【寄稿】MBA取得記 〜授業内容編〜

どんな授業が開講しているか? 〜任天堂に学ぶ〜 今回のテーマからどんな授業が開講しているのか?について ご紹介していきます。 第1回はMBAとのFirst contactとなった「Strategic Thinking and Strategy」の授業からです。 (使用教科書:「グロービス MBAマネジメント・ブック」グロービス経営大学院 編著) 取り扱ったケースはHarvard Business Schoolでも人気の 『パワープレイ(A):任天堂と8ビット・ビデオゲーム』HBS Case#795-102から。 いきなりの題材が安藤のようなテレビゲーム世代にはたまらない 任天堂のファミコンの躍進のヒミツからでした。 世界中の子供たちを魅惑し圧倒的な支持を得、子供のライフスタイルをも変えてしまった 任天堂のファミコン(海外ではNESという名前)。一躍世界市場を制覇し、かつ 競合の参入を湯すさなかった成功理由を戦略の観点から議論していきます。 戦略思考とは何か?を考えることが目的となったケースでは ファミコンが成功した理由を ・消費者の視点 ・ハードウェアの視点 ・ソフトウェアの視点 ・ビジネスパートナーの視点 ・競合の視点 など様々な視点から考えます。 ここで大切なのは、1つの事例を様々な視点から分析するということになります。 ついつい消費者目線で解答してしまいそうですが 実際にファミコンの本体やソフトを製造しているメーカーでは そこで働いている人もあり、その販売に関わる小売店や 他の競合メーカー(セガなど)も市場にはいます。 市場にかかわる全てのプレーヤーの目線が分からないと どこに成功要因が隠れていたのか、それはどのような戦略にもとづいていたのかが分かりません。 最初の授業で教授から第一声問われたのは 「もしあなたが城主であったら、城下町で火事がおきたときにどうしますか?」 ということでした。 みなさんならどうするでしょうか。 現場を見に行かないと実態が掴めないからと 火事の起きている現場に行くでしょうか。(いわゆる現場主義) それとも、火事を消すための設備や水の確認をするでしょうか。 人を集めるでしょうか。(BLSの最初のように) 答えはいずれもNo!でした。 城主であるなら、最初にするべきことは 城の中の最も高いところに上って全体を把握せよ というのです。 自分が経営者であれば、まずは全体を把握しないことには 水や消火設備、人材という限られた資源(リソース)を 適切に使う戦略が立てられないというのが理由です。 現場に城主が行って火消しをすれば 時代劇のようなヒーローのように感じますが おそらく城主のもとへは多くのリソースが割かれ その場の消火はできるかもしれません。 しかし放火犯が逃げ回って他に火をつけていたら 他の場所の火事に気付くのが遅れ 被害を広げることになってしまいます。 全体を把握するためには、常に俯瞰的にものごとを見れるようにならなければなりません。 そのためには、関係するあらゆる人の立場になって物事を見て考える目線が必要だという ことを学びました。 これは言葉で言うほど簡単ではなく 実際には細かい事実までケースの中から拾い上げることになります。 把握に漏れがあったままの立案は不測の事態を招きかねないからです。 MBA取得までは、ケースの中から事実を細かく拾い上げることを 何度も繰り返し、徹底した全体の把握と分析を繰り返していきます。 そして、それらの事実から任天堂が ハード製造会社、ソフト開発会社、小売店、競合会社に対して どのような戦略をとっていたのかを分析し どこに成功要因(Key Success Factor:KSF)があったのか それぞれのプレーヤーがその戦略をどう思っていたのかまで掘り下げていきます。 こうやって事実を徹底的に掘り下げること(深掘り)を行い なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜと繰り返して その根底にどんな戦略思考があるのかを学んでいきます。 セガと3DOに学ぶ 授業で扱われるケースの中には、続きの話として連続したストーリーが描かれることがあります。 『パワープレイ(A)任天堂と8ビット・ビデオゲーム』の続きは 『パワープレイ(B):セガと16ビット・ビデオゲーム』HBS Case#795-103 『パワープレイ(C):3DOと32ビット・ビデオゲーム』HBS Case#795-104 の2つのケースが続いています。 