EMA症例55:11月症例解説
EMA症例

 今回の症例の診断は急性乳様突起炎でした。かなりの正解率でした。またその他にも素晴らしい回答ありがとうございました。 ●みなさんの回答としては以下になっております。 49kaisetsu_zu1  乳様突起炎は側頭骨の乳突蜂巣にある乳様突起の炎症で、中耳炎と関連性があるといわれています。乳様突起炎は急性と慢性に分類されています。急性乳様突起炎は急性中耳炎が中耳裂溝の粘膜を超えて乳突蜂巣の骨炎や乳様突起の骨膜炎を伴って直接皮質の骨びらんをおこす、もしくは間接的に乳突蜂巣の導出静脈から広がることでおこります。慢性乳様突起炎は慢性化膿性中耳炎、特に真珠腫性中耳炎が関与しています。真珠腫は良性の扁平上皮の集合で、周囲の組織や骨の構造や機能を変化させます。それの過程で扁平上皮から分泌される骨融解性酵素によって中耳炎の悪化を引き起こします1)。  急性乳様突起炎の初期では中耳炎に難聴、耳痛、発熱を伴い、その後乳様突起に発赤、腫脹、圧痛を認めます。耳介は起立し、耳介後部のしわが消失してきます2)。このような臨床像が乳様突起炎では一般的です。  頻度としては先進国では10万人あたり1.2〜6.1人程度3)といわれており、小児、特に2歳未満に多いとされます4)。  リスクとしては最近もしくは再発の中耳炎の病歴や真珠腫性中耳炎、免疫抑制状態が挙げられます。  急性乳様突起炎の原因菌としてはStreptococcus pneumoniaeStreptococcus pyogenesHaemophilus influenzaeStaphylococcus aureusが多いとされます。慢性乳様突起炎では嫌気性菌やグラム陰性菌など複数菌の感染が起こることがあり、免疫抑制患者においてはMycobacterium tuberculosisnontuberculous mycobacteriaAspergillusRhodococcus equiなどが原因となることもあります5)。  症状としては前述のように発熱、頭痛、耳痛、難聴、発赤などがあります。典型的には夜間に耳介後部の痛みが増悪します。身体所見では耳介後部の発赤や圧痛、耳介起立(下画像参照)、鼓膜の異常所見(急性中耳炎に似ており発赤、膨隆、可動性の低下の所見を認めるが、10%では正常鼓膜)などが特徴です。 49kaisetsu_gazou1 小児患者での左耳介起立(耳介軟骨炎患者 画像は名古屋掖済会病院救命救急センター 安藤裕貴先生よりお借りしました) また中耳炎が2週間以上持続する場合などでは疑いが強くなります6)。以下小児対象のものですが症状と徴候の頻度について表に記載します7)49kaisetsu_hyou1 ●追加の検査についての回答は以下となっていました。 49kaisetsu_zu2  検査についてですが、採血検査などは特徴的なものはありませんが、白血球などはベースラインとして採血をしてもよいかもしれません。画像検査としてレントゲンは適切ではなく、CTは診断の感度がよく87−100%と言われています8)。CTでは以下の所見を認めます9)49kaisetsu_hyou2  今回の症例のCT画像ではこのようになっていました。またその他の検査としてMRIも合併症精査に有用とされています。 49kaisetsu_gazou2 乳突蜂巣に液体貯留を認めます ●方針についてのアンケート結果は下記の通りです。 49kaisetsu_zu3  治療としては入院にて抗生剤治療が初期治療として行われます。抗生剤の選択は第3世代セフェムやアモキシシリン/クラブラン酸が使用され、ペニシリンアレルギー患者ではクリンダマイシンが使用されます。72時間の抗生剤治療で改善しない場合や発熱持続、頭蓋内合併症を有する時、乳様突起骨膜下膿瘍を認める時には乳様突起削開(開放)術が適応となります。  合併症は難聴、顔面神経麻痺、脳神経障害、骨髄炎、錐体尖炎、迷路炎、グラデニーゴ症候群(中耳炎、眼窩後部痛、複視からなる症候群)、膿瘍形成、頭蓋内感染症(髄膜炎、脳膿瘍、硬膜外膿瘍、硬膜下膿瘍)、S状静脈洞血栓などがあります。  さて今回の症例では同日耳鼻科のある病院に転院となり、入院後抗生剤治療にて軽快し帰宅となりました。   まとめ ●中耳炎の患者を診察した時には乳様突起炎も鑑別に上げ問診診察、CTを検討をする ●耳介後部の発赤や耳介起立を見たら乳様突起炎を考え、早期耳鼻科診察、入院を考慮する ●乳様突起炎の合併症には頭蓋内感染症など致命的な疾患があるため注意を要する 1.Jerome O. Klein: Mandell,Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases 62:767-773.e1 2.Thomas Morrissey, John B. Lissoway: Emergency Medicine 27:226-235.e1 3.Lin HW, Shargprpdsky, Gopen Q: Clinical strategies for tha management of acute mastoiditis in the pediatric population. Clin Pediatr(Phila) 2010;49:110-115 4.Sadiqa E, Frances MN,Oluwakemi B: The 5 Minute Pediatric Consult 526-527 5.Fred F, Ferri MD, F. A. C. P: Ferri’s Clinical Advisor 2016 773.e1 6.James A, Pfaff, Gregory PM: Rosen’s Emergency Medicine 931-940.e2 7.Dragoslava RD, Miljan MF, Srbislav RB, et al: Acute Mastoiditis in Children as Persisting Problem Int Adv Otol 2014;10:60-63 8.Mafee MF, Singleton EL, Valvassori GE, et al: Acute otomastoiditis and its complications: role of CT. Radiology 1985;155:391-397 9.PP Devan, Arlen DM et al: Mastoiditis Workup http://emedicine.medscape.com/article/2056657-workup#c7

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