2019.04.19

EMA症例96:4月症例 60歳代女性 駐車場でうずくまっている状態を発見

状況


初冬の平日午前9時前の救急外来、引き継いだ患者さんの状態は落ち着いており現在入院待ちの状態です。
朝から救急外来は混雑しており、他の医師も診療中のようです。

 救急外来で実施できる検査は、血液ガス分析、ポータブル胸部レントゲン、ポータブルエコー、ポータブル心電図です。血液検査に要する時間は、血算は20分、一般生化学は40分かかります。レントゲン・CT室・MRI室は救急外来から移動する必要があり、一般患者さんとの共用です。ポータブルエコーは、医師による検査はすぐに実施できますが、検査技師によるものは検査室に移動する必要があります。  さて、このような中、救急搬送要請がありました。「60歳代女性、救急車が搬送から署に戻る途中、通りがかった駐車場でうずくまっている女性を発見。主訴は不明、貴院のすぐそばであり、数分で着きます」とのこと。当院で透析を受けていたらしいことが分かった段階で、救急車が到着しました。

患者さんについて


患者
60歳代女性
現病歴
自宅近くでうずくまっているところを発見。本人は「ごみを出しに行こうと思っていた」というが、前後のエピソードははっきりしない。問診では、胸痛・背部痛・腹痛の訴えはない。
既往歴
慢性腎不全(人工透析・当日透析予定日)、高血圧症、狭心症、高脂血症、アレルギー歴なし
内服薬
アジルサルタン、ニフェジピン、ロスバスタチン、フェブキソスタット、沈降炭酸カルシウム
来院時身体所見
意識レベル E3V4M6
(よびかけで開眼し名前は答えるが、ぼーっとしている BP 75/39 mmHg (MAP 51mmHg), HR 83回/分整, RR 23回/分, BT 36.7 ℃, SpO2 94%(室内気)
頭部
腫脹・変形・外出血なし
顔面
眼瞼結膜蒼白なし、眼球結膜黄染なし口唇に挫創あり
頸部
頸静脈怒張あり
胸部
心雑音なし 呼吸音喘鳴なし 皮下気腫なし
腹部
平坦・軟、心窩部圧痛あり・反跳痛なし
四肢
浮腫なし 汗をかいている

 末梢静脈路を確保し、生理食塩水投与を開始しました。簡易血糖検査では200mg/dlでした。同時に実施した心電図検査は、以前の波形と著変ありませんでした。血算・生化学は提出しています。 来院時の動脈血液ガスの結果(室内気)が手元に届きました。 pH 7.380, pCO2 35.7 mmHg, pO2 76.9 mmHg, HCO3 20.6 mEq/L, BE -3.4 mEq/L, K 4.8 mEq/L, Na 139 mEq/L, Cl 113 mEq/L, Glu 233 mg/dL, Lac 2.8 mmol/L, AG 5.9, Hb 11.0 g/dL

このような状況での鑑別疾患、対処についてお答えください。