2020.01.17

EMA症例42:8月症例解説

みなさま
御回答有難うございました!

さっそくですがまずは、皆様の解答の集計結果です。
施行する検査や身体所見はなんですか。

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追加の身体所見により画像の中で注目すべき点を見出そうとする先生と、一歩進んだ画像検査に踏み込む先生の2つに分かれました。

診断はなんでしょうか

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これも難しいですね。では救急外来でやることしたらどうなりますか?

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診断:右前下腸骨棘剥離骨折

骨盤の正面レントゲンをよく見ますと右の前下腸骨棘において左に比べ骨端線が離開しているのが分かります。

(下の画像で丸の部分)

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そこから前下腸骨棘の剥離骨折が考えられました。

痛み止め、免荷で帰宅とし、整形外科フォローとしております。

翌日整形外科にて斜位像を撮像されました。

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保存療法を施行し、2週間で荷重を開始し徐々に運動制限を解除しております。

骨盤は数多くの筋の停止となっています。反復運動や過負荷により突起炎をきたすことがあり、それから更に負荷がかかると筋肉よりも骨端線が弱いため剥離骨折を来します。

主な筋肉と付着部の関係は以下の通りです。

今回は膝の伸展を司る大腿直筋の停止である下前腸骨棘の剥離骨折でした。ボールを蹴ろうとする動作(つまり膝の伸展)時に起きた点とも合致します。

なお、剥離骨折以外の鑑別として小児の外傷では
・ 外傷性股関節後方脱臼(もしくはそれに続発した骨頭壊死や軟骨炎)
・ 大腿骨頭すべり症
などが挙げられます。

治療

剥離骨折の治療の多くは保存的に治療します。転位がそれほど大きくなることがないためです。骨膜の離断までは来していない事が多く時間とともに良好な骨化が得られることがほとんどです。が、転位が高度の場合は手術を要することもあります。

十分な骨化が得られるまで4−12週は運動を控えるように指示します。早期の復帰は再発や慢性痛の原因となるからです。

帰宅時は筋負荷が続くと転位が拡大する可能性があるため、固定・免荷が望ましいとされます。

Take home message
・ 小児は筋付着部の剥離骨折を生じる!
・ 受傷機転と身体所見から原因となっている筋を想起しその付着部を意識することにより画像読影の精度を上げよう!

参考文献
J Rehabil Med. 2014; 40: 188-190
J Pediatr Orthop. 2002; 22: 578-582