2018/3/16 文献紹介

EMAの皆様 こんにちは。沖縄県立宮古病院の山本です。 寒い冬が終わり、だいぶ暖かくなってきましたね!! 今回は心停止に関連する文献を3つ紹介します。 少し長いですが、よろしくお願いします。 ①Lower-dose epinephrine administration and out-of-hospital cardiac arrest outcomes. Resuscitation. 2018 Jan 3;124:43-48. みなさんご存知の通り、アドレナリンは蘇生に必須の薬剤です。 しかしアドレナリンのエビデンスは乏しく、病院到着前の蘇生率は改善させても全生存率を改善させないという報告や神経学的予後を悪化させるという報告もされています。 (この辺りはJ Emerg Med. 2017 Jun;52(6):809-814. Emergency Medicine Myths: Epinephrine in Cardiac Arrest.に詳しいです) 従って病院外心停止におけるアドレナリンの有効性は疑問視されており、2015年のAHAガイドラインではクラスⅡb, very low quality evindenceとなっています。 また、投与する/しないという間での生存率や神経学的予後の評価 は以前からされていましたが、投与量での評価はされていませんでした。 この疑問に答えを1つ加えてくれるシアトルからの文献を紹介いたします。シアトルと言えば米国一の蘇生率を誇る都市ですね!! シアトルでは、2011年のアドレナリンがプラセボに比較し生存退院率に勝らなかったRCT、2012年の日本から報告されたア ドレナリン使用量と生存率の低下の関連を示した大規模観察研究の結果を受けてアドレナリンの使用量を減らしたプロトコルを2012年10月から導入したようです。その前後での比較試験です。 細かい点は省きますが、2012年10月以降のプロトコルではそ れ以前では1回1mgだったアドレナリン投与量が1回0.5mgに、投与間隔も伸ばされています。 こんなにあっさり変えられるなんてすごいなシアトル!! 2008年1月から2016年6月の期間を対象としています。 結果です。期間中に病院外心停止は3570人、1315人が除外されショック適応リズムの554人、非適応リズムの1701人が解析されました。 アドレナリン使用量はプロトコル変更前後で平均してショック適応リズムで0.8mg、非適応リズムで0.7mgの低下を認めました。 しかしROSC、生存退院、良好な神経予後のいずれも改善しておりませんでした。ショック適応、非適応のリズムに関わらず改善を認めなかったようです。 例えば生存退院はショック適応リズムで変更前35% → 変更後34.2% (p=0.832)、非適応リズムで変更前4.2% → 変更後5.1% (0.366)、良好な神経予後はショック適応リズムで変更前32.9% → 変更後30.5% (p=0.555)、非適応リズムで変更前3.1% → 変更後3.5% (0.589)でした。 前後比較試験でありlimitationはかなりありますが、この期間に蘇生のevidenceが蓄積されていたにも関わらず改善を認めなかったことを考えると、アドレナリンの投与量の差は蘇生には関連がないのかもしれません。 続いてPEAに関する文献です。 PEAでは脈拍の触知の有無がとても大切です。しかしトレーニングされた人間でも10秒以内に脈拍の有無を判断するのは難しいです。 またPEAは初期波形の20-25%を占めると言われており、心停止の約1/4を占めています。PEAを見た場合は原因検索を行い、原因に対する治療を行うことが必要ですが、PEAの原因に対する正しい治療が行われていたのは18%しかなかったとも報告されています。 最近では初期波形のQRS幅と心エコーを用いて、これまでの原因検索とは異なる方法を試みている方々もいます。 まだまだわかっていないことだらけのPEAですが、そんなPEAに関して2つ興味深い文献をご紹介いたします。 ②Initial electrical frequency predicts survival and neurological outcome in out of hospital cardiac arrest patients with pulseless electrical activity Resuscitation. 2018 Feb 3;125:34-38. 1つ目はPEAの心拍数に関する研究です。この場合の心拍数はあくまで脈が触れない状態での心臓の電気的な活動を指します。 PEAで記録された心拍数が60を超えていた場合、予後が良かったという研究です。 2013年8月から2015年8月の間にウィーンで心肺停止レジストリVICARに登録された症例を元にした後ろ向き観察研究です。