2019.11.14

EMA症例85:5月症例 46歳男性 意識障害、その後ショック

ゴールデンウィーク夜間のER当直中、近医脳神経外科から紹介の連絡が入った。
「21時頃に自宅で倒れていた患者を収容したが、診断がつかず、精査をお願いしたい。」

生来健康な46歳男性。検診での異常指摘もない。
家族によると、日中は瀬戸内の海へ釣りに行き、19時頃に電話した時は普段通りであった。
21時頃に家族が帰宅したところ、自宅内で呼びかけに反応しない状態で救急要請に至った。
自宅には特に変わった様子はなく、夕食はとった後のようで、薬殻などもみられなかった。

脳卒中疑いで紹介元へ救急搬送、MRI施行されたが頭蓋内出血も脳梗塞もみられなかった。

【前医到着時のバイタルサイン・身体所見】
呼吸数 40回/分, SpO2 96%(室内気), 浅く速い呼吸
心拍数 120bpm, 血圧 208/128mmHg
JCS Ⅲ-200, GCS E1V1M4, 体温 37.1℃
瞳孔 6mm/6mm, 対光反射なし
四肢の筋緊張は低下, 腱反射も両側とも低下

その後、前医では特に投薬や処置は行われず、医師同乗で当院へ救急車で搬送された。
22時頃にERへ搬入されたが、MRI後から次第に血圧が低下してきていたとのことであった。

【ER到着時のバイタルサイン・所見】
自発呼吸なし, BVM換気補助下でSpO2 100%(O2 7L/min)
心拍数 48bpm, 血圧 70/46mmHg
JCS Ⅲ-300, GCS E1V1M1, 体温 36.6℃
瞳孔6mm/6mm, 対光反射なし
皮疹なし, 四肢の筋緊張は低下
RUSH(Rapid Ultrasound in SHock):
心収縮は全体に弱い, 心嚢水なし, 胸腹水なし, IVC 12mm, 大血管に異常なし

ER担当医はショックと認識して、
気管挿管を行い、末梢ルート2本確保と細胞外液輸液開始した。
その後に全身造影CTによるショックの原因検索を行ったが、
感染源や出血、大血管病変などを示唆する所見はみられなかった。

【血液検査】(動脈血, BVM換気O2 7L/min)
pH 7.38, PaO2 320mmHg, PaCO2 42mmHg, HCO3- 25mEq/L, Lac 1.2mmol/L
WBC 7,000/μL, Hb 16.0g/dL, Plt 28万/μL
BUN 18mg/dL, Cre 1.0mg/dL, Na 136mEq/L, K 4.0mEq/L, Cl 102mEq/L,
CRP 0.02mg/dL, 血糖 120mg/dL

全身状態が悪いため、状態安定化と原因検索を集中治療室で行うこととなった。