2020.07.24

2017/04/30文献紹介

①Goto Y et al. Techniques and outcomes of emergency airway management in Japan: An analysis of twomulticentre prospective observational studies, 2010-2016. Resuscitation. 2017;114:14-20.

日本のJEMNET研究会から、救急外来での挿管法の変遷についての研究です。
2010年から6年間の日本の11施設の救急外来で行われた観察研究のデータです。成人と小児の合計10,875症例が今回の研究対象でした。
この6年間でRSIでの挿管は28%から53%と増え、ビデオ喉頭鏡の初回挿管の使用率は2%から40%と増えました。また、挿管の初回成功率は68%から74%と上がりました。
日本の救急外来でもここまでRSIやビデオ喉頭鏡が普及してきているのか!と驚きました。
さて、RSIやビデオ喉頭鏡を用いるようになったから挿管成功率が上がったのか?について、正確には今回の文献だけでは結論 づけられませんが、これらはただの偶然の一致ではないと思います。
正しい適応を考慮すれば、やはりRSIやビデオ喉頭鏡は救急外来での気管挿管の強い味方になってくれるはずです。
②Xian Y et al. Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation. JAMA. 2017;317:1057-1067.

Af既往のある脳梗塞患者について、有効な抗凝固薬が行われていない症例がかなり多い、というアメリカでのスタディです。
Af既往があり脳梗塞を発症した患者94, 474人についての後ろ向き観察研究です。
適切なワーファリン治療がされていた患者(INR>2.0) は7,176人(7.6%)、 NOACでの治療をされていた患者は8,290人(8.8%) で、これらを合わせると適切な抗凝固治療をされていたのは、 全体でたったの16.4%ということになります。
また、高リスク患者(CHA2DS2-VAScスコア≧2点) についてみた場合にも、適切な抗凝固治療をされていたのは16.5%だけでした。
他の内訳として治療域以下のワーファリン投与されていた患者(INR<2.0) は12,751人(13.5%)で、 抗血小板薬のみが37674人(39.9%)、 なんの治療もされていなかった患者は28,583人(30.3% )でした。
そして、抗凝固薬は脳梗塞を本当に予防できるのか?という点についてみた場合、交絡因子を補正したところ、 治療されていた群を無治療群と比較すると中等症以上の脳梗塞を発 症する確率は低く、適切なワーファリン治療でOR0.56、 NOAC治療でOR0.65、抗血小板薬でOR0.88でした。
今回のスタディでは抗凝固薬による脳出血などの重大な副作用について触れていません。しかし、Af患者に対して適切な抗凝固治療されていない例というのはこんなにも多いということ、それと、たとえ抗血小板薬でさえわずかではあるものの中等症以上の脳梗塞を予防する効果がみられたというところが勉強になります

③Kaufman J et al. Faster clean catch urine collection (Quick-Wee method) from infants: randomised controlled trial.
BMJ. 2017;357:j1341.

新しい乳児の検尿法が発表されました。それも今回はRCTで効果が実証されたとのことです。
背景として、乳児の発熱で尿路感染を否定したい場合、導尿は侵襲的で手間と時間がかかるし、パック尿で自然排尿を待つ(平均の待ち時間は30〜71分)のは時間がかかるし偽陽性が多いし…といった悩ましい問題があります。
今回の方法は、 冷やした生食に浸したガーゼで恥骨上部をなぞって自然排尿を促すQuick-Wee法で尿をクリーンキャッチするというものです。
救急外来を受診した生後1ヶ月〜12ヶ月の乳児354人に対して実施されました。
結果として、5分以内の排尿率はQuick-Wee 法31%、それに対しただ自然排尿を待つ方法12%、とQuick-Wee法の方が排尿率が高かった結果となりました。
おいおい、忙しい救急外来で5分間かかってたったの31%?と思われるかもしれませんが、これならすぐできそうですし無侵襲です。自分ならパック尿貼り付けてQuick-Wee法試してみますかね…。
これまでにも、乳児を脇の下で抱えて揺らしてみたり、恥骨上部をトントンと指でマッサージすることで自然尿排泄が促す方法が報告されていましたが、RCTで効果が認められたのはQuick-Wee法が初めてです。
どうです、お試しあれ。