2024.08.10

EMA症例158:8月症例 80歳 女性 主訴:意識障害

夏真っ盛りの8月,あなたは初期研修医2名と3次救急病院で日直をしています.
この日も猛暑日で多くの熱中症の患者さんがERに受診しています.
そんな最中にまた救急要請が入りました.
「80歳の女性.自宅内で体動困難および意識障害を認めており救急要請となった方です.受け入れをお願いします.」

80歳 女性
主訴:意識障害
救急隊からの引き継ぎ内容現病歴:
意識障害を認めており,本人からは病歴聴取が困難でした.
同居の家族は救急車に同乗することが出来ず,後追いで来院予定です.
家族からはここ数日の体調不良があり,今日から意識も悪くなったので救急要請したと聞いています.頭痛・頚部痛・胸背部痛を訴えている様子は無かったとのことでした.
自宅はクーラーも十分効いている様子でした.

アレルギー:なし
既往歴:高血圧症,慢性心不全,脂質異常症,2型糖尿病
薬歴:ニフェジピン,サクビトリルバルサルタン,トホグリフロジン,グリメピリド
生活歴:ADL自立,自宅で家族と一緒に生活している

<バイタルサイン>:
気道:開通
呼吸:呼吸回数24回/min, SpO2 88%(フェイスマスク6L/分)
循環:心拍数93bpm, 血圧140/71mmHg(左右差なし)
意識:GCS 7(E2V1M4)
体温:腋窩温37.2度
血糖値:186mg/dL

<理学所見>
頭頸部:項部硬直なし,外傷痕なし.
胸部:呼吸音清,左右差なし.心音正常I/II音,III/IV音なし.
           呼吸様式は浅く早い.胸郭の外観上の変形はない.
腹部:平坦,軟,圧迫で痛がる様子なし
神経:
瞳孔2.5mm/2.5mm,直接対光反射+/+.眼位正中,眼振なし.
粗大な顔面筋の左右差なし.
上下肢とも挙上保持不可能,左右差なし.
膝立て両側とも不可能,左右差なし.

<動脈血液ガス分析_リザーバーマスク10L/分>
pH 7.120, PCO2 92Torr, PO2 75Torr, HCO3 29.8mmol/L, Lactate 0.9mmol/L, Hb 13.9g/dL, Na 148mmol/L, K 4.5mmol/L, Cl 106mmol/L, Ca++ 1.24mmol/L

一般血液検査は結果を待っています.

<Point of care ultrasound>
心嚢水なし, Visual EF 45%程度, Asynergy(―), IVC虚脱,右室拡張なし,右心負荷所見なし
胸水は両側認めない, 両側Lung sliding signあり,両側とも目立ったBlineの増加なし

<ポータブル胸部単純レントゲン>
心拡大なし,肺野異常陰影なし,胸水貯留なし.