2010年 EMA特撰文献 Top10

EMAオススメ文献コレクションに新しい仲間の登場です。

ここでは、EMAメンバーの独断と偏見によって選ばれた、2010年の救急医学必読文献トップ10を紹介します。

Pubmedへのリンクもつけてあります。日々の診療指針、ジャーナルクラブの話題などに活かして頂ければ幸いです。他にもこれぞという文献があればご紹介下さい。

Editor:長谷川耕平

このJAMAのRCT。敗血症ショックのEGDTで高価なエドワーズカテーテルを使わずに、安価な乳酸値クレアランスを追えば、古典的River’sプロトコールと予後は変わらなかったというnon-inferiorityの結果。こういうスタディは好きです。
日本とアメリカのCTの違いは、日本は単純CTをアメリカは造影CTをとる傾向があるところですね。このreviewでは、アッペにおいて単純CTを十分に正確だったと結論づけています。
しかし、これは肥満度が高いアメリカにおいて言えたこと(脂肪が臓器を分離するので画像が見やすい。脂肪が医療で役立つ数少ない時!)で、細身の多い日本人ではどうでしょうかね?
以前、長谷川先生の論文紹介でも出ましたが、STEMIの死亡率がPCI介入が1時間遅れるごとに10%上昇することを示した論文です。
いわゆる「Door-to-balloon」と言われる病院到着からPCIまでの時間を検討した論文は以前からありましたが、救急車の通報からの時間で検討した論文は初めてです。
救急はシステムに大きな影響を受ける医療ですので、ある部分だけが頑張ってもダメなんですよね。
部分最適化ばかりに目を捕らわれずに全体最適化に向けてどうするかを考えなければなりません。患者にとっては、救急車を呼んだ時点から、救急医療は始まっているわけです。
4. Accuracy and Quality of Clinical Decision Rules for Syncope in the ED: A Systemic Review and Meta-analysis.
Ann of Emerg Med 2010; 56: 362-373

失神はいつも悩みますね。まあ、でも入院かなという感じで入院させてしまう。OESILやSan Francisco Ruleはいいと言われているけど、ダメとも言われてるし。
答えは何なの?!とつい言いたくなってしまう。このAnnalsは、今までの失神の文献をMeta-analysisしています。有名なOESILやSan Francisco RuleからBoston RuleやRose Studyまで、多くの文献(DerivationとValidation両方)を取り上げています。San Francisco Ruleでは2%-36%、OESILでは5%-13%とAdverse eventの割合に大きなバラツキがみられた。これは、各studyでのstudy designやECGを読む人に依るもの(significanceはなし)ではないかと推測しています。
したがって、結局は各studyはlimitationが多く、切り札となるstudyはないと結論づけています。結局、失神のDispoは未だ決まらず状態ですね。まあ、今まで発表されたstudyをあまり信用するなという意味では、意義ある文献だったと思います。

今年の文献の中ですごいなーと感じたものをひとつだけ。アリゾナでの院外蘇生に関する成果についてのスタディです。心マは2010年ガイドラインでも取り上げられていますが今後も心肺蘇生になくてはならない要素になっています。

みなさん御存じで、色んなところですでに話題になっていることでしょう。カナダのStiellらがついにやってくれましたSAHのclinical decision ruleの論文です。この論文のすごいところは、国や地域における救急のシステムの違いを考慮して予測ルールを作ろうとしているところです。全世界の救急で使える予測ルールを作ろうとするスケールの大きさを感じます。
Inclusion criteriaなどがすこし厳しめな印象はありますが、非常に興味深く、現場に立つER医には必読論文のひとつだと思います。(編者注:Validationされていないので使用には注意を)

8. CATCH: a clinical decision rule for the use of computed tomography in children with minor head injury

CMAJ., Mar 2010; 182: 341 – 348

2009年度 EMA Top10 Articles の目玉、PECARN(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19758692?itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum&ordinalpos=2)に続けとお隣、カナダからPediatric minor head traumaに対するCT適応に関するDerivation study。GCS13が少人数入ってたり、少し気になる所はありますが、Pediatric minor head traumaのCT適応に関してPECARNに続くstudyと思います。
(編者注:Validationされていないので使用には注意を)
Annals of Emergency Medicine Volume 56, Issue 3 , Pages 283-287, September 2010uncomplicated skin abscessにはバクタはいらないか、、、というstudyですね。
市中感染MRSAが米国では多いのでバクタを使うということですね。
N Engl J Med 2010; 362:1363-1373
心房細動の患者さんのレートコントロールのゴールはどこへ? ゴール110以下群は80以下群と比較して、複合アウトカム(composite of death from cardiovascular causes, hospitalization for heart failure, and stroke, systemic embolism, bleeding, and life-threatening arrhythmic events)に差なし。ゴールも達成しやすかった。

番外編

ORと救急での挿管は全く違いますが、やっても損はないNasal酸素ですね。小児、妊婦患者にも応用可能と想像できます。
12. Reporting and interpretation of randomized controlled trials with statistically nonsignificant results for primary outcomes.
JAMA. 2010 May 26;303(20):2058-64.

2006年12月までのRCT論文616本。そのうち、Primary Outcomeでp≧0.05と統計的有意差がみられなかったのは、72本。

それらの論文において、統計的有意差がないに治療が有効であるような印象を与える表現や、有意差のない結果をごまかすような表現があるかどうかを調査した論文です。これを「spin」と呼ぶようです。

その結果は衝撃的です。
タイトルで、13本(18.0%、95%CI:10.0~28.9)が「spin」あり。
アブストラクトで、27本(37.5%、95%CI:26.4~49.7)が「spin」あり。
結論で、42本(58.3%、95%CI:46.1~69.8)が「spin」あり。さらに、そのうち17本(23.6%、95%CI:14.4~35.1)は、結論で治療のいいとこしか言っていませんでした。

いかに論文が、著者の言いたいことが先にありきになって作られてしまっていることがわかります。もちろん、意図的・非意図的に関わらず、そうなってしまうということがデータで示されてしまいました。論文を読むときにも、書くときにも気を付けなければなりません。

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