2019.05.10

2018/10/3 文献紹介

台風24号がようやく日本列島を通過しましたね…。文献班より9月後半分の文献紹介をさせていただきます。

先日大型ハリケーンがアメリカを襲った際、CDCが「災害後は一酸化炭素中毒に注意」という勧告を出しています。
https://emergency.cdc.gov/han/han00415.asp
https://www.cdc.gov/disasters/co_guidance.html

被災地において調理や暖房のため発電機や様々な器具を室内で使用することが原因で、集団発生することもあるようです。血中の一酸化炭素濃度は血液ガスで測定するイメージでしたが、「COオキシメータ」というモニターも存在するようです。一部サイトでは一般的なパルスオキシメーターのおよそ100倍の値段がついていました…

個人的には本邦の災害とCO中毒が関連するイメージがあまりなかったのですが、北海道胆振東部地震後に経済産業省が注意を呼びかけています
http://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180909003/20180909003.html

全国のみなさま、台風の直接的被害のみならずCO中毒にもご注意ください。

では本題です。
最初にご紹介するのは、外傷CPAにおけるREBOAと開胸心臓マッサージのCCF(心停止中に実施された胸骨圧迫の時間の割合)に関する研究です。

Ann Emerg Med. 2018 Oct;72(4):354-360.
Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta Improves Cardiac Compression Fraction Versus Resuscitative Thoracotomy in Patients in Traumatic Arrest.
Teeter W et al.  PMID: 29685373

米国メリーランド大学ショック外傷センターに搬送された外傷CPA50例を、胸腔内での出血であれば開胸(28例)、横隔膜下での出血であればREBOA(22例)で治療し、それぞれのアウトカムを比較しました。症例の転帰は個人ファクターが大きく比較が困難なため、蘇生に関わる「時間」であるTotal cardiac compression time とCCFをアウトカムとしています。蘇生現場のビデオ映像とバイタルサインの記録を元に検証し、REBOA/開胸の両方の手技がされた症例や映像/数値の記録が不十分な例は除外しています。

結果は、
平均CCFはREBOAの方が優位に長い(86.2% [SD 9.1%] vs 55.3 [SD 17.1%]; 95%CI 22.7% to 39.23%; P<.001)
胸骨圧迫の中断時間はREBOAの方が短い(945秒[IQR 697 to 1,357] vs 496秒 [IQR 375 to 933]
となり、「時間」という観点ではREBOAに軍配が上がっています。

しかしながら、生存例がREBOAと開胸50例合わせても2例しかいない、アウトカムの設定や盲検化が難しいなど多くのlimitationがあり、他の評価指標が必要ではないかと筆者は述べています。

開胸心臓マッサージについては、2016年に通常の胸骨圧迫と比較して予後に差がなかったとする研究もあり、文献班でもご紹介させていただいております。

J Trauma Acute Care Surg. 2016;81:849-854.
http://www.emalliance.org/education/recommend/dissertation/20161231-journal

今後はますますREBOAが広がっていく流れかもしれません。

また、近年はドライブレコーダーやスポーツの微妙な判定など、ビデオの映像が重要な役割を担う場面が増えてきています。
救急の現場にももうすぐビデオ判定の時代がやってくるのでしょうか。

続いてご紹介するのは 曖昧な症状で救急外来に来院した敗血症性ショックは院内死亡率が高い というスタディで、米国都市部の大病院の救急外来で行われた単施設後ろ向きコホート研究です。

Crit Care Med. 2018 Oct;46(10):1592-1599.
Presenting Symptoms Independently Predict Mortality in Septic Shock: Importance of a Previously Unmeasured Confounder.
Michael R. Filbin et al.  PMID: 29965833.

敗血症性ショック654例のうち曖昧な症状で来院したのは245例 (37%)で、典型的な症状を呈した症例と比較して有意に院内死亡率が高く(34% vs 16%; p <0.01)、多変量解析では症状が曖昧であることは死亡と関連していました(OR 2.12; 95%CI 1.32–3.40; p<0.01)。
また、低潅流や乳酸上昇が判明してから抗菌薬投与までの時間も「曖昧な症状」群の方が有意に遅い(1.6時間 vs 0.8時間; p<0.01)という結果も出ています。

本研究は「曖昧な症状」を定義したという点が印象的でした。
来院時の症状は医療者の診療録記載で判断しているのですが、「発熱、悪寒戦慄、喀痰を伴う咳嗽、排尿障害、軟部組織感染を示す皮膚の発赤やその他特異的感染を示す所見」はすぐさま敗血症を想起しうる「典型的症状」とされ、それ以外の症状(例えば発熱を伴わない疲労感・衰弱・腹痛など)を「曖昧」と定義しています。

臨床的な感覚が数値に裏付けられた印象で、興味深く感じました。「敗血症性ショックの37%は症状が非典型的」ということは覚えておくと教育やdiscussionのネタになるかもしれません。

今回ご紹介させていただくのは以上の2文献になります。

川口剛史
EM Alliance文献班
聖マリアンナ医科大学 救急医学