2020.08.17

エアロゾルボックスの検証研究

J.P. Simpson, D.N. Wong, L. Verco, et al. Measurement of airborne particle exposure during simulated tracheal intubation using various proposed aerosol containment devices during the COVID‐19 pandemic. Anaesthesia. 2020 Aug 1. [Epub ahead of print]
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32737982/

4月にNEJMからエアロゾルボックスの文献が出て以来、気管挿管時にエアロゾルボックスを使用している施設も多いのではないでしょうか?
飛沫に関しては、蛍光色素を利用した検証がなされており、文献班からもLetterを紹介しました。
(「エアロゾルボックスの有用性」https://www.emalliance.org/covid/journal/32243118)
飛沫に関しては暴露予防効果がありそうでしたが、5μm未満の「エアロゾル」に関しては十分な検証がなされていたとは言えていませんでした。

今回の研究では、人工的に作成した0.3~5μmのエアロゾルについて気管挿管実施者の暴露量を測定しています。
ショッキングな事に、両手を入れる穴を備えた一般的なエアロゾルボックスを使用すると、むしろ気管挿管実施者のエアロゾル暴露量が大幅に増えたという結果でした。エアロゾルが両手の穴から噴き出して、暴露量が増えたと推定されます。
また患者にドレープを水平にかけた場合や、気管挿管実施者の目の前に垂直にドレープを立てても、何もしない場合と比べてエアロゾルの暴露量は変わらないという結果でした。
唯一エアロゾルの暴露量が減ったのは、完全に密閉したボックスに吸引装置を施した場合のみでしたが、このままでは気管挿管を行う事はできません。

注意すべき点としては、5分間の測定中に模擬患者さんが30秒に1回咳をするという方法で行われた検証結果です。実際の気管挿管とは状況が違うと考える方もいらっしゃると思います。
COVID-19の主な感染経路である飛沫感染や接触感染を予防する効果はあるかもしれません。しかし「エアロゾル」という観点からは、皮肉なことに「エアロゾルを集めているボックス」である可能性があるため注意が必要です。

エアロゾルボックスを使用している施設はこの点を十分に考慮した方が良さそうです。