2019.11.14

EMA症例80:12月症例 73歳男性 動けない

日曜日の日直中、救急外来で働いていたところ、次のような患者さんが搬送されてきました。

【症例】73歳男性 動けない
【現病歴】
 朝9時30分頃、ヘルパーが自宅を訪問したところ、廊下で倒れているのを発見。会話可能で血圧が安定していたため、そのまま様子を見ていた。
 昼12時過ぎにケアマネジャーの訪問があり、ケアマネジャーがかかりつけ医に電話連絡したところ、かかりつけ医の指示で、救急外来搬送となった。

本人から聴取すると
・2日前にコンビニに弁当を買いに行った際に転倒した
・その際どこをぶつけたかは覚えていない
・食事も飲水もできている
・今日はどこも悪くない
と言われる。

【既往歴】認知症、糖尿病
【内服】ペニジピン、SU剤、メトホルミン、シタグリプチン、シロスタゾール、ソファルコン(内服は前日からできていない)
【生活歴】飲酒:よく飲むが最近飲んでいない 喫煙:なし
     ADL:自立(独居)
【身体所見】
意識レベル:GCS E4V4M6 
バイタルサイン:体温:36.8℃,血圧:119/51mmHg,心拍数:87回/min
 呼吸回数:24回/min,SpO2 99% (RA)
結膜:貧血なし、黄染なし
口腔内:汚染あり
頸静脈怒張なし
肺音清 心雑音なし
腹部:肥満、軟、圧痛なし、反跳痛なし
   CVA叩打痛なし
下腿浮腫なし、把握痛なし
四肢:指に皮疹や結節なし
神経診察上明らかな異常なし
(手足の動きに問題ないが脱力あるのか坐位にはなれない)

血糖値256mg/dL
頭部CT:血腫なし、骨折線なし

血液検査:
WBC 23,500/μL, Hb 12.9 g/dL, Plt 21.9万/μL, Neut 21,500/μL
CRP 5.55 mg/dL, BUN 17.3 mg/dL, Cre 0.76 mg/dL, CK 355 U/I
AST 20 U/I, ALT 13 U/I, ALP 374 U/I, T-bil 0.4, γGTP 44 U/I
Na 135 mmol/L, K 3.8 mmol/L, Cl 95 mmol/L, Ca 8.9 mg/dL
血液ガス検査(静脈血):
pH 7.427, pO2 27.4 Torr, pCO2 44.9 Torr, HCO3 28.9 mmol/L
Lac 2.22

【この時点での簡易的なアセスメント&プラン】
 エピソードから慢性硬膜下血腫を疑ったが画像所見なし。血液検査結果を鑑みて、呼吸回数がやや早かったこともあり、肺炎の除外のために胸部CTを撮影したところ、撮影範囲に入っていた左腎の一部に“腸管内の糞便”のような陰影を認めた。これが異常陰影か正常陰影か判別がつかなかったため腹部造影CT検査を撮影する方針とした。

腹部造影CT:
80-1

80-2

尿検査:
尿比重 1.013, pH 5.5, タンパク+1, 糖 +3, ケトン±, 潜血 +2,
亜硝酸塩 -0, 白血球 +3