です。
Table 2が拮抗薬/解毒薬−適応(中毒物質)−成人と小児の初期投与量−維持量の一覧になっており、来たる時に備えてERの壁に貼っておいて損はないでしょう。
グルコン酸カルシウム、グルカゴン、ヒドロキソコバラミン、脂肪乳剤、メチレンブルー、プラリドキシミン、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどなど使い方がパッと見てわかると安心ですよね!

③Thiele H et al. Extracorporeal Life Support in Infarct-Related Cardiogenic Shock.
N Engl J Med. 2023 Oct 5;389(14):1286-1297. PMID: 37634145
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37634145/

心原性ショックを伴うACS患者にルーチンにECLS(Extracoreal Life Support)をしても予後は改善されなかった

ドイツとスロベニアの44施設で行われた研究です。
P:18~80歳の心原性ショックを合併したACS患者で、 PCIもしくはCABGによる血行再建が計画されている
I:体外循環支持療法(ECLS)
C:通常の内科的治療
O:30日後の全死亡

ECLS群209人、対照群208人が解析されました。
結果としてはECLS群の死亡率は47.8%、対照群は49.0%(Relative risk, 0.98, 95%CI 0.80-1.19; p=0.81)で有意差は見られませんでした。
77.7%が無作為化前にCPRを受けていました。対照群の15.4%がIABPやImpellaなどの機械的サポートを要する結果となりました。
腎代替療法試行率などの治療に関するSecondary outcomeはどちらも有意差はありませんでしたが、出血や末梢血管の虚血などのSefety outcmeはELCS群で高い結果となりました。
つまりECLSで想定される病態生理学的メリットを、合併症や後負荷の増大などのデメリットが相殺したという可能性があります。
ルーチンでのECLSの導入は合併症の危険性もあり推奨はされないですが、ではどのタイミングでECLSに踏み切ればいいのか、個々の症例で判断するしかないなという結論でしたね。
Impellaの出現により今後勢力図が変わる可能性があるかと思いますので今後の研究に注目ですね。
皆さんの施設ではECLS導入の基準はありますか?