2025.04.28

EMA症例166:4月症例 50歳台 男性 主訴:意識障害

今月の症例は脳死下臓器提供、特にポテンシャルドナーを認識することや、選択肢の提示をテーマに取り上げてみました。いつもの症例とだいぶ趣が違うかと思います。
症例を「当たり前のことだ」と感じる方もいれば、「考えたことがなかった」という方もいるのではないでしょうか。設問・選択肢は設定していますが、必ずしもこれが正しい、これが間違いという話ではなく、「自分はこうするけど、施設で決まっているんだっけ?」「他の可能性もあるだろうか?」等々、考える機会になればと思います。

想定付与
4月のとある平日の昼間。救急外来で働くあなたは,救急搬送された患者さんの診療をしながら、新しく入ってきた研修医の指導にも勤しんでいます。
そこへ「意識障害」の救急搬送受入要請が入りました。応需し、次のような患者さんが運ばれてきました。

症例
年齢・性別:50歳台 男性
主訴:意識障害
現病歴:
受診当日12時頃、仕事に出勤してこないため、心配した同僚が自宅を見に行くと、室内で倒れていた。嘔吐した痕があり、呼び掛けても反応がないため、同僚が救急要請した。
アレルギー:特になし
既往歴・薬歴:詳細は不明だが血圧が高いとは言っていた

バイタルサイン
気道:舌根沈下あり 救急隊による用手的気道確保で開通
呼吸:救急隊がバッグバルブマスク換気を行っている SpO2 96% (酸素10L/分)
循環:心拍数70bpm、血圧 187/93mmHg
意識:GCS 3(E1V1M1)
体温:腋窩温36.7度

理学所見
瞳孔5mm/5mm  対光反射鈍いが+/+ 偏視なし
頭頸部:外傷所見なし 項部硬直なし
胸部:呼吸音左右差なし、心音整
四肢:両側脱力

確実な気道確保が必要と判断し、Rapid sequence inductionで気管挿管を行った後、頭部CTを撮影したところ、くも膜下出血を認めた。血圧管理を開始しながら脳神経外科にコンサルトしたが、Hunt and Hess分類 Grade Ⅴ(最重症例)に当たり、手術適応はなく、神経学的予後は厳しいという回答であった。
駆け付けた家族(同居ではない両親)に病状説明を行うことになった。