2022.02.14

EMA症例130:2月症例 72歳 男性 意識障害、痙攣

あなたは地域の総合病院の救急外来で、休日日勤に従事しています。
救急要請です。

 「72歳男性。近所の人の話によると昨日の夜までは普段通りでしたが、本日弟さんが訪問したところ、布団の中に寝たまま反応がなく手足を突っ張っているということで、救急要請となりました。救急隊が接触したところ、意識レベルはJCS 3で左共同偏視がありそうです。仰臥位で反応がありません。」

近隣に受け入れ先がなく搬送には30分かかるとのことです。あなたは入電の内容から脳卒中や痙攣の可能性を考慮して末梢静脈ルート確保、頭部CT撮影をするつもりで準備をしていました。そこへ救急車が到着、以下の情報が判明しました。

 【既往歴】
統合失調症、高血圧
その他特記すべき既往歴なし

 【常用薬】
リスペリドン3mg4T分2、クエチアピン100mg2T分2、エチゾラム1mg2T分1、レボメプロマジンマレイン酸塩5mg2T分1、パンテチン100mg6T分3、レバミピド100mg3T分3、酸化マグネシウム500mg3T分3

 【アレルギー】
なし

 【生活歴など】
独居、普段のADLは自立
飲酒歴なし、喫煙歴なし

 【来院時所見】
気道開通、呼吸数 24回/分、SpO2 94% (room air)
脈拍数 70回/分・整、血圧 113/61 mmHg、末梢冷感なし
意識 (GCS E2V3M4)、体温 36.3℃
左共同偏視 四肢は伸展強直

 《来院後経過1》
救急隊のストレッチャーからベッドに移乗後しばらくして、全身性の強直間代痙攣がはじまりました。ルート確保後にジアゼパム5mgを静注、痙攣は頓挫しました。

 【痙攣が頓挫した後の身体所見】
身長165cm 体重50kg
GCS E1V1M4
瞳孔正中位 3+/3+ 
項部硬直なし
頸静脈怒張なし
呼吸音 清・左右差なし、心音 整(過剰心音なし、心雑音なし)
腹部平坦・軟、圧痛なし
皮膚に皮疹なし 両下腿に浮腫なし
四肢に明らかな麻痺なし
大腿四頭筋に間欠的な筋攣縮あり

 《来院後経過2》
意識障害・痙攣の精査目的に、あなたは以下の検査を実施しました。

 【静脈血液ガス所見】
pH 7.414, PCO2 33.0 mmHg, PO2 46.3 mmHg, HCO3 20.7 mmol/L, BE -2.8 mmol/L, tHb 11.0 g/dl, Na 99 mmol/L, K 3.3 mmol/L, Ca 0.99 mmol/L, Cl 68 mmol/L, Glucose 137 mg/dl, Lactate 40 mg/dl (4.4mmol/L)

 【血液検査所見】
WBC 7500 /μL (Neut 85.2%, Eosi 0.1%), Hgb 10.6 g/dL, Plt 15.1万 /μL,
T-Bil 1.87 mg/dL, AST 103 IU/L, ALT 29 IU/L, ALP 120 IU/L,
BUN 8.4 mg/dL, Cre 0.60 mg/dL, Na 100 mEq/L, K 3.4 mEq/L, Cl 69 mEq/L, CRP 0.58 mg/dL,
PT 13.1 秒, PT-INR 1.06, APTT 35.4 秒

 【心臓超音波所見】
EF 50%、心嚢液貯留なし、Asynergyなし、弁膜症なし

 【頭部CT所見】
頭蓋内占拠性病変なし
脳室の拡大なし

 【胸腹部単純CT所見】
肺炎像なし、肺野にうっ血像なし 胸腹水なし
膵周囲の脂肪織濃度上昇なし、消化管に浮腫や壁肥厚なし
肝辺縁鋭、肝腫大なし 胆嚢腫大なし、肝内胆管や総胆管の拡張なし
腎臓の萎縮なし、腎盂拡大や尿管拡張なし