2020.01.17

EMA症例13:2月症例解説

皆様本当に多くの回答をありがとうございます!
50名ほどの方々に参加いただき問題作成しているエネルギーとなります!
遅ればせながら2月症例の解説です
統計は以下の通りでした。

2月症例:回答統計へのリンク

解説です。
今月の症例はマネジメントではいろいろわかれるところもあると思いますので参考程度に考えてください。

解説
脛骨らせん骨折はちょうど歩き始める10ヶ月くらいから歩行の安定する3歳くらいまでの小児に見られる骨折です。
少し高いところから飛び降りて下肢をひねる、歩いていて呼び止められて急に振り返るなど、体重をかけながらひねる力が加わった時に起こる外傷と考えられていますがその瞬間を見ていないことも多く、受傷機転ははっきりしないこともしばしばです。
そうすると、突然歩かなくなったり体重をかけなくなる、足をひきずるようになったりなどの訴えになることがあります1)。
検査では、レントゲン上も明らかな骨折線を呈さないこともあり、フォローアップのなかで仮骨形成が明らかになった段階で分かったりすることもあります。
骨スキャンが診断に有用であるとの報告が多く見られますが救急外来でそこまでやるのはまれだと思いますので言及を避けます。
そもそも歩かない、足をひきずるという訴えの場合、股関節、膝などどこが痛むのかがはっきりしないこともあるためこうした骨折が小児にあることは鑑別に挙げておいてもいいと思います。

今回の症例は選択肢の中で意識的に出したように虐待の考慮が重要になってきますので虐待による骨折にも簡単に触れたいと思います。

復習として他にも虐待を疑わせる病歴として
・受傷してから来院までの時間が長い
・多数の傷が異なる治癒段階で散在する
などの特徴があり、場所も下記に挙げるような場所では虐待を疑うきっかけになります。

虐待による骨折の特徴として挙げられるのは
・18ヶ月以下の骨折
・複数箇所の骨折
・肋骨骨折
・大腿骨骨折
・3歳以下の上腕骨骨折
・上腕骨骨幹部骨折(顆上骨折と異なる)
・乳幼児の頭蓋骨骨折
と言われています。

脛骨骨折に関しては
・虐待は脛骨骨折では遠位骨折より骨幹部の骨折が多い(虐待で足をねじるとすると力はもっと真ん中から近位にかかる)
・脛骨らせん骨折が単独であれば虐待の頻度は低いとされている
という特徴が言われていますがはっきり区別できる基準は明らかでありません。

本症例でも検討し、全身の診察は注意深く行いましたが、単純な骨折と判断し、転移も少なかったことからオルソグラスをあてて、翌日整形外科受診で帰宅としました。

今回のtake home messageとしては
・ 歩きはじめの子供に起きる脛骨遠位端の螺旋骨折があるのを知る
・ 小児の骨折、熱傷をみたら必ず虐待を鑑別に挙げる(閾値を低めに!)
の2点を知って頂けたらと思います。

今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。