2020.01.17

EMA症例51:7月症例 5年以上患者を悩ませ続ける下肢痛

<症例>
73歳女性
主訴:
 左下肢痛
既往歴:
 胃潰瘍
定期薬:
 市販の胃薬
生活歴:
 アレルギー(-)、 喫煙歴 past smoker 5本x50年 、飲酒(-)、家族と自宅にて暮らされており、ADL自立、趣味はグランドゴルフ。

現病歴:
 受診当日の朝自宅にて洗濯物を干していると誘因なく左殿部から大腿及び膝にかけて限局性のない強い痛みが急激に出現した。痛みは歩行が困難になるほどの激痛であり、やっとのことで救急室walk inを受診。痛みは「表現できない」性状であり、どのようにしていても痛いとのこと。最近の転倒や左下肢の打撲はない。これまでにも(5年程前から)同様の左下肢痛が年に2回程のペースで出現しており、救急室を繰り返し受診しているが、原因が特定されぬまま経過観察となっている。ここ数ヶ月は頻度が増えているが、痛みはいつも一過性であり普段は全く痛みなく生活できている。これまでは嘔気や嘔吐を伴うこともあった。
 発熱(-)、 左下肢の発赤/腫脹/動かし難さやしびれ(-)、腰痛(-)、膀胱/直腸障害(-)。

更にカルテをレビューしてみると……
 この4年間に同様の痛みで6回救急室受診を繰り返しており今回が7回目!最終受診は1ヶ月前。痛みが出現するタイミングとして今回の様に風呂や夕食の準備等の家事をしている時が多い。受診時はボルタレン坐薬やアタラックスP筋注投与後、経過観察を行なうと痛みの消失を得られており、帰宅となっている。痛みが消失する時は徐々にというより「すっと良くなる」とのこと。 約3ヶ月前に整形外科外来を紹介受診しており、その際リウマチ因子、抗CCP抗体、赤沈を含む採血が行なわれているが、異常を認めていない。腰椎レントゲン上、骨傷はなく、腰椎MRIでは僅かな脊柱管狭窄を認めるも今回の症状との関連性は乏しいと判断され整形外科終診となっている。これまで激痛のあまり「半錯乱状態」となったり、意識を失うこともあった。器質的疾患を指摘できず、「心因性」も疑われており、数日後にペインクリニックを紹介受診の予定となっていた。

身体所見:
General condition:
 苦悶様
Vital sign:
 GCS E4V5M6, 体温 36.5度、脈拍数 67bpm、血圧 83/59mmHg(これまでも血圧は低め)、呼吸回数 20/min、SpO2 99%(RA)
心音:
 リズム整、S1(→) S2(→) S3(-) S4(-)
呼吸音:
 左右差(-)、rhonchi/wheeze/crackle(-)
腹部:
 平坦、軟、筋性防御(-)、腸蠕動音減弱亢進(-)、自発痛(-)、圧痛(-)、鼡径部に膨隆(-)
背部:
 腰椎に圧痛(-)
下肢:
 色調変化・皮疹(-)、両側足背動脈触知良好(-)、冷感(-)、発赤/腫脹/熱感/把握痛(-)
 左殿部~膝に明らかな圧痛(-)
 股関節・関節で明らかな圧痛(-)、関節の可動域良好、可動痛(-)
 筋力(MMT)は左右差なく5/5、感覚障害(-)、ラセーグ徴候(-)

あなたがこの患者を救急外来で診たならどうするでしょうか?