2020.06.18

COVID-19の重症化予測スコア(COVID-GRAM)

Wenhua Liang, Hengrui Liang, Limin Ou, et al. Development and Validation of a Clinical Risk Score to Predict the Occurrence of Critical Illness in Hospitalized Patients With COVID-19. JAMA Intern Med. 2020 May 12;e202033.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32396163/

すでに使用している方もいるかと思いますが、COVID-19の重篤化を予測するリスクスコア(COVID-GRAM)の紹介です。
2019年11月21日から2020年1月31日までの期間に、中国で1590人のCOVID-19患者がデータベースに登録されました。患者の属性・既往歴・症状・画像・採血データなどの72の変数から、LASSO回帰とロジスティック回帰モデルを用いて、10個の変数によるリスクスコアを作成しました。

胸部レントゲンの異常、年齢、喀血、呼吸困難、意識障害、併存疾患の数、癌の既往、好中球とリンパ球の比率、LDH 、D-Bilの10項目を計算式に入力すれば重篤化するリスクを計算することができます。

なお計算式が複雑なため、結果を入力すれば自動的にリスク分類してくれるWebページが公開されています。http://118.126.104.170/
このスコアを用いて、710人の患者で検証コホートがなされています。検証コホートのAUCは0.88 (95% CI, 0.84-0.93)と、なかなか高い精度を示しています。

注意しなくてはいけないのは、D-Bilの単位をmg/dLからμmol/Lに変換するときは17.1を掛け算しなくてはいけません。すでに「MDCalc」などのアプリには本スコアが登録されており、単位の変換もできます。私はWebページではなくてスマートフォンアプリを使用する方が入力を間違えづらいと感じています。

併存疾患の中にはB型肝炎の有無もあり、国の事情も影響しているかもしれません。

また高感度トロポニンIやDダイマーなどの既知の重症化リスク因子は弾かれており、今回のスコアには入っていません。
世界中に大量のデータが蓄積されており、今後さらに精度の高い予測スコアが作成されるのではないかと考えます。