18歳を超えた成人の非外傷性心停止で初期波形がPEAの症例を対象としております。記録された心電図を解析し、初期波形が PEAだった症例の心拍数を計測しました。そして心拍数が10-24回/分、25-39回/分、40-59回/分、60-150 回/分の4つの群にわけ30日後の生存率、神経予後を調べています。 結果です。期間中の病院外心停止は2149人、うち初期波形がPEAは631人、そのうち504人の解析が行われました。 心拍数が60を超えていたのは73人(14%)でしたが、30日生存率は22%(16人)、良好な神経予後は15%(11人)と 、他の群に比較し有意に良好な結果となりました。 逆に心拍数が10-24回/分の群(109人 22%)は30日生存率2%(2人)であり、高い死亡率との関連を認めました。またこの群では良好な神経予後は0%でした。 PEAで心拍数が60を超えている…それって本当にPEAだったの!?というツッコミがありますが、PEAの心拍数に焦点を絞った研究は初めて見ました。 心拍数が60を超えているPEAでは良好な予後に期待できるかもしれません。 ③A retrospective study of pulseless electrical activity, bedside ultrasound identifies interventions during resuscitation associated with improved survival to hospital admission. A REASON Study. Resuscitation. 2017 Nov;120:103-107. 続いてPEAと心エコー、カテコラミン持続静注に対する文献です 。 2016年10月、当文献班の鈴木先生が紹介して下さった、CPR中の経胸壁心エコーで心臓の動きを認めた場合、予後が良いかもしれないという文献を覚えていらっしゃるでしょうか??(http://www.emalliance.org/?p=5503 ) これはthe Real-time Evaluation and Assessment Sonography Outcomes Network (REASON)によって行われた全米20施設の前向き研究でしたが、その研究の二次解析です。今回はPEAの症例に焦点を絞っています。 記録された心エコーから心臓の動きをorganizedとdisorganizedに分類しています。organized cardiac activityとは心室壁が同期した動きをみせ、心室のサイズに変化がある場合を指します。いわゆる心臓が収縮している状態と思われます。 そして蘇生中にACLS通りに薬剤が使用されたのか、それともドパミンやノルアドレナリンなどのカテコラミンの持続静注が使用されているのかを調べています。 非常に興味深い結果となっています。 まず全心停止(793人)のうちPEAは414人、そのうち心エコーで心臓の動きを認めたのは225人(うち10人はさらに除外)、organized群は75人、disorganized群は95人でした。 organized群でカテコラミンの持続静注が使用されていた群ではACLS通りの薬剤を使用していた群と比較しROSC率 90.9% (vs 54.7%)、生存入院率 45.5% (vs 37.7%)、生存退院率 4.5% (vs 1.9%)と有意に高くなっています。 一方でdisorganized群ではカテコラミン持続静注群 vs ACLS群でROSC率 47.1% (vs 37.2%)、生存入院率 0% (vs 17.9%)、生存退院率 0% (vs 1.3%)の結果となり、有意差を認めませんでした。 いかがでしょうか?? N数は225人と少なく、生存退院は全体で3人のみです。またエコー結果もreviewerによる後ろ向きの解析で、現場でorganized、disorganizedを判断していません。なぜカテコラミンが蘇生中に開始されたのかもわかっておらず、かなりlimitationがあります。 しかしPEAの一部はACLS通りの治療でなく、カテコラミン持続静注の方が効果があるかもしれないと思うと、ワクワクする結果ではないでしょうか!? この文献が伝えてくれることは以下の2点です 1. 蘇生中の心エコーで心臓の動きをorganizedとnon-organizedに分類することは理にかなっているかもしれない 2. organized cardiac activityを認めるPEAではカテコラミン持続静注の出番が今後出てくるかもしれない いかがでしたか?? 皆さんのアドレナリンやPEAに対する見方は変わったでしょうか?? これからも心停止に関する文献から目が離せませんね!! 沖縄県立宮古病院 救急科 山本 一太

