2024.06.20

EMA症例156:6月症例 70歳台 男性 主訴:胸部違和感

6月のとある平日の当直中。救急外来には敗血症性ショックの患者さんがいて,あなたはその蘇生・治療に注力しています。
そこへ次の救急車がやってきます。主訴は「胸部違和感」。救急隊からの情報ではバイタルや全身状態は落ち着いており,ファーストタッチを研修医に指示しました。「到着したらすぐに心電図をチェックして。ACS(急性冠症候群)を念頭に,病歴やリスクもしっかり聞いてね。」
救急外来の勤務にも多少慣れてきた1年目研修医が「はい!ST変化があればすぐ報告します!」と答えます。

症例
年齢・性別:70歳台 男性
主訴:胸部違和感
現病歴:
受診当日の20時頃,急性発症の胸部違和感を主訴に救急要請。
強い痛みではないが,前胸部が詰まったような感じがする。
嘔吐2回あり,冷汗なし,放散痛なし,背部痛なし。このような症状は初めて。

アレルギー:特になし
既往歴:高血圧,逆流性食道炎
薬歴:アムロジピン
嗜好歴:60歳まで喫煙 10本/日,以降は禁煙している
最終摂食:18時頃に夕食

バイタルサイン
気道:開通
呼吸:呼吸回数16/min、SpO2 98%(R.A.)
循環:心拍数76bpm、血圧 147/80mmHg(左右差なし)
意識:GCS 15(E4V5M6)
体温:腋窩温36.7度

理学所見
頭頸部:咽頭発赤なし,扁桃腫大なし
胸部:呼吸音清・左右差なし,心音整,心雑音なし
腹部:平坦・軟,圧痛なし

Point of care testing
静脈血液ガス分析:
pH 7.34, PCO2 38Torr, HCO3 24mmol/L, Lactate 1.31mmol/L, Hb 13.6g/dL, Glucose 145mg/dL, Na 142mmol/L, K 4.4mmol /L, Cl 108mmol /L, Ca++ 1.12mmol/L
12誘導心電図:HR 74bpm,洞調律,ST-T変化なし
胸部単純レントゲン:心拡大なし 縦隔拡大なし 肺野に異常なし
Point of care ultrasound:
心嚢水なし Visual EF 60%程度 Asynergyなし
胸水なし 腹部大動脈瘤なし