2020.04.24

サージカルマスクとコロナウイルス

Leung, N.H.L, et al. Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks. Nat Med (2020).
https://doi.org/10.1038/s41591-020-0843-2

COVID-19を意識してサージカルマスクを利用する場面が増えていると思いますが、本当にサージカルマスクでコロナウイルスを補足できるのでしょうか?
サージカルマスクの有用性についてはインフルエンザのデータで議論されることが多いと思いますが、インフルエンザウイルスとコロナウイルスの違いはないでしょうか?
nature medicineに掲載された本論文によると、(新型ではない)コロナウイルスについてはサージカルマスクで捕捉できている可能性があるようです。

詳細は以下の通りです。
上気道炎患者の呼気中のウイルスRT-PCRを調べました。
患者にマスクを装着する群とマスクを装着しない群に分けて、5μmより大きい「飛沫」と5μm以下の「エアロゾル」に分けて測定しています。
54例のライノウイルス、43例のインフルエンザウイルス、17例の(新型ではない)コロナウイルスが検出されました。

このうちコロナウイルスだけは、マスクの有無でウイルスの検出に大きな違いが出ています。
マスクを装着した群からは、飛沫中にもエアロゾル中にも、コロナウイルスは全く検出されませんでした。

一方インフルエンザウイルスでは、マスクの有無で飛沫中のウイルス検知は有意に差がでるものの、エアロゾル中のウイルス検出には有意な差はありませんでした。
ライノウイルスでは、飛沫でもエアロゾルでも有意差は出ていません。

・あくまでも「新型」コロナウイルスではないこと
・コロナウイルスを検出したのが17例と少ないこと
・RT-PCRの検出と臨床的な「感染」は別次元の話であること

などについて解釈に十分な注意が必要です。
1つの文献だけで方針を決定するのも危険です。
しかし限られた情報の中で戦わなくてはいけないのが、今の臨床現場だと思います。
私は院内感染を広げないために、病院職員が控え室でも常にマスクを着用するという方針を検討しております。