2019.11.14

EMA症例68:12月症例 妊婦の外傷

ある週末夜、あなたは産婦人科医の常駐する救命救急センターで当直をしていました。
そこへ救急隊より搬送の依頼がありました。

「EMA消防です!搬送依頼の電話です!
25歳女性 妊娠32週の妊婦さんの交通外傷です。
軽自動車を時速60km/hで運転中にスリップし街路樹に正面衝突したとのことです。
自力で車を脱出後、119番に電話しています。
シートベルト着用あり、エアバッグ作動あり!
自覚症状としては頚部痛を訴えているほか特にありません。
その他、右足小指に擦過傷を認めております。
ここからですと搬送まで10分です。
受け入れ可能でしょうか?」

あなたはJATEC(外傷初期診療ガイドライン日本版)にのっとり、第一印象把握の後、Primary Survey(生命維持のための生理機能破綻の検索と対応) 及びSecondary Survey(全身の系統的な解剖学的評価による損傷検索)を行う予定です。

救急車が到着しました。第一印象では気道、呼吸、循環、意識の異常はなく、重症感はありませんでした。
続けてPrimary Surveyをしました。
Airway: 前頚部にシートベルト痕あるが気道開通、皮下気腫なし
Breathing: 胸郭圧痛なし、運動/聴診左右差なし、皮下気腫なし
     呼吸数20/min、SpO2 100%(RA)
Circulation: 皮膚冷感湿潤なし、脈拍84/min、活動性外出血なし、CRT<2秒、
     血圧100/60mmHg、FAST(Focused Assessment with Sonography of Trauma)陰性、
     (レントゲンはこの時点では撮影せず)
Dysfunction of CNS: 意識清明、麻痺なし、瞳孔左右差なし
Exposure & environmental control: 体温36.5℃、衣服は乾いている

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