日本では8ビット・ビデオゲームはファミコン 16ビット・ビデオゲームはスーパーファミコンVSメガドライブ 32ビット・ビデオゲームはプレイステーションVSセガサターンといったところが 有名ですが、世界では少し情勢が違っていました。 16ビット・ビデオゲームでは、実は世界では メガドライブ(英名ジェネシス)がスーパーファミコン(英名SNES)を凌いだのでした。 この時点で、そうだったの?と思いましたが 日本で勝って世界で負けたというのが海外での任天堂に対する認識のようです。 ここで登場するキーワードは「競合」です。 競合とは同じ市場で競い合う相手という意味ですが どの市場をとるかで競合相手というのは変わってきます。 ここはビデオゲーム市場ですので比較的単純ですが 市場をとり間違えると失敗をしてしまいます。 16ビット・ビデオゲーム市場では NECがPCエンジン(英名ターボグラフエックス16)を セガがメガドライブを市場に出してきました。 NECは言わずと知れた大手家電メーカーです。 日本製のパソコンといえば昔はPC-88やPC-98といった NEC製のものが圧倒的に有名でした。 任天堂ももとはカードゲームや玩具のメーカーですから 他の市場からビデオゲーム市場に参入したことになりますが ファミコンの成功を目の当たりにしたNECは 半導体の製造やオーディオ、ビデオの専門技術を有し 任天堂とは異なる販売網(主に家電やNECの直販ストア)を強みにしています。 セガはもともとは米国人起業家のDavid Rosenが 東京で娯楽機器の輸入をしていた会社でした。 ゲームセンターの業務用ゲームに強く業界のリーダーでした。 実はセガには8ビット・ビデオゲームとして マスターシステムという製品がありましたが それほど売れませんでした。 こういった具体的な情報がケースには描かれています。 その業界に詳しくない人でも分かるように詳細に描かれるようになっています。 16ビット・ビデオゲーム市場ではこの3者が競合して争いました。 32ビット・ビデオゲーム市場となると 様々なビデオゲームが市場に参入してきます。 任天堂の64(本当は64ビット)、セガのスーパーメガドライブ32X ソニーのプレイステーション、アタリのジャガー そしてケース(C)の主役である3DOが登場しました。 3DOのことをよく知らない方も多いかと思いますが 3DO は派手に登場して、その後大失敗したことで ケースに登場しています。 なぜ3DOは失敗したのか? ケースでは成功要因(KSF:Key Success Factor)が描かれることが多いのですが 失敗ケースも登場します。 詳細はケースに任せるとしますが 3DOは他の競合とは違う戦略をとりました。 日本では松下電機がライセンスをもっていましたので 商店街にあるNationalのお店などで販売されました。 しかし、コンセプトがビデオゲームというより ホームエンターテイメントに注力した家電製品という位置づけであったことなどが どの市場にも中途半端になってしまい、やがて消えていくことになりました。 製品力や、パートナー企業では 他の競合を圧倒したにも関わらずです。 市場を分析する方法としては 一般的に3C(company,customer,competitor)分析や 4P(Product,Price,Place,Promotion)分析、 5F(five force)分析が使われます。 こういった手法をフレームワークと呼びます。 少し検索すると、すぐに出てくるもので ビジネスマンなら誰しも知っているものかと思われるくらい有名です。 市場を多面的に分析し把握し整理することが重要と言われます。 ウォルマートストアーズの戦略 さて、今回は 『ウォルマート・ストアーズ』HBS Case#794-024 のケースから寄稿いたします。 ウォルマートという名前を聞いたことがない人もあるかもしれませんが つい最近、新聞記事を賑わせましたね。 西友(九州ではサニー)はもともと西武百貨店グループでしたが バブル崩壊で子会社が多額の不良債権を抱えてしまい 2002年に世界最大のスーパーマーケットチェーンである ウォルマートに売却(資本提携し傘下に入る)されています。 その西友をウォールマートが売却しようと検討しているという報道が流れました。 