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北米型救急でもやはり集中医療は大事。勝負はERから始まってます。基本をこれでおさえましょう。 おすすめ度:★★★★ The ICU Book /...

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Emergency Ultrasound / O. John Ma, James Mateer, Michael Blaivas

DrNobleの本もいいがこの本もなかなか。 おすすめ度:★★★★★ Emergency Ultrasound / O. John Ma, Ja...

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判読ER心電図: 実際の症例で鍛える Ⅱ 応用編 / A. マトゥー, W. ブラディ

『ECGs for the Emergency Physician 2』が原著です。 メリット①原著(3929円)より訳本(3360円)のほうが安い ...

判読ER心電図実際の症例で鍛える 1 基本編 / A.マトゥー, W.ブラディ

『ECGs for the Emergency Physician 1』が原著です。 メリット①原著(3929円)より訳本(2940円)のほうが安い ...

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アプローチを身につけたら、あとはひたすら演習するのが近道。 救急医は循環器医以上に心電図を読めるようにしたいですね。一冊につき200個のEKGがありま...

Marriott’s Practical Electrocardiography (Marriott’s Practical Electrocardiography (Wagner)) / Galen S. Wagner

わからないことがあれば、この心電図の成書で確認。やはりMarriottがいいと思います。 おすすめ度:★★★ Marriott’s Practi...

図解心電図テキスト―Dr.Dubin式はやわかり心電図読解メソッド / デイル デュービン

『Rapid Interpretation of EKG’s: An Interactive Course』の日本語版。 おすすめ度:★★★★★ ...

Rapid Interpretation of EKG’s: An Interactive Course / Dale Dubin

まずはシステマチックな読み方を身につけることが大事だと思います。原理はあとからついてきます。著者は人間的にはかなり問題があったようですが(伝説です)、こ...

Fracture Management for Primary Care / M. Patrice Eiff MD, Robert L. Hatch MD MPH, Walter L. Calmbach MD

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トップナイフ―外傷手術の技・腕・巧み / Asher Hirshberg, Kenneth L. Mattox

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スキル外来手術アトラス―すべての外科系医師に必要な美しく治すための基本手技 / 市田 正成

救急医だからこそ、外科医なみに傷をきれいに直したい。ちょっと高いですが、オススメ。 おすすめ度:★★★★ スキル外来手術アトラス―すべての外科系...

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創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ これからの創...

創傷治療の常識非常識〈2〉熱傷と創感染 / 夏井 睦

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創傷治療の常識非常識―〈消毒とガーゼ〉撲滅宣言 / 夏井 睦

創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ 創傷治療の常...

ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips / 夏井 睦

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外傷初期診療ガイドライン 改訂第3版 / 日本外傷学会

JATECはかなりいけています。外傷の基本です。しっかりおさえよう! おすすめ度:★★★★★ 外傷初期診療ガイドライン 改訂第3版 / 日本外傷...

骨太! Dr.仲田のダイナミック整形外科(上巻)~決定版! プライマリ・ケアのための膝・腰・肩のみかた~ケアネットDVD / 仲田 和正

上記、仲田先生のDVD。すいません、僕は彼のファンみたいなものなのです。整形はビジュアルで学ぶといいですね。教育は教科書から、こんなビデオ形式に向かって...

けが・うちみ・ねんざのfirst aid (総合診療ブックス) / 大場 義幸, 仲田 和正, 箕輪 良行

これも研修医時代に読んだ本。ちょっと古いですがやはり色々と勉強になる点が今読み返してもあります。 おすすめ度:★★★★ けが・うちみ・ねんざのf...

Emergency Orthopedics: The Extremities / Robert Simon, Scott Sherman, Steven Koenigsknecht

この本も骨折・脱臼のマネジメントなどの情報が実に豊富です。 おすすめ度:★★★★★ Emergency Orthopedics: The Ext...

カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技) / 内田 淳正 (編集), 加藤 公 (編集)

コンセプトは上述の本と一緒。疾患が1-2P毎に別れて記載されているし、和書なので読みやすい。臨床研修が始まって良い本が増えましたね。 おすすめ度:★★...

Fracture Management for Primary Care / M. Patrice Eiff MD, Walter L. Calmbach MD, Robert L. Hatch MD MPH

どの骨折にどの固定がよくて、どれくらい固定が必要とか。いつどのタイミングで整形外科にコンサルトするとか非常にわかりやすく統一した書式で書いてあります。 ...

Atlas of Normal Roentgen Variants That May Simulate Disease / Theodore E. Keats MD, Mark W. Anderson MD

小児において骨折なのか正常なのか?様々な悩ましいケースを載せています。放射線科が単純まで手の回らない日本では救急部に一つあっていいですね。 おすすめ度...

Accident and Emergency Radiology / Nigel Raby FRCR, Laurence Berman MB BS FRCP FRCR, Gerald de Lacey MA FRCR

おなじみの整形疾患の画像をまとめた本。写真も多く、読み方のポイントまで懇切丁寧。しかもポケットサイズ。 おすすめ度:★★★★★ Accident...

Essentials of Musculoskeletal Care (Essentials of Musculoskeletal Care (Griffin)) / Walter B., M.D. Greene

これも知られていない名作。アメリカ整形外科学会から、プライマリーケアで診る整形疾患がよくまとまってます。絵も多く、整形診察の手順もよくのってます。オスス...

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