2019.11.14

EMA症例81:1月症例 70歳代女性 口からの出血が止まらない

ある平日の朝、救急外来の勤務に来たところ、夜勤の担当者から勤務の引継をうけることになりました。夜勤担当者からの情報とカルテ記載を参考にすると状況は以下のようです。

【症例】70歳代女性
【主訴】口からの出血が止まらない
【現病歴】
 元来のADLは寝たきりで意思疎通が困難である患者、療養型病院に入院中である。搬送前日より、口腔内から血液の流出が確認されていたが様子を見られていた。
 搬送当日、スタッフが訪室したところ口腔内から血が出ている状態であるのを発見。口腔内から多量の血餅が吸引された。その際のバイタルサインBP 80/50 mmHg、HR 100回/分、SpO2 95% (3L酸素投与)であった。ルート確保・補液の用意をしている間にsBP 69 mmHgまで低下した。
生理食塩水500mlにカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(アドナ®)25mgを加えた点滴を200ml急速投与したところ、sBP 80-90mmHg台、HR 90-100 回/分に改善した。
入院している施設では対応困難であり精査加療目的で施設の救急車両にて搬送となった。

【既往歴】
慢性腎不全に対して血液透析導入 僧房弁置換術後 廃用症候群 胃瘻造設術後 
陳旧性脳梗塞 高血圧 高脂血症

【内服薬】
アスピリン ワルファリンカリウム レバミピド プラバスタチンナトリウム カルベジロール センノシド

【生活歴】飲酒歴:なし 喫煙歴:なし

【来院時身体所見】
意識 GCS E4 V2 M4
体温36.9℃,血圧 92/47mmHg,脈拍 100 回/分 (整),SpO2 99%(5L酸素投与) 呼吸回数 14回/分

顔面:眼球 結膜に軽度貧血あり
   鼻腔 右鼻腔内に血餅あり 現在の出血はなし
      左鼻腔内は血餅・出血ともなし
   口腔 1横指しか開口困難(以前からの拘縮のため)
   顎関節を押しても痛がる素振りなし
   来院後吸引処置実施後は血餅流出なし
胸部:衣服の襟元から肩にかけて血液が多量に付着している
 呼吸音 正常,心音 心雑音聴取せず 
腹部: PEG挿入あり内容物を吸引したところ最初はわずかに赤かったがその後消失
   平坦・軟 圧痛なし
末梢:左前腕にシャントあり 両上肢とも屈曲(以前からの拘縮のため)

【引継内容】
来院してから1時間以上経過しています。特に救急外来到着後は積極的に輸液していません。sBP 90-100mmHg、HR 90回/分前後で前医での通常の値と変わりありません。
血液検査(血算・生化・凝固)を提出しています。
特に緊急治療が不要であれば、元の病院に戻ってよいと聞いています。

今の時間は午前8時30分、外来診療が開始されたばかり、手術も始まる時間帯で耳鼻科医にすぐ相談してもかなりの待ち時間ができることが想定されます。
さて、引き継いだあなたの対応は?