https://hbol.jp/170492 1962年に米国の片田舎で創業したウォルマートは、売上額世界最大の企業にまで成長します。 そこにはどのような戦略があったのでしょうか。 ◯田舎ドミナント戦略 ウォルマートがまずとったのは、ディスカウントストア業界で 地域における独占的な店舗展開を行いました。 アーカンソー州、ミズーリ州、オクラホマ州の農村地域で出店を重ね 1970年には30店舗にまで増えていました。 都会にはブランド力もあり規模の大きな競合相手(百貨店や専門店)が多数いますから 競合相手の弱く少ない田舎で出店を重ねることで 地域における独占力を獲得しようとしたのです。 こういった戦略をドミナント戦略といいます。 店舗が近くにあるということは、物流コストの削減や在庫リスクの低減 人員の効率的な配置、大量購入による仕入れ価格の低減といったメリットがあります。 ◯EDLP エブリデイ・ロープライス戦略 価格設定についても強いこだわりを持っていました。 ブランド商品を百貨店や専門店よりも安い価格で提供するというものです。 毎日が安いために、わざわざ広告宣伝を行う必要がありません。 競合ディスカウントストアの広告宣伝費が2.1%に対してウォルマートは更に低い1.5%でした。 また、顧客志向に合わせて「満足保証」と銘打ち どこでも何の質問もせずに返品を受け付けています。 そういった中でも、「バイ・アメリカン計画」でナショナルブランド戦略をとり 外国製品を米国製品に置き換え、自国の41,000人以上の雇用を創出しています。 同時に、卸業者などとの競争力を高めて、購買力(安く買う)を強めています。 ◯リースによる固定費削減戦略 ウォルマートの店舗は70%がリースで、自社保有は30%しかありません。 店舗や土地は購入するもの、ではなくリースによって運営しているのです。 リースにするメリットは多数あります。 ・1店舗に対する初期投資が少ない ・初期投資が少ないため店舗拡大スピードが早い ・撤退も早くできる ・固定資産税などの税制面で有利 ・固定費を変動費にできる 人件費や土地・建物にかかる費用のことを固定費といいます。 一方で、材料費やリース代など規模に応じて変動する費用を変動費といいます。 経営面での定石は、固定費をいかに変動費にするか(固定費・変動費比率の低減)です。 固定費を抑えて、変動費を高めると損益分岐点が経営上有利になります。 ※損益分岐点については、またファイナンス関連の授業で扱いますので後述とします。 損益分岐点を超えた部分は、まるまるその企業の利益になりますから 成長する企業にとって固定費の変動費化はとても重要な戦略です。 ◯その他の戦略 他にも電子式スキャナや電子データ交換システムによる在庫管理や、 ハブ・アンド・スポーク型といわれる二段階式物流ネットワークによる物流の集約化、 店長に大きな裁量券を与えて店舗ごとの競争力を高めるモチベーション向上の仕組み などなど多数の戦略をとっています。 ◯戦略の定石 ウォルマートがとった戦略は多数ありますが 総じていうとコストリーダーシップ戦略ということができます。 EDLPによる低価格化を実現するには、規模を大きくして全体の効率化を図ります。 生産量が増加すればするほど、1店舗あたりの固定費も変動費も低減していきます。 これを「経験曲線効果の原理」といいます。http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0502/22/news112.html 規模を大きくして効率化することでさらに低価格化を実現できます。 大企業による大量生産品が安いのはそのためです。 業界のリーダーになると、 コストリーダーシップ戦略をとることができ 競争力が更に増します。 つまり一人勝ちの構図ができあがってしまうのです。 このコストリーダーシップ戦略にいかにもっていくかが 成長する企業にとっては戦略面での課題になります。 世界最大の企業となったウォルマートも そのスタートは田舎ドミナント戦略で 成長に合わせて次々に戦略を追加変更していっています。 これらの一連の流れは戦略の定石で、お手本のような成長をしているため MBAの授業では人気のケースとなっているようです。 次回は 『ヨーロッパをめぐる熾烈な戦い:ライアンエア』HBS Case#700-115から 寄稿したいと思います。

