2022.06.06

2017/05/18文献紹介

EMA文献班より聖マリアンナ医大救急医学の川口剛史です。
今回は3つの文献をご紹介いたします。

①Emergency transfusion of patients with unknown blood type with blood group O Rhesus D positive red blood cell concentrates: a prospective, single-centre, observational study.
Lancet Haematol. 2017 May;4(5):e218-e224. PMID: 28389344
血液型不明の救急患者および既にRhD-と判明している非救急患者にO型RhD+輸血を行った際の影響について述べた論文です。
RhD+輸血を受けた血液型不明の救急患者の4%が抗D抗体を産生したのと比較してRhD-は26%(約6.5倍)が抗体を産生しました。
ただし救急患者はそもそもの生存率が低く、半数が免疫反応を起こす前に死亡したと記載があります。
また、幸いRhD+輸血を受けたRhD-患者に溶血反応はみられなかったようです。
リスクベネフィット、希少なRhD-製剤の適正使用などの観点からすると、緊急時のRhD+輸血は妥当と言えそうです。
RhD-が人口の15%を占めるドイツでこのような結果だったので、
0.5%しかいない日本では比較的安心してRhD+の輸血が使用できそうです。

②Prophylactic corticosteroids for prevention of post-extubation stridor and reintubation in adults: a systematic review and meta-analysis.
Chest. 2017 Feb 20. pii: S0012-3692(17)30228-3. PMID: 28232056

抜管前の予防的ステロイド投与の効果に関するメタアナリシスです。日本の倉敷中央病院の先生方がauthorとなっています。
全部で11のstudyを解析しており、ステロイドの種類、量、投与方法やカフリークテストの基準などにばらつきはありますが
ハイリスク症例群については抜管後の気道イベントに関するNNTが5、再挿管を防ぐNNTは16という驚異的な数字が示されています。
明日から抜管前にカフリークテストをやってみたくなる内容ですね。

③Choking on a foreign body: a physiological study of the effectiveness of abdominal thrust manoeuvres to increase thoracicpressure.
Thorax. 2017 Apr 12. pii: thoraxjnl-2016-209540. PMID:28404809

昨年考案者のHeimlich医師が自ら実践したことで脚光を浴びたHeimlich法ですが、
他の方法(椅子の背もたれで自分の腹部を圧迫する等)で気道異物の除去ができるかどうかを調べた文献です。
アウトカムが食道および胃の内圧上昇となっており、肝心の異物除去率は検証されていないため臨床応用はまだ先になりそうですが、
周囲に救助者が誰もいない場合や傷病者と救助者の体格差が大きい場合などに役に立つ... かもしれません。
あなた(救急医)が1人の時、自分が窒息したらどうしますか?

以上です。

川口 剛史
聖マリアンナ医科大学 救急医学