2020.01.17

EMA症例15:4月症例解説

皆さん、いかがでしたでしょうか?

4月症例をまだ読まれていない方は、こちらからどうぞ!

解説に入る前に皆さんの集計をまず公表します。

検査

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治療

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方針

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この患者さんの経過をお話しします。結局、症状がほとんど消失しているということでヘパリン持注が開始された後に循環器入院となりましたが、リスクが高い患者さんということで翌日カテとなりました。有意病変があったものの閉塞はしていませんでした(すみません。何番枝だったか忘れてしまいました)。

マネージメントの設問で緊急カテと答えられた皆さんは、なぜ緊急カテじゃないのか?と思われる方も多いかと思います。

従来の教育では新しいLBBBはAMIを疑い、ST上昇MI同様に扱うように教えられてきました。しかし、ここ最近の2009から2011のいくつかの論文ではこれに意義を唱える有力な情報が発信されました。

結論から言いますと、新しい(もしくは新しいと見なされる)LBBBとAMIの相関がないとこれらの論文で報告されています。つまり、既知のLBBBがある患者さんもしくは、もともとLBBBのない患者さんとAMIの相関と比較して、とくにその発生率が高い訳ではなかったようです(もちろんSgarbossa Criteriaは文献3で有用となっています。Sgarbossaは得意度が高いけど、感度が低いのでrule-outには使えません)。

心カテもしくは血栓溶解剤など侵襲性の高い治療を行う際にはそれなりのメリットがないといけません。しかし、LBBBとAMIの以前考えられていた程の相関がないとなると、メリットがないのに患者さんに侵襲性の高い治療を受けさせることになります。ちょっと考えものですね。

しかし、この結果にすぐに飛びつくのは要注意です。実際、新しいLBBB患者は緊急カテが必要ないと言えど、どの文献もこの患者群のcoronary riskは高いとしていますので循環器と話し合い、準緊急カテを考慮してもいいのかもしれません。

これらの情報は近々AHAのガイドラインにも組み込まれると言われています。皆さんとしては、いきなりこれをそのまま鵜呑みにするのではなく、新しいLBBB患者さんが来た際にどのように対応するかを循環器の先生方と事前に協議することが必要だと思います。

References:
1. Chang AM, Shofer FS, Tabas JA, et al. Lack of association between left bundle-branch block and acute myocardial infarction in symptomatic ED patients. Am J Emerg Med 2009;27:916-921.
2. Jain S, Ting HT, Bell M, et al. Utility of left bundle branch block as a diagnostic criterion for acute myocardial infarction. Am J Cardiol 2011;107:1111-1116.
3. Kontos MC, Aziz HA, Chau VQ, et al. Outcomes in patients with chronicity of left bundle-branch block with possible acute myocardial infarction. Am Heart J 2011;161:698-704.

~文責:EMA教育班 渡瀬剛人〜