EMA症例170:8月症例 81歳 男性 主訴:呼吸困難
想定付与:
8月のある日の20時頃、
あなたは都市部 市中病院の2次救急病院で診療を行っています。
スタッフ医師はあなた1名、一緒に研修医2名が勤務してくれています。
そんな時に1台の救急車要請がありました。
救急隊より
「81歳男性、本日からの呼吸困難を主訴に救急要請されています。2週間前に貴院を心不全で退院したばかりとのことです。下腿浮腫があります。受け入れ可能でしょうか?」
研修医
「2週間前に退院したばかり!? また心不全じゃないですか?」
指導医の私
「そうかもしれないね。かかりつけだし、応需しましょう」
10分後、患者が搬入されました。
患者:81歳男性
主訴:呼吸困難
現病歴:
うっ血性心不全(EF 40%)で3か月間に3回目の救急要請。前回は2週間前に退院したばかり。
本日も夜間入眠時に起坐呼吸あり、救急要請となった。救急隊が訪室した際、壁に服薬カレンダーがあったが1/3くらい薬が残っていたと報告。
アレルギー:なし
既往歴:
・高血圧症
・2型糖尿病
・慢性腎臓病(eGFR 45)
・軽度認知障害(1年前診断:服薬管理や金銭管理に軽度の援助が必要になってきている)
・腰椎圧迫骨折(6か月前)
内服薬:
・フロセミド40mg 1日1回(利尿薬)
・サクビトリル/バルサルタン50mg 1日2回(ARNI)
・カルベジロール10mg 1日1回(βブロッカー)
・ダパグリフロジン10mg 1日1回(SGLT2阻害薬)
・アムロジピン5mg 1日1回(Ca拮抗薬)
・メトホルミン500mg 1日2回(糖尿病治療薬)
・アスピリン100mg 1日1回(抗血小板薬)
・ランソプラゾール15mg 1日1回(PPI)
バイタルサイン:
血圧158/92mmHg、心拍数96/分、SpO2 92%(経鼻酸素2L)、呼吸回数 24回/分、体温36.5℃
身体所見:
両側下腿浮腫(++)、頸静脈怒張(+)、両肺野に湿性ラ音聴取
12誘導心電図:
HR 96bpm, 洞性頻脈,ST-T変化なし
胸部単純レントゲン:
・心拡大(CTR 58%)
・両側肺門部うっ血像あり
・明らかな肺炎像なし
Point of care ultrasound:
・心嚢水(-)
・Visual EF 35-40%程度(前回入院時と同程度)
・壁運動異常(-)
・IVC径 22mm、呼吸性変動なし
血液検査:
【血算】
WBC 8,200/μL, RBC 380万/μL, Hb 11.2g/dL, Ht 34.2%, PLT 18.5万/μL
【生化学】
TP 6.8g/dL, Alb 3.2g/dL, T-Bil 1.8mg/dL
AST 45U/L, ALT 38U/L, LDH 280U/L
BUN 38mg/dL, Cre 1.45mg/dL(eGFR 38)
Na 135mEq/L, K 4.8mEq/L, Cl 102mEq/L
Glu 180mg/dL, HbA1c 7.2%
【心不全マーカー】
BNP 850pg/mL(前回退院時 320pg/mL)
【その他】
CRP 0.8mg/dL, PCT <0.25ng/mL
これらの結果から心不全と判断し、循環器内科へコンサルテーションした。
循環器の先生は、服薬コンプライアンスの低下をトリガーにした心不全でしょう、と話され、患者は循環器内科入院となった。
患者が循環器内科病棟に転床した後、あなたは研修医から声をかけられました。
研修医
「先生、やっぱり心不全は入退院を繰り返す疾患だから、3か月で3回目の入院ですけど、仕方ないんですよね?救急の先生も大変ですね。。。」