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【寄稿】MBA取得記 〜授業内容編〜

2018年7月29日UP

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まずはシステマチックな読み方を身につけることが大事だと思います。原理はあとからついてきます。著者は人間的にはかなり問題があったようですが(伝説です)、こ...

Fracture Management for Primary Care / M. Patrice Eiff MD, Robert L. Hatch MD MPH, Walter L. Calmbach MD

骨折のプライマリケアに特化してまとめた本。 どの骨折にどの固定がよくて、どれくらい固定が必要とか。いつどのタイミングで整形外科にコンサルトするとか非常...

Accident and Emergency Radiology / Nigel Raby FRCR, Laurence Berman MB BS FRCP FRCR, Gerald de Lacey MA FRCR

骨折などの単純レントゲンの読み方といったらコレ。 写真も多く、読み方のポイントまで懇切丁寧。しかもポケットサイズ。英語も簡単だから心配いらない。 お...

トップナイフ―外傷手術の技・腕・巧み / Asher Hirshberg, Kenneth L. Mattox

外傷外科医を志す者ならまず読んでる1冊。 ER医はここまでやることはないけど外傷外科医の思考過程を知るには非常にいい。 おすすめ度:★★★★★ ...

スキル外来手術アトラス―すべての外科系医師に必要な美しく治すための基本手技 / 市田 正成

救急医だからこそ、外科医なみに傷をきれいに直したい。ちょっと高いですが、オススメ。 おすすめ度:★★★★ スキル外来手術アトラス―すべての外科系...

これからの創傷治療 / 夏井 睦

創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ これからの創...

創傷治療の常識非常識〈2〉熱傷と創感染 / 夏井 睦

創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ 創傷治療の常...

創傷治療の常識非常識―〈消毒とガーゼ〉撲滅宣言 / 夏井 睦

創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ 創傷治療の常...

ドクター夏井の外傷治療「裏」マニュアル―すぐに役立つHints&Tips / 夏井 睦

創傷治癒で有名な夏井先生の本。 すべてをこの通りにすることが正しいわけではないが、非常に参考になる1冊。 おすすめ度:★★★★★ ドクター夏井...

写真でわかる外傷基本手技―VISUAL TEXTBOOK OF TRAUMA CARE / 益子邦洋, 松本尚

外傷手技のビジュアルテキスト。 写真が豊富でイメージしやすいのがいいけど高い・・・。ERに1冊あれば教育ツールとしていいかも。 おすすめ度:★★★ ...

JPTECガイドブック / JPTEC協議会

Pre-hospitalの標準化。 救急隊がどういった教育を受けて現場で活動をしているか理解することは非常に重要なことです。 おすすめ度:★★★ ...

外傷初期診療ガイドライン 改訂第3版 / 日本外傷学会

JATECはかなりいけています。外傷の基本です。しっかりおさえよう! おすすめ度:★★★★★ 外傷初期診療ガイドライン 改訂第3版 / 日本外傷...

骨太! Dr.仲田のダイナミック整形外科(上巻)~決定版! プライマリ・ケアのための膝・腰・肩のみかた~ケアネットDVD / 仲田 和正

上記、仲田先生のDVD。すいません、僕は彼のファンみたいなものなのです。整形はビジュアルで学ぶといいですね。教育は教科書から、こんなビデオ形式に向かって...

けが・うちみ・ねんざのfirst aid (総合診療ブックス) / 大場 義幸, 仲田 和正, 箕輪 良行

これも研修医時代に読んだ本。ちょっと古いですがやはり色々と勉強になる点が今読み返してもあります。 おすすめ度:★★★★ けが・うちみ・ねんざのf...

Emergency Orthopedics: The Extremities / Robert Simon, Scott Sherman, Steven Koenigsknecht

この本も骨折・脱臼のマネジメントなどの情報が実に豊富です。 おすすめ度:★★★★★ Emergency Orthopedics: The Ext...

カラー写真でみる!骨折・脱臼・捻挫―画像診断の進め方と整復・固定のコツ (ビジュアル基本手技) / 内田 淳正 (編集), 加藤 公 (編集)

コンセプトは上述の本と一緒。疾患が1-2P毎に別れて記載されているし、和書なので読みやすい。臨床研修が始まって良い本が増えましたね。 おすすめ度:★★...

Fracture Management for Primary Care / M. Patrice Eiff MD, Walter L. Calmbach MD, Robert L. Hatch MD MPH

どの骨折にどの固定がよくて、どれくらい固定が必要とか。いつどのタイミングで整形外科にコンサルトするとか非常にわかりやすく統一した書式で書いてあります。 ...

Atlas of Normal Roentgen Variants That May Simulate Disease / Theodore E. Keats MD, Mark W. Anderson MD

小児において骨折なのか正常なのか?様々な悩ましいケースを載せています。放射線科が単純まで手の回らない日本では救急部に一つあっていいですね。 おすすめ度...

Accident and Emergency Radiology / Nigel Raby FRCR, Laurence Berman MB BS FRCP FRCR, Gerald de Lacey MA FRCR

おなじみの整形疾患の画像をまとめた本。写真も多く、読み方のポイントまで懇切丁寧。しかもポケットサイズ。 おすすめ度:★★★★★ Accident...

Essentials of Musculoskeletal Care (Essentials of Musculoskeletal Care (Griffin)) / Walter B., M.D. Greene

これも知られていない名作。アメリカ整形外科学会から、プライマリーケアで診る整形疾患がよくまとまってます。絵も多く、整形診察の手順もよくのってます。オスス...

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