2018/1/15 文献紹介
文献班より沖縄県立中部病院ERの岡正二郎です。
暑い沖縄から、熱い文献をご紹介します。
今回ご紹介する文献は1つだけです。
Am J Emerg Med. 2017 Dec 2. pii: S0735-6757(17)30882-3.
Face mask leak with nasal cannula during noninvasive positive pressure ventilation: A randomized crossover trial.
Brown DJ et al.
NPPV装着中に鼻カヌラをつけてもほとんどエアリークはなかった、というスタディです。
なんのこっちゃ?と思われた方も多いと思います。
このスタディの旨味を説明します。
『挿管前酸素化にNPPVを用いる』
例えば重篤な急性心不全などでPEEPをかけなければ十分な酸素化ができない場合があります。そんな患者に筋弛緩薬を用いて挿管する場合、NPPVを装着し前酸素化を行います。
『Apneic Oxygenation効果を狙って挿管無呼吸期に鼻カヌラをつけ続ける』
挿管時に筋弛緩薬を用い無呼吸状態にしても、鼻カヌラで酸素を流し続ければ低酸素化を遅延させる効果があり、これをApneic Oxygenationといいます。
上記の2つの理由から、挿管前にNPPV装着中に鼻カヌラをつけて、挿管トライ中にはNPPVを外して鼻カヌラだけをつけ続けるということをすることがしばしばあります。
自分もこれまでこの方法を用いていました。
ただ、NPPV装着中に鼻カヌラもつけたらエアリークが増えてNPPVの効果が弱くなるのでは?という疑問がありました。
今回のスタディ、この疑問に答えてくれました。
64人の健康なボランティアでRCTが行われました。
NPPV(10 cmH20 CPAP) vs. NPPV+鼻カヌラ(15 L/分)の2群で比較され、
結果として、エアリークは平均 2.2 L/分vs. 4.0 L/分ということで差は優位なものではなかったという結果でした。
一般的なNPPVならば 60 L/分までのエアリークならば大丈夫とのことです。
ちなみに、鼻カヌラ15L/分は鼻が痛くなるのでは?という疑問について、別のスタディで6L/分と不快感は変わらなかったそうです。
(試しに、自分も鼻カヌラ6 L/分と15 L/分をつけて比較してみましたが確かに不快感はあまり変わりませんでした)
旨味が伝わりましたでしょうか?
沖縄県立中部病院 救命救急センター
岡 正二郎 拝